ep30: 旧知の友
ジェロは昨日、レオンの宿屋で手厚い歓待を受け、そのまま二階の一室に案内された。
夜明けとともに、階下のざわめきが耳に届き、目を覚ます。
笑い声に混じって、怒鳴り声に近い調子も聞こえる。
大勢が一斉にしゃべり、歌い、飲んでいるような――賑やかで騒がしい朝だった。
ジェロは急いで身支度を整え、木の階段を下りる。
一階の広間には、十数名の屈強な男たちが集まり、卓を囲んで声を張り上げていた。
筋骨たくましい腕、日に焼けた顔、背負った袋や道具はそれぞれ違うが、誰もが一筋縄ではいかぬ雰囲気を漂わせている。
「おう、ジェロ。珍しく早起きじゃないか」
その中心で腕を組み、場を仕切っていたレオンが、にやりと笑って声をかけてきた。
「あぁ、おはようレオン。声が聞こえてきたからね。彼らは?」
「過酷な任務に耐えられそうな連中だ。配達の適性は……まぁ、お前が見定めろ」
レオンはそう言うと、豪快にガハハハハと笑い、周囲の男たちの背中を力強く叩いた。
*
彼らを引き連れ、ジェロは空の島へ戻ってきた。
連れてきたはいいものの、人材育成は容易ではない。
だが、やるしかなかった。
座学はエリオットに任せ、現場での訓練はニールとハロルに委ねる。
そして、約束通り、同じ人数の配達員をレオンのもとへ送り、現場を維持しながら育成体制を整えた。
*
厳しい訓練と試験を繰り返すこと一か月――
ついに五名の屈強な人材が「配達員として十分な適性あり」との判断に至った。
まだ夜の気配をわずかに残した丘に、ジェロは立っていた。
新しい配達員たちを見送るためだ。
彼らの影が小さくなり、やがて雲の向こうへ消えていくまで、ジェロはじっと立ち尽くしていた。
危険地帯での耐性については問題ないだろう。
だがジェロは、配達任務に求められる繊細さに関して、どうしても拭えぬ不安を抱いていた。
――彼らが、単独で配達をやり遂げられるじゃろうか。
胸の内とは裏腹に、東の空は美しい朝焼けに染まり、真新しい一日が広がり始めていた。
「そんなに不安か?」背後から声がした。
「あぁ、ハロルか。下界の人との接触を卒なくこなせるか……飛行禁止区域で、過信してけがをせんか……不安しかないわい」
「それなら、様子を見てきてやるよ」
ハロルは軽く笑みを浮かべ、地を蹴って大空へ羽ばたいた。
朝陽を受けた彼の真っ白な翼が、きらきらと輝きながら空へ溶けていった。




