表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲を渡る手紙  作者: tomsugar


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/58

ep28: 独り立ち

ニールとチト、ハロルとナツは、東と西に分かれて、配達員のミスで落ちた大量の手紙を回収していた。


初日は東西合わせて百通以上を拾い上げ、幸先のいいスタートを切った。

だが日を追うごとに、目に見える手紙は減り、回収数は一日あたり二桁まで落ち込んでいた。


碧く澄んだ海には、いくつもの島が浮かび、水面には強い陽光が反射して、幻想的な景色をつくり出していた。

その上空を、別々の方角から飛んできたハロルとニールが、同じ軌道に入り、左へと旋回する。

彼らの後ろには、小さな雀の姿をしたチトとナツが、細かく羽ばたきながらついてきていた。


「やぁ、久しぶりだな、ハロル」

「あぁ、久しぶりだ」


二人は、眼下に白い砂浜が環を描く小島へ向かって、翼を傾ける。

その急な降下に、チトとナツは慌てて羽ばたきを強め、必死に後を追った。


「今、回収済みの手紙は何通だ?」ニールが尋ねた。

「286通です」答えたのはナツだった。集計は彼女の担当らしい。


「こちらは290ほどだな」ニールが言うと、

「ほどってなんだ?ならこちらも290“ほど”だぞ」ハロルがにやりと返す。


「残り20から30通…ここからが手ごわいな」

これまでは空からざっくりと気配をたどって拾ってきたが、これからは島一つ一つを念入りに捜す必要がある。


「では、チトナツは二人で陸の手紙を回収しろ。俺とハロルは、見つけにくい場所を当たる」

どうやらニールは、二人をまとめて“チトナツ”と呼ぶことにしたらしい。


「了解」ハロルが即答し、

「はっ、はい!」チトナツは声をそろえた。

二人だけで挑む初めての任務に、少し緊張した面持ちだ。


ハロルはちらりと二人に目をやり、「宿屋の泊まり方はわかるか?」と優しく尋ねた。

「うん!ニールに教えてもらった」チトが胸を張って答える。


           *


ハロルとニールは大きく羽ばたき、上空へ舞い上がった。

高度を上げて全体を見下ろすと、島々と碧い海が広がり、その中にまばらな手紙の気配が点在している。

二人はその数を静かに数えた。


「十通以上、西に流されているな」ハロルが言う。

「あぁ、残りは諸島のあちこちに散らばってる。どっちに行きたい?」ニールが問いかける。

「どちらでも」ハロルは淡々と答えた。


「じゃあ、波に流された分は頼む。俺は海に揺られて眠るのはごめんだ」ニールが軽く笑った。

「了解」


ハロルは大きく翼を立て、風をつかんで旋回すると、そのまま西の海へ向けて飛び立った。


           *


一週間ほどかけて、すべての手紙を回収し終えた一行は、空に浮かぶ島へと帰還した。

局員全員が総出で迎えに出て、拍手と笑顔で一行を歓待する。


「これほど早く回収が終わるとは思っておらんかったぞ。ありがとう、ありがとう」

ジェロは声を弾ませ、深く頭を下げた。


ニールとハロルの報告によれば、回収した手紙のうち半数以上を、チトとナツが集めていたという。

その数字に、ジェロは目を丸くした。


「後半は二人で単独行動を取らせていたが、問題なさそうだぞ」ニールが付け加える。

「そうか、そうか…」ジェロは何度もうなずいた。


二人の教育係を務めていたエリオットは、その話を聞くなり、もう目頭を押さえていた。


その日の夕方、郵便局前の広場では盛大な宴が開かれた。

思っていた以上に今回は危機的状況だったらしく、一行はまるで英雄のように讃えられた。


解放感に包まれた笑い声が、黄昏の空へと吸い込まれていく。

空の島は、久しぶりに熱気と灯りに満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ