ep23: ジェロの心配
空の島の郵便局では、局長のジェロが腕を組み、部屋の中をうろうろしていた。
使いを出して、ハロルに島へ戻るよう連絡したのだ。
空から配達員たちの様子を監視するのも、ジェロの役目である。
呼び出してから半日ほど経ったころ、郵便局のドアが開く。
背の高い金髪の男と、小さな子ども二人が入ってきた。
「よぉ、ジェロ。何か用か?」ハロルが軽く声をかける。
「三人とも、ついてこい」ジェロは短く言い、奥の部屋へと向かった。
ハロルは局員たちに目をやったが、誰も視線を合わせようとしない。
奥の部屋には、大きなマホガニーの丸テーブルと、周囲に並ぶ木製の椅子が十脚ほど。
ジェロは奥の椅子に腰掛け、三人に促した。
「どこでもいいから座りなさい」
怒っているというより、何やら沈んだ顔をしている。
三人が腰を下ろすと、ジェロはハロルに向き直った。
「さて、ハロル。二人にはどういう教育をしてるんじゃ?」
「配達の手本を見せているだけだが?」ハロルは肩をすくめる。
「下界の者に干渉してはならん、ということは教えておるか?」
「それは、あんたの担当だろ?」
「わしは規約の概要しか話しておらん。現場の細かいルールは、お前が教えねばならん」
ハロルは腕を組み、首を傾げた。
「何か、やらかしたのか?」
ジェロは深くため息をつき、視線をハロルの隣の小さな兄妹へ移した。
「チト、ナツ。いいか。配達員は業務以外で下界の者と干渉してはならん」
「知ってるよ~。ぼくたち、何もしてない」
「うん、ハロルさんの後ろ飛んでるだけ。すごく早いから、ついていくの大変なんだよ~」
二人は顔を見合わせ、ケラケラ笑った。
ジェロは眉間にしわを寄せ、再びため息をつく。
「……悲しんでいる配達先の人間を、なぐさめたりはしていなかったか?」
「な、何もしてないよ」チトが上目遣いで言う。
「なにもしてないよ」ナツも真似をする。
「ジャック・ハリソンが教会に行って、こう報告してきたそうだ。
『メアリーからの手紙と、小鳥が運んだ白い花のお礼』とな」
「喜んでるなら、いいじゃないか」ハロルは軽い調子で返す。
「配達のついで程度ならわしも目をつぶる。だが、教会にまで報告されると話が変わる。
下界への干渉として問題視されれば、手の打ちようがなくなるんじゃ」
「ふーん、めんどくさい話だな」ハロルは他人事のように言った。
「……よいか。二人はしばらく配達業務への同行を禁止する」
「えぇ!!!そんなー!」
「ジェロのいじわるー!」
不満を叫ぶ二人を無視し、ジェロは椅子を引いて部屋を出ていった。
*
ハロルが郵便局を出ると、しょんぼりとした様子のチトとナツが、後ろをとぼとぼついてきた。
「おまえら、元気出せ。焼きトウモロコシ買ってやるから」
振り返って声をかけると、二人の顔がぱっと明るくなる。
「やったー!」
「やったー!」
ハロルは軽く笑い、地面を蹴って大きく跳ね上がった。
瞬く間に白い鳥へと姿を変え、商店街の方角へ舞い上がる。
チトとナツも羽音を響かせ、後を追って空を駆けていった。




