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雲を渡る手紙  作者: tomsugar


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23/58

ep22: 白い花の丘

一面に美しく整えられた芝生の墓地に、一人のスーツ姿の男性が立っていた。

手には、小さな白い花を集めた花束が握られている。


―――

Mary Grace Thompson

1995 – 2020

Forever 25

Loved and remembered always


メアリー・グレース・トムソン

1995年 ― 2020年

享年25歳

永遠に、愛とともに

―――


彼の足元の墓石には、その名が刻まれていた。

花束をそっと置き、彼は静かにその場を離れる。


彼の名はジャック・ハリソン。

金融街で働くビジネスマンだ。

5年前、婚約者を失って以来、毎朝こうして墓参りをしてから職場へ向かう。

それが、彼の日常となっていた。


かつての彼は、友人とバーに行き、旅行を楽しみ、休日は活発に過ごす青年だった。

婚約者の死後、友人たちは気落ちする彼を心配して何度も誘ったが、断り続けるうちに――

5年が経った今、誰ももう彼に声をかけなくなっていた。


           *


職場は、灰色の高層ビルが立ち並ぶ金融街の一角にある。

「おはよう」と秘書に声をかけ、オフィスへ入る。

それから一言も話さず、定時になると席を立ち、エレベーターへ。


だが、その日は違っていた。


エントランスを出ると、白いシャツにカーキのパンツ、擦れた茶色のサンダルを履いた金髪の青年が立っていた。

金融街では異質な姿が、まっすぐ彼を見つめている。


彼が、何か用かと尋ねようとしたとき、

金髪の青年が、手紙を差し出した。


「愛するジャックへ」宛名の筆跡には見覚えがあった。


手紙を渡すと、青年はふっと消えた。

どこから来たのか、目の前を白い鳥が羽ばたいて空に飛んでいった。


目の前の手すりには、小さな雀がチュンチュンと鳴いている。

「えらく人懐っこいな」と呟いた途端、雀も羽ばたいていった。


ジャックは、もう一度手元の封筒を見つめた。


「メアリーの筆跡だ…」


大切なものをひとに見られたくない。

ジャックは封筒を握りしめ、急ぎ足で帰宅した。

居間のソファに腰を下ろす。

結婚を前に二人で選んだ、ソファだ。


―――

丘の花畑


ふたりのダンス

くるり くるり


満天の星の下

ごろりと寝転び

息まで星屑にまぎれた


私は蝶になり

空の色に溶けていく


あなたは丘の上で

その羽ばたきを見つめていた


蝶は どこまでも

どこまでも

光の向こうへ飛び立った

―――


何度も読み返すうちに、

ジャックの頬を熱い涙が伝った。


「君を手放せと、そう言っているのかい…メアリー?」


そのとき、窓ガラスをコツンと叩く音。

振り向くと小鳥が二羽、窓辺には白い小さな花が一輪、

まるで彼を慰めるように置かれていた。

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