ep20: 小さな配達員
空に浮かぶ島には、鳥たちの街がある。
そこには、世界中の手紙を集めては、届ける「空の郵便局が」ある。
この島の皆はたいてい顔見知りだが、最近そこに、幼い雀の兄妹がやって来た。
兄はチト。妹はナツ。
二人はいつも一緒で、じゃれ合いながら笑い合う仲良し兄妹だった。
数か月は島に慣れさせるため遊ばせていたが、そろそろ何か役割を与える時期が来た。
郵便局の局長ジェロは、二人を局に呼び出した。
「さて、チト、ナツ。君たちはどんな仕事をしたいんじゃ?」
「配達!」
「配達!」
声をそろえて答える二人。ニールやハロルが大空を飛び立つ姿を見て、いつかは自分たちも──と憧れていたらしい。
「う〜ん、配達は過酷な仕事じゃて……おまえたちの体では厳しいかもしれんぞ?」
「そんなの、やってみないとわかんないよ!」兄のチトが胸を張る。
「まぁそうじゃのぉ……だが、配達員になりたいなら、その前に郵便局の仕事を一通りできるようになってから、という決まりじゃ」
ジェロは、その場で決めた“新しい決まり”を伝えた。
翌日から二人は、庭の草むしり、掃き掃除、水やりをしてから、局内で仕分けや雑用を手伝うことになった。
だが──庭の花はすべて引っこ抜かれ、掃き掃除は半分だけ、水はあちこちに撒き散らされ……郵便局の庭はあっという間に荒れ果てた。
教育係のエリオットは頭を抱えた。
いくら教えても言われた通りにやらない二人に、配達は到底任せられない。そう伝えた。
「えぇ、そんなぁ〜!」チトはごねる。
「お兄ちゃんが遊んでぐちゃぐちゃにしたからでしょ!」ナツが責める。
「ナツがとろいからだろ!」
「これこれ、二人とも片方の責任ではないぞ。任された仕事ができなかったのは二人の責任じゃ」ジェロがたしなめる。
そんな時、局の入り口から配達を終えたハロルが入ってきた。
「やぁ、ハロル、今帰ったのかい?」
「あぁ」
ハロルはカウンターに配達完了の記録を置いた。
チトがハロルの足元に駆け寄る。
「ねぇ、ハロルさん!僕らを弟子にしてよ!」
小さな雀を見下ろし、ハロルは口元を緩めた。
「まぁ、近場で簡単な配達なら連れて行ってやってもいいぞ」
「ハロル、今なんと?」ジェロが目を白黒させる。
「あぁ、ジェロ、あんたの許可がいるのか?」
「いや、そうじゃなくて……連れて行ってもいいと言ったのか?」
「別に構わない」
こうして、ハロルが二人の教育を引き受けることになった。
「わーい!ハロルさんありがとう!」
「ありがとう!」
二人はハロルの足元をくるくる回りながら、全身で喜びを表した。




