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雲を渡る手紙  作者: tomsugar


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20/58

ep19: 東の塔での礼拝

―――

優しい領主さま


礼拝のお誘い、ありがとうございます。

けれども、私には礼拝にふさわしい服がございませんので、

その日は自室にてお祈りさせていただこうと思います。


領主さまとこうしてお手紙を交わせることが、とても嬉しく、

毎日が少しずつ明るくなってまいりました。


セイラ

―――


―――


親愛なるセイラへ


今度の日曜日の午後、東の塔の一階で礼拝を行います。

後ほどドレスを一着お届けしますので、それを着て、ぜひいらしてください。

あなたの席には赤いリボンを結んでおきますので、すぐに分かると思います。


工事は礼拝の翌日、月曜日から始まります。

しばらくは人の出入りや音で落ち着かないかもしれませんが、ご容赦ください。

もし困ったことや気になることがあれば、遠慮なく手紙で知らせてください。


ジョセフより

―――


日曜日、リチャード牧師と、彼が連れてきた婦人会の三名が東の塔へやって来た。

ジョセフはできる限り掃除を済ませ、折りたたみ椅子を並べ、特等席に赤いリボンを結びつける。

使用人の半分は怖がって参列しなかったが、執事のピーターは「ぜひ」と言って礼拝に加わった。


リチャード牧師が聖書を朗読し終えると、婦人会の一人が小型の電子キーボードに手を置いた。

柔らかな伴奏が石壁に反響し、冷たい空気を少しだけ温める。


「それでは、ご一緒に賛美歌を歌いましょう」

牧師の声に促され、椅子に座っていた人々が立ち上がる。

ピーターの低い声が、婦人たちの澄んだ歌声に重なった。


歌はゆっくりと、しかし力強く塔の内部を満たしていく。

高い天井の下、音は一度上に昇ってから、やわらかく降り注ぐように響いた。

ジョセフは壇の脇で、その響きを胸いっぱいに受け止めながら、赤いリボンの結ばれた席へと視線をやった。


そこにセイラの姿はなかった。

──だが、その瞬間、微かな風が通り抜け、リボンがひとりでに揺れたように見えた。


           *


それからひと月が過ぎた。

東の塔の尖塔には、金色に輝く風見鶏が光を受けてゆっくりと回っていた。

階段は修繕され、安全に上り下りできるようになった。


ジョセフは時折、スコーンやケーキを手に塔を訪れる。

そこに暮らしているかもしれないセイラとの、静かなお茶会のために。

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