ep19: 東の塔での礼拝
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優しい領主さま
礼拝のお誘い、ありがとうございます。
けれども、私には礼拝にふさわしい服がございませんので、
その日は自室にてお祈りさせていただこうと思います。
領主さまとこうしてお手紙を交わせることが、とても嬉しく、
毎日が少しずつ明るくなってまいりました。
セイラ
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親愛なるセイラへ
今度の日曜日の午後、東の塔の一階で礼拝を行います。
後ほどドレスを一着お届けしますので、それを着て、ぜひいらしてください。
あなたの席には赤いリボンを結んでおきますので、すぐに分かると思います。
工事は礼拝の翌日、月曜日から始まります。
しばらくは人の出入りや音で落ち着かないかもしれませんが、ご容赦ください。
もし困ったことや気になることがあれば、遠慮なく手紙で知らせてください。
ジョセフより
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日曜日、リチャード牧師と、彼が連れてきた婦人会の三名が東の塔へやって来た。
ジョセフはできる限り掃除を済ませ、折りたたみ椅子を並べ、特等席に赤いリボンを結びつける。
使用人の半分は怖がって参列しなかったが、執事のピーターは「ぜひ」と言って礼拝に加わった。
リチャード牧師が聖書を朗読し終えると、婦人会の一人が小型の電子キーボードに手を置いた。
柔らかな伴奏が石壁に反響し、冷たい空気を少しだけ温める。
「それでは、ご一緒に賛美歌を歌いましょう」
牧師の声に促され、椅子に座っていた人々が立ち上がる。
ピーターの低い声が、婦人たちの澄んだ歌声に重なった。
歌はゆっくりと、しかし力強く塔の内部を満たしていく。
高い天井の下、音は一度上に昇ってから、やわらかく降り注ぐように響いた。
ジョセフは壇の脇で、その響きを胸いっぱいに受け止めながら、赤いリボンの結ばれた席へと視線をやった。
そこにセイラの姿はなかった。
──だが、その瞬間、微かな風が通り抜け、リボンがひとりでに揺れたように見えた。
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それからひと月が過ぎた。
東の塔の尖塔には、金色に輝く風見鶏が光を受けてゆっくりと回っていた。
階段は修繕され、安全に上り下りできるようになった。
ジョセフは時折、スコーンやケーキを手に塔を訪れる。
そこに暮らしているかもしれないセイラとの、静かなお茶会のために。




