ep11: 今日も、この手紙を届ける
ジェロからの呼び出しを受けて、ハロルは郵便局へ戻ってきていた。
朝に局を訪れた際には、ジェロは局長室にこもり、不在だった。
今はもう、局員たちは皆帰ったようで、エントランスにはジェロがひとり立っていた。
「わざわざ呼び出して、すまんの」
そう言いながら、ジェロは奥の部屋へと歩いていく。
案内されたのは、ジェロの私的な居住スペース。
ハロルはその居間のカウチに腰を下ろした。
「実は今日、上から連絡があってな。お前を“上に戻す”という話が出ておる」
ジェロはポットからお茶を注ぎながら、静かに言った。
「俺は、この仕事をずっとやる」
ハロルはそっけなく返した。
「……そう言うと思ったわ」
ジェロはため息まじりに笑った。
「前の記憶もないし、ここに来てからもう十数年だ。配達の仕事も気に入ってる」
そう言って、ハロルは湯気の立つカップに口をつけた。
「じゃがな、そうそうわがままは通らんかもしれんぞ」
ジェロはクッキーを一口かじり、そしてカップを手に取った。
「……じゃあ、今度は下界に落とされるのかな」
ハロルがぽつりとつぶやいた。
「さあな。それで済めば良いが……まあ、わしも出来るだけのことはしよう。
お前は、いつも通り、仕事を続けておけ」
*
翌朝、ハロルは配達の手紙を受け取りに郵便局へやって来た。
「おはよう、ハロル」
カウンターの奥から、ジェロがいつものように声をかける。
手渡されたのは、手紙がぎっしり詰まった大きな袋だった。
「今回の配達先は、どれも難所じゃよ」
「フン……」
ハロルは鼻を鳴らしながら、袋を受け取った。
「気をつけてなー」
ジェロの見送りに、ハロルは手をひらひらと振って、郵便局のドアを出ていった。




