第8話 勇者ブレイバー、初陣!
『ふふんっ! 勇者だかなんだか知りませんけど、自称だけならサルでもできますわよ』
「自称じゃないことを今から見せてやるさ!」
俺の戦意に反応して[ブレイバー]が左手を前に、右手を腰だめに引いた戦闘態勢を取った。
俺と[ブレイバー]が完全にシンクロしているのが分かる。
『な、なんて機敏な動きですの。動作に余計なウェイトを感じませんわ。ラグが全くない? まるで人間の動き、とても信じられません。いったいどんな構造とプログラムをすれば、これだけ美しく動けるのでしょうか――――こ、こほん。ちょ、ちょっとはできそうですわね!』
「え? お、おう……」
気のせいかな?
なんか今、べた褒めされたような?
これはあれかな?
昔、流行ってたツンデレってやつ?
『ですがそれくらいで調子に乗られては困りますわよ。ええ、そうですわ。狂気の天才科学者・伯爵令嬢たるわたくし、ドクター・トコヤミの[ブラックハウンド]こそが最強の魔導ロボであることは、もはや自然の摂理なのですから」
「は? なに言ってやがる。最強は[ブレイバー]だっての」
「ですからそれを今すぐこの場で証明して差し上げますと言っているのですわ! わたくしの[ブラックハウンド]の必殺剣の餌食となりなさいな! 行きますわよ! 灰は灰に、塵は塵に。全てを無に帰しなさい! ブラックハウンド・ソードっ!』
[ブレイバー]をめがけて漆黒の魔力が、破壊の刃となって撃ち放たれた。
魔導ロボすら破壊する力を秘めた強大な魔法攻撃を、
「はぁ――っ!」
しかし[ブレイバー]は左手を横に振る動作だけで、その破壊の魔法刃を払いのける!
『な、なんですってっ!? わたくしの必殺の一撃が、いとも簡単に払いのけられただなんてっ!?』
驚愕の声を響かせる[ブラックハウンド]の懐に、
「今度はこっちの番だぜ」
[ブレイバー]は一気に飛び込んだ!
『くっ、速い!? なんて瞬発力ですの――!?』
「言っただろ、[ブレイバー]は最強だってな! おおおおおおおっっっっ――――っ!!」
そしてパンチとキックの激しい連打を浴びせかけた!
ドガン!
ゴガン!
グワン!
[ブレイバー]の一撃一撃の全てが、[ブラックハウンド]の機体の上に展開された防御魔法を貫通し、機体本体に大きなダメージを与えていく!
『くぅぅ!? 剣も使わずに、なんて威力ですの……! わたくしの開発した最強の防御魔法が、まったく役に立たないなんて……!』
[ブラックハウンド]は右手に持った剣でなんとか俺を攻撃しようとするが、この近距離では長剣のリーチはむしろ足かせ。
まったくの無意味だ。
「へへん、これだけの超接近戦なら、自慢の長剣も使えないだろ?」
『こ、小癪なことを……!』
「オラオラオラオラ!」
『くぅっ、そんな!? 魔導コアを2つ積んだわたくしの[ブラックハウンド]が、手も足も出ないなんて――!』
「これが勇気の力だ!」
(◦`꒳´◦)ドヤァ!
『勇気ですって!? まさか感情を力に変えているとでも言いますの!?』
「そんなことは知らない! 勇者だから勇気だ! それ以外に理由なんかいらないだろう?」
「たしかに魔力は、そもそも生体エネルギーが元になっていますわ。そして感情もある種のエネルギーの1つ。であるならば勇気が力の源になることも、あり得ないことではないですわね……』
俺の勇者脳による勇者理論を、ドクター・トコヤミは勝手に納得してくれたようだった。
そして言葉を交わしている間も、[ブレイバー]の怒涛の連打は続いており。
ついには[ブラックハウンド]の剣を遠くへ跳ね飛ばすと、ここからは文字通りボコボコにしていく。
「オラオラオラオラ!」
『くぅぅぅぅぅ――っ!!』
そしてかなりの程度ダメージを与えたところで、俺は最後の締めへと取り掛かるうことにした!