第5話「やーいやーい!この中二病のクソダサ漆黒ロボー!おらおら、ちょっと勝ってるからってイキってんじゃねーぞ、バーカ!」
いやその?
アイデアというか、超勇者王ブレイブレイバーの第1話で主人公のダイチ少年が、敵の気を引くためにやった行動そのまんまなんだけど。
どうしようもないほどに勇者シリーズ脳だな……はははっ。
冷静に考えたら浅はかだと思う。
石が当たったくらいじゃ強固な魔力防御フィールドを装甲の上に展開している魔導ロボには、傷一つ付けられやしない。
ガン無視されて終わり。
その後に、爆発に巻き込まれて俺も死ぬ。
本当に無駄死にだ。
それでも。
この時の俺は、それが天啓だと思ってしまったのだ。
「[ブラックハウンド]は[パラディン]とほぼ同サイズだから全高は約13メートルだろ? 野球部でもなかった俺に、ここから投げてあの高さにある頭部に当てれるか? ……いや、とりあえずやってみて、ダメならまた考えたらいいさ」
ろくにやり方を教えられないまま「とりあえずやってみろ」で仕事をさせられたブラック企業での経験が、俺を力強く後押ししてくれる。
(ちょっと笑えない)
俺はガレキを掴むと、「ふぅ……!」と大きく息を吐いた。
大丈夫。
この世界での15年+前世30年=45年も前の話だが、小学生の頃は毎日、公園で草野球をしていたじゃないか。
「行くぞ。当たってくれよ。せいやーーっ!」
俺はステップを踏むと[ブラックハウンド]の顔に向かって、拳サイズのガレキを思いっきり投擲した!
ビュン!
思いのほか勢いよく飛んでいったガレキが、
ガコンッ!
これまたいい音をさせて[ブラックハウンド]の頭部に命中する!
「よおおおおっしゃ!」
思い描いていたまさにその通りの結果に、思わずガッツポーズが飛び出す俺。
「あとは少しでも、こっちに注意を向けてくれたらいいんだが――」
『むん? なんですの? ガレキが飛んできましたわ……?』
魔力を充填中の[ブラックハウンド]が俺を見た。
「やーいやーい!( 〃▽〃) この中二病のクソダサ漆黒ロボー!( 〃▽〃) おらおら、ちょっと勝ってるからってイキってんじゃねーぞ、このうすらバーカ!( 〃▽〃)」
しめたと思った俺はここぞとばかりに騒ぎ立て、あっかんべーからのお尻ぺんぺんへのコンボを繰り出す。
ど、どうだ?
少しはこっちに注意を向けてくれたら――、
「なっ、なんて失礼な……! 一山なんぼのパンピーの分際で、狂気の天才科学者・侯爵令嬢ドクター・トコヤミ様の最高傑作たる[ブラックハウンド]に対して、何たる無礼ですか!」
あ、少しどころかガチギレした。
[ブラックハウンド]が俺の方に身体ごと向き直った。
ギョロリといった様子で俺を見る。
13メートルの高みから見下ろされるのは結構な恐怖だったが、やってしまった以上はもう引き下がれない。
ああいいさ、やってやろうじゃねえか!
今さら逃げられるとか思わないしな。
辛酸を舐め続けてきた氷河期世代のド根性を舐めんなよ!