第18話 特上・特大ステーキをペロリ♪
運ばれてきたのは大きなステーキだった。
熱々の豆スープ、色鮮やかな野菜サラダ、ホカホカのポテト、香ばしそうなクロワッサンなどなど、他にも料理はいろいろあったんだけど。
それらが視界に入ってこないほどに、俺の目は大きな大きなステーキに釘付けだった。
「マジヤバい! 300g、いや400gはあるんじゃないか? こんなステーキ、今まで見たことないよ!」
分厚くて、でかい。
しかもすごく柔らかそう。
日本で言うところのA5ランク牛に違いない(知らんけど)。
我こそは肉の王様であるとでも言わんばかりに、鉄板の上でジュージューと言っているステーキを前に、俺は興奮を隠せなかった。
何を隠そう、俺は今までほとんどステーキを食べたことがなかった。
前世では氷河期世代のブラック企業勤め、今世では孤児院育ちと、ステーキなんて高級品を食べる機会なんてあるはずもない。
「[ブラックハウンド]との戦いを終えたユーキ様はきっとお腹が空いていると思ったので、料理長にお願いして、できるだけ大きい肉を用意してもらったんです」
嬉しそうに答えるシャロの前には俺のステーキの半分ほど。
よくあるサイズのステーキがあった。
「マジか! サンキューな!!」
「喜んでもらえたようでなによりです。ちなみに等級も最上級のものを使っているんですよ」
「最上級。つまり超美味しいステーキを、ガッツリ食べられるってことだよな?」
「はい。命の恩人ですし、団長特権で特別に奮発しちゃいました」
「おおおおお! 本当にありがとう!」
シャロ、君はなんていい人なんだ!
「肉の味を最大限感じられるように、味付けは塩のみにしてありますので、お好みでコショウなどを追加して下さいね」
もはや俺はワクワクを抑えることができなかった。
極上のステーキを前に、さっきから腹の虫は鳴りっぱなしだ。
このままではお腹と背中がくっついてしまう!
「となればもう、俺たちに言葉はいらないよな。いただきます!」
俺はフォークとナイフを取ると、特大ステーキを食べ始めた。
スッと、まるで豆腐を切っているかのようにナイフがステーキを切り分ける。
もうこの時点で美味しいことが確定だ。
切り分けた肉をフォークに刺して口に運ぶ。
もぐもぐもぐ……!!!!(*'▽')パアッ
口に入れた肉がトロンと、ゆっくりと溶けていく。
まるで肉が飲み物のようだ。
なにこれすごい!
「美味い……」
感動が自然と口からこぼれ出た。
しかしそれ以上の言葉は出てこない。
並大抵の言葉ではこの超高級ステーキを表現することは不可能だったから。
俺は一心不乱に特大高級ステーキを食べた。
400gなんてあっという間に平らげてしまう。
すると、シャロがポンポンと手をたたいて料理長に合図を送った。
「料理長、追加で頼みます」
「あいよ!」
「追加って、まさかステーキのお代わりがあるのか?」
いや、まさか……な?
「ユーキ様は追加で200gくらい、いけちゃいますよね?」
そのまさかだった!!
「ぜんぜん余裕でいけちゃいます! ウェルカムです!」
「それは良かったです」
というわけで、俺は追加の200gもペロリと平らげると、スープもサラダもポテトも全て完食したのだった。




