第13話 愛称はシャロ
「あ、はい!」
するとシャーロット団長――シャロはとても嬉しそうな顔をみせた。
まるで恋する乙女が、好きな男子を見ているかのようだ。
――とかなんとか思った俺だが、もちろん俺は恋愛経験が皆無なので、全てはマンガやアニメの知識による想像である(◦`꒳´◦)ᵎᵎドヤッ
ま、俺は勇者だもんな。
しかもシャロにとっては命の恩人でもある。
そういう反応にもなるっちゃなるか。
納得はしたものの、シャロのキラキラした笑顔は、俺の人生にはあまりに縁遠い素敵な笑顔過ぎて、なんだかすごくこそばゆかった。
思わずニヤニヤしてしまいそうになる。
が、しかし。
俺にはまだシャロに言うべきことが残っていた。
それはもちろん、
「じゃあ俺も『勇者ユーキ・イサミ様』なんて堅苦しい呼び方はやめてもらわないとだよな」
俺の呼び名についてである。
『勇者ユーキ・イサミ様』なんて毎回毎回呼ばれるのは、なんていうか、すごく肩が凝りそうだから。
「それは――」
「そうだな、シャロと対等な呼び名だと、無難にユーキかな?」
シャロが何かを言う前に、俺は言葉を続けていく。
「救国の勇者様を呼び捨てにするのは、さすがにいかがなものかと……」
「まぁうん、それはそうかもな。シャロは近衛騎士団長だし、対面とか体裁ってもんがあるよな」
前世でのブラックで氷河期な社会人経験から、俺はシャロの意見に素直に納得した。
とかく日本社会はそういった「外側」を過剰なまでに要求する社会だったから。
「というわけですので、そうですね……『ユーキ様』ではいかがでしょうか?」
「まぁそんなところかな?」
落としどころとしては悪くない。
堅苦しくないけど、適度な冷気正しさもある。
「ではユーキ様と」
「了解だシャロ」
というわけで俺とシャーロット団長は、『ユーキ様』『シャロ』と呼び合うようになった。
なんてことを話していると、話が長くなったこともあって、周囲に人が集まってき始める。
周辺で戦っていた騎士や兵士たち、それに魔導ロボ[パラディン]だ。
「シャーロット隊長、ご無事でしたか! お怪我はありませんか?」
近づいてきた[パラディン]のコクピットが開き、操騎士が声をかけてきた。
ツノなしだから一般操騎士だな。
「私は大丈夫です。ですが[パラディン]がダメージを受けて動けません。騎士団の整備工場まで、搬入を頼めますか?」
そう答えたシャロはさっきまでの可愛らしい女の子の笑顔から一転、一瞬でキリっとした近衛騎士団長の顔に戻っていた。
「了解しました。すぐ近くに僚機がいるので、2機で抱えてすぐに運び出します」
「お願いしますね。じきに住民も戻ってきます。それまでになんとか機体を移動させてください」
「はっ! 直ちに取り掛かります!」
見事な敬礼の後に、コクピットハッチが閉まって、[パラディン]が仲間を呼びに動き出す。
遠ざかっていく[パラディン]を見てシャロが言った。
「それでは私たちも行きましょうか」