第10話「私はブレイブ王国・親衛騎士団の団長を務めますシャーロット・アルビオンと申します。以後、お見知りおきを」
「絶体絶命の窮地を助けていただきありがとうございました。しかしその見たこともない魔導ロボはいったい――?」
操騎士の金髪美少女が[ブレイバー]を見上げながら言った。
それは心からの感謝の言葉と、やや控えめな疑問の言葉だ。
「[ブレイバー]は魔導ロボじゃない。勇者ロボだ!」
もちろん俺はそう答えた。
「勇者ロボ……?」
「そう! 俺の名は勇者[ブレイバー]! 正義の味方さ!」
「正義の味方、勇者[ブレイバー]――」
「そうさ! ――っと、この状態だとちょっと話しにくいな」
今の俺は13メートルの巨大ロボから、金髪の姫騎士さんを見下ろすようにして話している。
距離は遠いし、なんだかちょっと偉そうだった。
ブラック企業に虐げられてきた氷河期世代な俺は、他人を見下したり偉そうにするのがすこぶる苦手なのだ。
というわけで。
「ブレイブ・アウト!」
俺は融合合体を解除した。
ブレイブ・インした時の逆回しで、キラキラとした光が生まれ、俺の身体が[ブレイバー]から排出される。
役目を終えた[ブレイバー]は、右手で敬礼のポーズを取りながら、俺の左腕のブレスレットの中へと消えるように戻っていった。
このあたりの仕草もアニメとまったく一緒の描写で、俺はそのことに言いようのない感動を覚えてしまう。
ああ、何から何まで最高だ……。
俺は今マジで勇者シリーズの世界にいるんだ……。
なんて感慨に耽っていると、
「なっ!? その小さなブレスレットに、あの巨大な魔導ロボを格納したのですか!? な、なんと高度な空間魔法でしょうか!? あなたは……、あなたは本当に何者なのですか?」
一瞬で俺のブレスレットの中へと格納された[ブレイバー]を見て、姫騎士さんが大きく目を見開いた。
姫騎士さんの身体がビクリと震える。
「だから勇者ロボだってば。……あ、いや、俺自身はロボじゃないか。だったらまぁ勇者……いや勇者ロボの操騎士? まぁどっちでもいいんだけど、そんな感じかな」
俺が勇者シリーズに造詣のない一般人だったのなら、いきなり勇者を自称するのはどうかと思ったかもしれない。
だがしかし!
俺は根っからの勇者シリーズ脳だからな!
勇者を自称することに憧れはあっても、恥ずかしいと思うようなことはないのだ!(◦`꒳´◦)ᵎᵎドヤッ
「勇者……」
「そ、勇者さ」
「お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「だから勇者[ブレイバー]だっての」
「それは魔導ロボ……いえ、勇者ロボの名前ですよね?」
「おっとそうか。俺はユーキ・イサミだ」
「勇者ユーキ・イサミ様ですね」
「そういう君は? ツノ有り[パラディン]に乗っていたから多分、騎士団のエース操騎士だと思うんだけど」
俺がそう尋ねると、姫騎士はハッとしたような顔をすると、背筋をピンと伸ばした。
改めて見ると、ピッタリと肌に密着する赤いパイロットスーツは、肩や腰周りに白銀の甲冑っぽい防具が付いていて、めちゃくちゃエロカッコいい。
パイスー好きにはたまらないデザインだと思う。
そして姫騎士さんは乱れていた美しい金髪を手櫛で直すと、素敵な笑顔を浮かべて言った。
「これは失礼しました。私はブレイブ王国・親衛騎士団の団長を務めますシャーロット・アルビオンと申します。以後、お見知りおきを、勇者ユーキ・イサミ様」




