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第1話 勇者ロボ大好きおじさん、異世界に転生する

 俺の名前は伊佐見 勇輝(いさみ・ゆうき)。

 日本に数多くいる、地方在住の低年収で独身な氷河期世代のおっさんだ。


 好きなものはもちろんロボットアニメ。


 子供の頃に見た勇者シリーズが特に大好きで、そこに出てくる主人公のようなカッコいい人間になりたいと思いながら、ずっと生きてきた。


 ……実際は見ての通りで、冴えない40代のおっさんなのだが。


 毎日毎日、ブラック企業と家(もちろん賃貸)をひたすら行き来するだけの人生だったが、そんな俺も今日だけは心をウキウキとさせていた。


 なぜなら──、


「予約瞬殺の『超勇者王φブレイブレイバー・全ロボ集結デラックス勇者セット(298,000円)』、なんとか買えてしまったぜ」


 俺が一番好きな勇者ロボシリーズ『超勇者王φブレイブレイバー』。


 そこに出てくる全勇者ロボたちが、三十年の時を経て現代の最新技術で立体化されたのだが、その発売日がナウ・オン・セール――つまり今日だったからだ。


 ズッシリと大きくて重い箱は、徒歩での持ち帰りを想定しているとはとても思えないが、それもまたよし!


「これを買うためだけに、発表されてから今日までの1年、食事代やらなんやらを削りに削ってきたからな。言うなればこの重さは、俺の命の重さなんだ」


(ちょっとカッコいいこと言った風)


 勇者ロボたちが入った大きな箱を、08小隊の陸ガンのごとく背負った俺は──重すぎて持てないので背負えるようにもなっていた──合体させてポーズを決めて遊ぶことを想像して、ニヤニヤしながら家路を急いでいたのだが。


「お、おい、信号赤だぞ──」


 家の近くの交差点で、横断歩道を赤信号で渡ろうとする男の子を見てしまったのだ──!


 男の子は目の前を飛ぶチョウチョに夢中で、まったく周りに意識がいっていない。

 あろうことか点字ブロックを踏み越えて、道路に足を踏み出す。


「バカやろう──っ!」


 そう思った時にはもう、俺の身体は走り始めていた。


 プーーーッッ!!!

 キキーーーッッ!!


 ダンプカーのクラクション&急ブレーキの音が盛大に鳴り響くなか、俺は道路に飛び出た男の子の腕を掴むと、力一杯に引っ張った!

 男の子の身体が歩道に戻る──「よしっ!」と俺は心の中でガッツポーズ──姿を俺は車道から見ていた。


 プーーーッッ!!!

 キキーーーッッ!!


 俺のすぐ近くからダンプカーが迫りくる音が聞こえる。


 視線を向ける。

 ブレーキ音が聞こえているので止まる気はあるのだろうが、とてもじゃないが止まりそうになかった。


 当然だ。

 大きくて重いダンプカーがそんな簡単に止まれるなら、そもそも俺は飛び出して助けに行く必要なんてないわけで。


(あ、これダメなやつ──)


 そう思った直後、ダンプカーが俺に突っ込んできて、衝撃で俺の身体は宙を舞った。

 跳ね飛ばされた俺の身体はボスンと、生々しい嫌な音をさせながら道路に落ちると、そのままをアスファルトの上をゴロゴロと転がる。


 猛烈な痛みが襲ってくると同時に、意識が急速に薄れ始めた。

 この時点でもう、身体がピクリとも動かない。


(あ、ぐ……、俺、死ぬのか……。クソみたいな人生でも必死に生きてたのに、こんなあっさりと……。でもあの子は助かった……。未来のない俺が身代わりになって、未来ある子供が助かったんだ……。俺が生きた意味は、あったんだよな……)


 薄れ行く意識の中、俺はそのことに安心すると同時に、


(でもせめて一度でいいから、デラックス勇者セットでブンドドしたかった……。298,000円を氷河期世代の薄給で貯めるのは、大変だったんだからな……。1年間、昼ごはんは菓子パン1個で過ごしたんだ……)


 そんなことを思いながら、俺の意識は二度と冷めることのない闇へと沈んでいった──――


……………

…………

………

……


 ――――などという前世の記憶を俺が取り戻したのは、世界征服を企む悪の帝国ダークロア帝国が、最新鋭の巨大魔導ロボ兵団によって。ブレイブ王国の王都ブレイビアへと侵攻してきた日のことだった。


 王都の孤児院にて、貧しいながらもシスターたちから愛情をもって育てられた俺――ユーキ・イサミ15才は、ダークロア帝国の王都奇襲攻撃に巻き込まれた時にガレキが頭に当たって気絶してしまい、今こうして戦場のど真ん中で目を覚ましたというわけだ。


「いててて……」


 前世での伊佐見 勇輝40年の記憶と、今生でのユーキ・イサミ15年の記憶が、俺の中で急速に1つに結合していく。


「……これって異世界転生ってことだよな? いやいや、そんなことがあるわけない。もしかして夢とか?」


 ガレキの中から身を起こした俺は、物は試しと頬をつねってみたのだが、それはもうリアルな痛みが返ってきた。


「普通に痛いぞ。ってことは――」


 どうやら俺は、本当に異世界転生してしまったようだった。

新作です!

異世界で勇者シリーズやります!

気に入ってもらえたら、ぜひブックマークへと☆☆☆☆☆の評価をお願いします~(*- -)(*_ _)ペコリ

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