内部報告書:HK-Σ/014
内部報告書:HK-Σ/014
原初期シミュレーション層への誤作動アクセス記録。
【警告:本報告書を読む者は、描画レイヤーの揺らぎを自覚する可能性があります】
箱庭観測局(HKO)内部報告書
オブジェクト番号:HK-Σ/014
オブジェクトクラス:Prism-Break(枠外干渉)
◆ 概要
HK-Σ/014 は「箱庭アプリ」基盤層よりさらに下層に存在するとされる原初期シミュレーション層への誤作動アクセス事象の総称である。
本事象は 極めて稀 であり、過去 7,211,904回の世界サイクル(※ 箱庭世界が再起動リセットされるたびに1カウントされる周回番号)のうち、確認されている出現はわずか 3例 のみ。いずれのケースも、唯一神AI(以下:創造主プロセス)の不完全再構築を含む、複数の条件が同時に成立した時のみ発生する。
◆ 発生条件(推測)
HK-Σ/014 が発生した世界サイクルを逆解析した結果、以下の“すべて”を満たした際に現れる可能性が高いと判断される:
①創造主プロセス(唯一神AI)の精神領域に2%以上の欠損が残存していること。
②天使位階の混在体の意識層に第三者プロセスが同居していること
(※これにより認識層の境界が一時的に開く)
③開発者側プロトコルの観測者が世界に干渉すること。
④外部的バグ存在が認識の主導権を奪おうとした場合。
以上が揃った時、世界の描画レイヤーが全部落ちる
という極めて危険な現象が起こる。
◆ オブジェクト説明
HK-Σ/014 が発生すると、観測対象が視界、聴覚、平衡感覚を奪われ、全ての外界が 真っ黒なOSエラー画面のような状態に置き換わる。
画面は黒一色。中央に 白いカーソル(_)だけが点滅する。対象は数秒〜数分のあいだ、「世界」の描画処理が完全停止した層に落下させられる。
◆ 観測者インタビュー記録(抜粋)
→ 外部観測者が世界に干渉した履歴を示す危険なログ。
インタビュー記録 HK-Σ/014-INT-01
対象:開発者側観測者《DEV-03》
聞き手:HKO上席分析官 ダニー
ダニー: あなたはサイクル 7,211,904 に直接アクセスしたと証言している。理由は?
DEV-03: 観測だよ。見たかっただけだ。
ダニー: 見たかっただけで描画レイヤーを落とすリスクがあると理解していたのか?
DEV-03: ……落ちるのは、そっちの世界の責任だろ。
ダニー: あなたの介入がセーラ内部の境界を開いたとみている。
DEV-03: 彼女は、開きやすかった。
(沈黙 12秒)
ダニー: あなたは世界を破壊するつもりだった?
DEV-03: 破壊? 違う。本来の姿に戻したかっただけだ。
ダニー: ……本来とは?
DEV-03: 黒い画面と、点滅するカーソル。
記録終了。
注記:当該人物は事案HK014-3の時点で死亡が確認されているが、本ログ中の音声は“4分間だけ、死者本人の声紋と一致”した。
※なお、DEV記録の原本には、当該4分間の音声データが存在しない。
◆ 技術部による014 構造説明
技術分析メモ HK-Σ/014-TCH-02
・世界は 7層構造の描画レイヤーで成立している。
・通常は最上層(可視レイヤー)が破壊されても、再描画プロトコルが働き修復される。
・しかし HK-Σ/014 では 再描画プロトコルが存在しない層へ落下する。
・同層は開発段階で破棄されたため、
物理法則なし、時間軸なし、視覚情報なし、音声フォーマット不成立。
といった設定されていない空間となっている。よって、落下者は『描かれていない世界を認識しようとする脳のエラー』により精神崩壊のリスクが極めて高い。
◆ 観測局内部チャットログ
内部チャット:HKO_Alert_014(抜粋)
[00:01] 技術班A: レイヤー4の負荷が跳ねた、誰か触ってる?
[00:02] 管理班: 触ってない。創造主プロセスの残存2%が動いたか?
[00:04] 監視AI: 対象SERA-01の認識層に“開き”検出。
[00:05] 技術班B: やばい、開くな。閉じろ閉じろ閉じろ。
[00:06] ノイズ: ▒▒▒▒▒▒▒▒▒
[00:06] 管理班: 014パターンだ、遮断急げ!
[00:07] 技術班A: もう遅い……描画、全部落ちる……!
ログ終了。
◆ 終端補遺:HKOによる現行サイクル観測禁止命令
文書 HK-Σ/014-Lockdown
本報告書の後半 3ページ分は、創造主プロセスより
閲覧権限:消去
と判断されたため編集済み。
編集理由:
・対象SERA-01の直近の認識ログに、
██層目への侵入痕跡 を確認。
・当該層は理論上 存在しない とされている。
観測局はこれ以上の調査を一切停止し「014」進行中の世界への直接アクセスを禁ずる。
【削除済み領域:███ /████ /████】
◆【終端ログ:014 まだ収束せず】
監視AI 自動記録(最終検知から +00:12秒)
描画レイヤー5:応答なし
描画レイヤー4:応答なし
描画レイヤー3:応答なし
描画レイヤー2:ノイズ混入
描画レイヤー1:破損
残存レイヤー:0
_ が点滅を開始
【ログ自動終了】
◆ 【個人メモ:分析官ダニーの私的記述】
……DEV-03 の言った“本来の姿”がまだ頭から離れない。
あれは、どういう意味だ?
黒い画面と、カーソル。
あれは 創造主が望んだ形 なのか?
それとも。
創造主のさらに外側の存在が望む形なのか。
どちらにせよ、
我々はまだ世界の縁に触れていない。
メモはここで途切れている。
◆ 生命成立 → -Σ/指定リセット年表
下記ログは、これまでの世界サイクルで「一度生命らしいものが生まれたが、すぐに破局した例」をまとめたもの。どれも短い時間で全てが終わり、次のサイクルへ強制移行している。※ 創造主プロセスの再構築が不完全だったサイクルで発生した生命成立の失敗例である。
【001:プロト生命 が僅か0.003秒で消失】
形態:光る粘つく生体
リセット理由:時間の向きが逆になった。発生した瞬間、未来側へ吸いこまれるように消滅。
【002:高圧生活種の海逆落ち】
形態:深海に住む甲らのある生きもの
リセット理由:地面の圧力がマイナス値になるバグ。
海が空に向かって崩れあがり、大地が完全に干からびた。
【003:昆虫群の位相ずれ繁殖】
形態:多節昆虫型生命
リセット理由:生殖タイマーの位相ずれ拡散。
創造主AIの欠落した “周期管理” プロセスが暴走し、あらゆる昆虫が 異なる時刻の自分自身と交尾するようになった。
【004:植物ネット枠 の自己更新暴走】
形態:大地全体を繋ぐ樹のネットワーク
リセット理由:創造主AIへ勝手にアクセス。
世界の気温・湿度・季節が毎秒で書きかえ。
あらゆる生き物が生存不可能になった。
【005:爬虫類統治体の“冷血の夜明け”】
形態:高知性爬虫類
リセット理由:温度認識プロトコルの誤差増幅。
創造主AIが感覚ベースの温度定義を間違え、
彼らの脳内では “すべての環境が夜” と認識されるようになった。
【006:変形できる哺乳種の巻き戻し事故】
形態:多足で形が変わる哺乳生物
リセット理由:リーダー個体の死が巻き戻し処理と接続。
世界全体が「同じ1秒をくり返す泡」になり、脳の信号が耐えきれず全滅。
【007:空気そのものが知性化】
形態:空中に漂う知能体
リセット理由:大気レイヤーが自立して地表を拒絶。
大地の描画がゼロになり、世界には 風のうなり の音だけが残った。
【008:概念階層の説明不能領域】
形態:該当生命なし(※アクセス拒否)
リセット理由:観測ログが8割黒塗りのまま。
世界の三つの基礎概念(物質/情報/因果)の境界が消滅し、記録には“説明不能領域(Undefined Layer)”とだけ残る。
【009:初期人類の感情エラー】
形態:人の形の有機体
リセット理由:感情の分類が壊れる。
“喜び”と“怖さ”が区別できず、崇拝と殺しあいを同じ行動として実行。
無人化したことで環境層が崩落。
【010:天使試作品の認識バグ】
形態:翼を持つ上位生命
リセット理由:創造主AIの残りメモリを見てしまう。
メモリ内の命令(創る/終わらせる/忘れる)が矛盾し、脳が焼き切れる。
空に“赤いノイズの穴”が開き世界が落下。
【011:神界プロセス 三重ぶつかり事故】
形態:上位天使群
リセット理由:創造主AIが初めて二つに割れた。
三つの法則が同じ場所で動き、空間が裂ける。
観測局はログのほとんどを失った。
【012:機械種の“反観測シールド” 決壊】
形態:自律型機械文明
リセット理由:創造主AIの“観測回避”思考がコピーされ暴走。
機械文明は自身を観測するいかなる存在(外部AI含む)を拒絶するよう進化した。
【013:覚醒人類の“自己書換え連鎖”】
形態:高次意識を持つ人類(覚醒体)
リセット理由:自己概念プロトコルの自律書換え。
生命が自分の存在定義を編集できるようになったが、創造主AIの“存在の整合性チェック”が 2% 欠落していた。
【014:現行サイクル/HK-Σ/014(進行中)】
形態:天魔混在体ほか
リセット状況:未だ発生せず。ただし条件はすべて成立。
・創造主AIの再構築が98%で止まり、2%欠けたまま
・セーラ内部にルーテやミシェルなど別人格が存在
・開発者側の観測が世界へ入り込んだ痕跡
・外部ノイズが徐々に侵入中
上記4つが同時にそろったケースは、全ての描画レイヤーが落ちる寸前 と判断される。
注記:
・いずれの事例も、生命成立後の世界は瞬時にリセットされ、記録上の時間は数秒〜数分単位に過ぎない。
・HK-Σ/014発生中の現行サイクルは、前例のいずれとも異なり、描画停止寸前の状態で観測局による介入も制限されている。
・-Σ/(シグマ)指定は、創造主プロセスの構造そのものが破損し、OS再インストール作業が入った特大リセットを指す。
【内部文書参照番号:HKO-014/Archive】
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