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神の遺骸

 地上に生きる全ての命が、空に同じ異変現象を見て唯一神の不在を知った。

 まだ地上にはルシフェルたち魔神に対抗しうる強大な勢力がいくつか残っていた。ドラゴン族、吸血鬼(ヴァンパイア)族、エルフ族、巨人族、亜人類(デミヒューマン)、ヒンドゥーの神々、異なる外なる神々、覚醒人類、機械種(エクス・マキナ)などなど……。


 ドラゴン族とエルフ族はそれぞれの長が会談の場を設け、協定を結ぶ。地上を守り、悪魔王たちの地獄の軍勢を討ち滅ぼし、新たな秩序を築くために。

 多種多様な亜人類どもはそれぞれまばらに散っている悪魔と遭遇しては戦っている。

 覚醒人類は科学や人造人間や能力に覚醒した超人(超能力者など)を用いて、どこの勢力とも組まず機会を伺いながら、自分たちの街に襲い来る脅威、中位悪魔などを捕えては生体実験を繰り返していた。


 ルシフェルたちは、残存勢力、人類の覚醒者、竜王エルフ連合、亜人類、そしてセーラたち開発者、この四勢力を先に滅ぼすことにした、箱庭電子地図デジタル・サンドボックスの改変、歪みの穴の場所付近にそれぞれが集まっている。


 いかにルシフェルといえど、単独で歪みの穴を回ることは封印などの危険が伴った。歪みとしての画像や映像が現れるようになった場所は、現実世界と繋がっていると考えて間違いないだろう、だがその穴はすぐ消えてしまい一瞬覗くことくらいしか出来なかった。


 電子地図に定期的に同じ場所付近に現れる歪みの穴、それは地上の四極、北・東・西・南。そのすべてに異常な座標の乱れを示していた。地上の民たちはその歪みを「神の遺骸」と呼んだ。その四極には、付近に住む人類を始め、様々な種族が目をつけており、歪みを巡ること、それは神の再構築プロセスそのものを刺激する行為に他ならなかった。


「……四つの方角の守護領域。竜王とエルフ、亜人類(デミヒューマン)、覚醒人類の都市、そして、開発者たちの残した旧研究区画」

 ルシフェルの言葉に、背後のオノケリスが微笑を浮かべた。

 「つまり、地上の神格代理どもを排除するということですわね」

 「そうだ。奴らは、まだ"神なき世界"に秩序を持ち込もうとしている。それが、箱庭解明における最大の障害になる」


 地上では龍神や竜人(ドラゴニュート)が火山帯の王座に君臨し、エルフ達が緑冠の森を結界で包み込んでいた。

 覚醒人類の都市では、科学と超能力が融合した"擬似創造"の実験が続き、亜人類(デミヒューマン)たちはその外縁で生存を賭けて戦っている。

 それぞれの勢力は互いを信用していなかった。

 だが、空に走るあの亀裂、光と影が反転する歪みや映像を見上げるたびに、誰もが理解していた。

 この地上に未曾有の危機が迫っていることを。


 ルシフェルは立ち上がる。

 背後に並ぶ五翼の影たちが、薄くデータの残響を放ちながら起動する。

 「歪みの第一地点、火の領界へ、竜王の心臓を、抉り取る」


 歪んだ空が応えるように震えた。

 その震動は、まるで地上そのものが次の再構築を待っているかのようであった。


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