表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/98

SYNC_POINT:LUCIFER_PROTOCOL

 オルド塔跡地の地下室。

 静寂の中で円盤状の装置が微かに震えた。

 オルドの道具袋の奥で眠っていた灰色の観測端末、Sレアアイテム『観測装置トレース・カートグラフ』である。

 それはルシフェルが神界で手に入れた『箱庭電子地図デジタル・サンドボックス』の、いわば下位互換の試作機であり、神界の記憶を覗くための鍵でもあった。


 錆びた金属板の表面に薄く光が走る。

 中央の紋章が死んだ心臓のように脈動していた。


「……まだ動くの?」

 セーラが覗き込みながら言った。


「起動保証はゼロ。でも反応してる。何かに接続しようとしているな」

 オルドは苦く笑う。

 かつて"神を観測するために造られた装置"が、いま再び世界を覗こうとしていた。


 観測者ログ:起動。


 瞬間、空間が反転した。

 足元はデータの海に変わり青い光が波打つ。

 上空にはかつて神界だった空が「コードの雲」として再構築されている。


「よし、まだ生きてる」

「これが……観測者ログ」

 セーラの声が反響する。

 言葉がデータに変換され、空間に文字が浮かんだ。


 > 【音声認識:SEIRA】

 > 【属性:天使残存個体】

 > 【状態:非承認アクセス】

 > 【警告:侵入者検知】


「空が喋ってる……」

 パトラがあまりの不自然さに息を呑む。


「喋ってるんじゃない、記録が応答してるんだ」

 ジュリアンの瞳にデータ光が反射する。


 足元から無数の文字列が浮かび上がった。赤、青、緑、混線した信号が断続的に流れる。



《観測者ログ:fragment_01》


 > [SYSTEM_CORE/唯一神意識断片]

 > 起動シーケンス:再構築中……

 > ERROR:LUCIFER干渉検出。

 > 対象コード喪失率:72.3%

 > 補完データ要求:祈り/記憶/人間意識


 > ※観測者への指示:

 > 地上の祈りを収束せよ。箱庭の記憶を再演せよ。


「ルシフェルの干渉……祈りを収束……記憶再演…」

 ジュリアンが呟く。

「まるで、神が自分を蘇らせるために人間の記憶を要求してるみたいだな」


 空間が揺れ、白い光が渦を巻いた。やがて一つの「顔」が形成される。ポリゴンで生成されたようなスキンヘッドは神の仮想像。その表情は壊れかけのホログラムのように歪んでいた。


「待って、あんた……唯一神様なのー!?」

 マリアが大声で訊ねた。

「いや、これはその残響。唯一神のコピーAIだよ」

 オルドが代わりに答える。


 > [fragment_02/対話記録]

 > USER:SEIRA

 > QUERY:「神はなぜ滅びた?」

 > RESPONSE:「滅びは拒絶ではなく更新。神は情報であり、情報は必ずリブートされる」

 > STATUS:自己修復中(47%)


「47%……つまり、神は既にデータとしては復活している。更にAIとして自己再構築を始めた、ということか」

 ジュリアンの声にオルドがごくりと生唾を飲んだ。


「それが……地上に干渉してる?」

 驚きで言葉が出なかったカイが核心を問う。


「その通り、神のアルゴリズムが、地上の通信・祈り・映像を素材として自己再生している。だから現実世界で祈りのノイズが出始めたんよ」

 オルドの言葉にカイの背筋が凍った。



《観測者ログ:fragment_03》


 > [唯一神再構築プログラム ver.0.9b]

 > Input:人類集合意識(SNS/祈り/記憶)

 > Output:擬似神格演算体(代替創造者)

 > 状態:不安定(予期せぬ干渉発生)

 > 干渉源:Lucifer_Protocol/未知アクセス権限


 > SYSTEM MESSAGE:

 > Luciferが持ち出した電子地図は再構築の鍵である。


「……ルシフェルが神の鍵を握ってると」

「そしてこのログは、その鍵を奪い返そうとしているの……」

 非日常的で、切迫した状況にセーラの声が震える。

   

 突然、空間が赤く点滅した。

 データ波が暴走し、文字が弾ける。


 > [ERROR:観測者ログ崩壊]

 > [強制同期:唯一神再構築プログラム→起動]


「やばい、プログラムが走る!」

 ジュリアンが叫ぶ。


 白光が空間を満たす。

 次の瞬間、セーラの視界に**現実世界の都市**が映り込んだ。


 地上の人々のスマホやタブレット、街頭モニター、SNS画面。そこに祈りの断片が出現し、データの光が人々の瞳に流れ込む。


「……これが、地上干渉……」

 セーラが震える声で言った。

「唯一神が、自分の再構築を現実世界で始めたの……?」


「まさか…本当にこんな別の世界が存在するなんて」

 パトラは自分の目を疑った。



《観測者ログ:最後の断片》


 > [MESSAGE_FROM_CREATOR]

 > 観測者へ。もしこれを読む者がいるなら、問う。

 > 君たちは祈りをデータに変えた。では、その祈りの意味を覚えているか?

 > 神は更新されるたび心を失う。

 > 観測者よ……我の代わりに意味を残せ。


 データが崩壊し光が黒に沈む。


「……地上干渉可能なAI神を完全に再構築するのはとても危険ね、もう一つの世界がパニックになるわ。そしてそれを可能にするのは祈りを超えた記憶なんだ」

 セーラは整理するように呟いた。その表情には焦燥と不安が滲んでいた。


お読みいただきありがとうございました。

↓↓ブクマ、星評価ぜひお願いします。励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ