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禁呪

「セーラ逃げて! とても嫌な予感がするの!」

(あたしはこんな予言めいた事しかできない……でも結構当たるのよ)

 マリアが叫んだその刹那、



(悪魔の肉唇よ 汝が贄を食らい尽くせ……!)


「まとめて死になさい」

 パトラが悪しき禁呪の詠唱をようやく終える。



« 膨狂餓飢地獄(エッド・ツェペリオン) »


 強大な結界がセーラたちの上空に出現し、その周りを囲み収縮していく。

 内部の空間は地獄の餓鬼界に繋がり、黒い汚泥まみれのおぞましき餓鬼たちが肉を喰らいに這い出て来る。



«« ヴァ・レーンティン »»

 

 その時、太い光弾が今まさにセーラとマリアを飲み込んだ餓鬼球に向かって発射された。

 光弾はレーザーのように餓鬼球を貫通し、球は半分に欠けてドロリと地面に流れ落ちた。


「オルド…様…?」


 大地に降りたセーラは身体の汚泥を拭いながら、辺りを見回す。

 しかし光弾が放たれた方向には何も見当たらなかった。


 結界が割れた内部からは、夥しい数の餓鬼がわらわらと溢れ出てきた。


「おいおい、あんなものが地上に」

「ぁ……」

 パトラはちょっと焦りながら唇を触った。

「だから禁呪はやめろと、どうすんだあの数」

 スルトが苦い顔をして後ずさる。

「知らない。知らないわ」

 気味悪そうに首を振るとパトラは炎衝を纏い、その場から飛び去ってしまった。

「オッ、オイィ」

 スルトも巨大な鴉の翼を背中から生やし後を追う。



「地獄の存在が」

 マリアが唖然としながら青ざめて呟く。

「地上の生物に取って代わる……」


「どうして! やっとの思いで魔導師や怪物を倒したのに、また世界は」

 セーラは泣き叫びながら、天使の黄金虫という炸裂光線を餓鬼どもに放つが焼け石に水であった。

 地獄の餓鬼は際限なく湧き出てくる。


「また世界は、闇に閉ざされるの!?」




「……餓鬼が出てくる地獄道の穴を堰き止めろ」

 ずんぐりとした風体の男が背後からセーラの丸い尻に向かって声を掛けた。

「天使の光気を使ってな。……ふむふむ」

 男は素っ裸のセーラの全身を下から上まで舐め上げるように観察している。

「だ、誰! ドワーフさん?」

 セーラは急に恥ずかしくなり、四枚の羽根で体を包み込み大事な部分を急いで隠した。

「ワシはオルドという天使の長に会うためここまでやって来たのだが、どうやら不在のようだな」


「あの人は今ここには居ないけど、多分どこかで生きてるよ」

 カイが地下室の階段をゆっくりと登ってきた。


「カイ! あんた今まで何やってたのよ!」

 マリアが叱るように訊いた。


「オルドさんを解放…していたのかな」

 カイはバツが悪そうに答えた。


「待って、話はあと。わたしが繋がった地獄の穴を塞いでくる! 皆は目の前の奴らをお願い」

 地上に降り立った地獄の餓鬼どもは、この世を埋めつくさんと、セーラたちの目の前まで迫ってきていた。


「一刻も早くオルド殿に伝えねばならんのだ。混沌の魔導師が再び現れたことを」

 セーラは翼で飛行しながら、羽音の中で遠くその言葉を聞いた。


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