永遠の闇の中で
「セーラといったな。なるほど…立派な羽根だ」
「元…悪魔とはどういう意味? わたし達の敵なの?」
そう言うとセーラは唇をきゅっときつく結んだ。
「言葉の通りだ。あいつと剣を交わした時に俺には分かった」
スルトは全てを諦めたような冷笑を浮かべた。
そして背を向けているパトラの元へ歩み寄る。
パトラは体育座りのまま、瓦礫が散乱する床を見つめていた。
「パトラ、天使どもと俺たちは仇同士だ。遠い過去から、太古の昔から、何千何億年と争ってきた。それでも未だに決着は着いていない」
何をやってきたんだろうな、とスルトは笑った。
先程セーラに向けた複雑な感情は、もう彼の心の内から消えていた。
「わかるか、この意味が。俺たちの使命は永劫に戦い続けることだ」
ヒソヒソと声を潜めて話すスルト。
「関係ないよ。わたしは今のこの人生で幸福を手にしたいだけ、わたし我儘なの」
(──そう、わたしが本当に欲しいものは、この世界。全てが欲しい。)
「欲深いな、パトラ、いや……」
「パトラでいいよ、お兄ちゃん」
寂しげに小さく笑うパトラ。
「お兄ちゃん、ね…それにしても、文献に伝承されるような悪魔が実在したとは」
スルトが話題を変える。
「あの男は悪魔だったの? 神器を持っていた」
「戦いの最中、あいつの記憶が流れ込んできてな、意図して強制的に伝えたのかもしれないが」
スルトはうんざりした顔で続けた。
「あれは、心を閉ざしてずっと闇の中で生き続けた存在だ」
「あの男、もしかして……」
あれこれ想像を巡らせるパトラ。
「何にしろ、お前が終わらせてやったわけだ」
「そうね」
そう言うと、パトラはすくっと立ち上がった。
(あれで死んだとは思えないけど…)
「さぁてそんじゃ、まず一人目の天使を殺すか」
スルトがあっけらかんと言い放つ。
「お前たち運が悪かったな、天使と揃って死んでもらうぞ」
「くそっ、戦いは免れないか」
カイが舌打ちする。
「待って! どうしても殺しあわなきゃいけないの!?」
セーラが叫んだ。
「そうよね…あの子だけは仲間になってくれないかな」
マリアはパトラと親しくなる事を諦めきれない。
「命乞いは無駄だ。お互いにな」
スルトの非情な言葉を黙って聞いていたカイはふと閃いた。
(箱庭アプリで奴らの属性を変えられないだろうか?)
オルドの今際の言葉、右クリックをまだ試していなかったではないか。
「戦わずにこの場を乗り切る方法があれば……」
カイはノートパソコンがある地下室への隠し階段のほうをチラと見た。
その隙を見逃さず、スルトが一瞬にしてカイとの間合いを詰める。
「カイ!」
セーラが天使の鉞でスルトの剣を迎え撃つ。
しかしセーラの防御よりもスルトの攻撃は速かった。
「利き腕は貰ったァ!!」
白金色の輝剣・ジョワユーズがセーラの右腕を薙ぎ払い血飛沫が舞った。