王様ゲーム 【月夜譚No.330】
王様ゲームが定番になりつつある。以前に友人が酔った勢いでやろうと言い始め、何故かそれが飲み会の恒例行事のようになってしまった。
飲み会に集まるのは学生時代の同性の友人ばかりで、無茶な命令もしないから特に苦でもなく楽しみながらやれている。
今夜もまた、私の前に割り箸で作った籤が差し出された。一本を選び取って掌の中で確認すると、そこには見慣れた筆跡で「2」と書かれていた。
「王様だーれだ?」
一人の掛け声に、全員が周囲を見回す。だが、誰も手を挙げない。
「もー、王様誰よ~」
一向に王様が名乗りを上げないので、皆の籤を確認することになった。――が、そこに「王様」の文字は一つもなかった。
「……ねえ、一人少なくない?」
飲み会に集まったのは六人。しかし、個室にいる人数を数えると、そこには五人しかいなかった。
『おうさまだーれだ?』
酔いが一気に醒めて静まり返った空間に、厭に幼い声が響いた気がした。