表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/24

食いしんぼ大公妃と妻に愛を誓いたい大公の夜の過ごし方

 マリユスからの報告を受けた日の夜。ラファエルは最近習慣となりつつあるマリーズとの夜の時間を心待ちにしていた。

 仕事が溜まっていたため一緒に夕食は摂れなかったのでこの時間が待ち遠しかった。

 先にラファエルが座ると向かいにマリーズが座る。そしてラファエルがその横に移動するのがいつものことだ。

「マリーズ。宝石箱を見せてくれないか?」

 ラファエルの言葉にメグがマリーズの宝石箱を取りに行った。そしてマリーズへと渡してくれる。

「これですけど」

 ラファエルはマリーズの宝石箱を開けると一番上の段には先日ラファエルが贈ったペンダントと指輪だけが入れられており、その他はその下の段たちに詰め込まれていた。

「フレデリック」

 ラファエルがそう言うとフレデリックが箱を持ってきた。マリーズが不思議そうに見ている。ラファエルは箱からマリーズの宝石箱の2倍はある宝石箱を取り出しマリーズの前に置いた。

「綺麗」

 そう言ってマリーズが宝石箱を見つめている。宝石箱は細かい刺繍がされた一点物だ。花が咲き乱れ、鳥が飛び、蝶が止まりと、側面も蓋も目一杯美しい刺繍が施された芸術品と言えるほどのものだ。

 昼間のうちに商人に何点も持って来させ、その中からラファエルが選んだものだ。

「開けてみて」

 ラファエルの言葉にマリーズは宝石箱を開けた。中には何も入っていない。

 そこへラファエルは先日贈ったペンダントと指輪を入れる。

「マリーズが持って来た宝石箱には今まで持っていたものやこれからマリーズが自分で買ったものを入れて、こっちにはオレが贈ったものを入れて欲しい。

 いっぱいになったらまた新しい宝石箱を贈るよ」

「ラファエル様。ありがとうございます!凄く嬉しいです。こんな綺麗な宝石箱見たことありません!」

 ラファエルはマリーズの方に向きその手を取る。

「マリーズ。オレは君に酷いことをした。生涯償いきれないだろう。

 だが、今はマリーズを愛している。

 これからもそう言ってもかまわないだろうか?」

 マリーズが息を飲んたのがわかった。

 沈黙が続きやがてそれはマリーズのすすり泣きに変わった。

「はい。私もラファエル様を愛しています」

 ラファエルはその胸にマリーズを抱きしめた。

「何故泣く?」

 ラファエルはマリーズの背を撫で問いかける。

「だって、大公妃としてすることは何もないって、あ、愛を求めるなって」

 あの晩の事でマリーズはラファエルの想像以上に傷ついていたのだ。そしてやはり不安だったのだろう。早くこうして伝えれば良かったとラファエルは後悔した。

 アーロンの言ったとおりだ。自分から伝えなければならなかった。マリーズから言えるはずなどなかったのだから。

「すまない。あの時は本当にそう思っていた。だが、マリーズを知っていくうちに変わっていった。

 マリーズが愛しくて堪らなくなった。だが酷いことを言った自分が今更愛してるなどと言える人間か?と悩んだ。

 だが伝えなければ何も始まらない。オレたちの関係を中途半端にしておくわけにはいかないと思った。

 泣かせるつもりはなかったが、それほどマリーズが傷ついていた証拠だろう。

 どうか許して欲しい。そしてオレにマリーズを愛する権利をくれないか?」

 マリーズを抱きしめる腕に力がこもる。そしてマリーズがラファエルの背に腕を回してきた。

「私にもラファエル様を愛する権利をください」

「ああ、もちろんだ。マリーズだけの権利だ。他の誰のものでもない。誰にも渡させない」

「じゃあ、ラファエル様もラファエル様だけの権利ですよ。他の誰にも渡さないでください。誰も入れないで」

 マリーズは気付かず泣きながら訴えた。自分以外を選ばないで欲しい。二人の間に誰も入れないで欲しいと。

 ラファエルはそれがマリーズの本心だと、それほどこんな自分を愛してくれていたのだと思い、自分はそれ以上に愛したいと思った。そして人を愛することはこんなに幸せで切ないことなのだと知った。


 室内はいつの間にか二人だけになっていた。マリーズがやっと泣き止み恥ずかしそうにしていたかと思ったら顔を上げてラファエルを見て言った。

「ラファエル様。愛しています」

 清々しいほどの笑顔でそう言うマリーズに、ラファエルは自分の心臓は何回撃ち抜かれるのだろうかと思った。

「オレも愛している」

 ラファエルがそう言うとマリーズは恥ずかしそうに宝石箱の蓋を開けたり閉めたりを繰り返した。

 その姿にラファエルは愛しさが募り、その体を抱き上げマリーズの寝室へと向かうとそっとベッドに下ろした。

 薄明かりの中マリーズがラファエルに手を伸ばしてくる。

 望まれるままラファエルはマリーズに向かって体を倒しその体を抱きしめると愛していると囁いた。

 そして全てが片付いたら、などという言葉は忘れさり、その体を熱を味わった。

 何度も思うがまま愛していると囁き、挑み味わい、途中泣き止んだはずのマリーズが再び泣き出したがそれでも止まらず、最後はマリーズが意識を失いそれに慌てたラファエルがやっと正気に戻った。

 マリーズの目元の涙を拭い、汗に濡れたその体を腕に閉じ込めラファエルは短い眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ