ほったらかした大公、異変に気付く
マリーズの一日目の食事改善は大成功だった。
美味しいとたくさんの言葉をもらい、また期待していると言われるとやる気が出るというもの。
二日目の朝食の最後の片づけをしていると小さな声が厨房の入口から聞こえた。入口を見ると女性が一人立っている。
「どうしたの?朝食食べそびれたの?」
マリーズが聞くとがばっと女性が頭を下げた。そして、
「私を厨房で働かせてください!」
と叫んだのだ。
「そんな勢いよく言わなくても大丈夫よ。こちらにおいで」
マリーズは中に入るよう促す。
「さて、私たちにはとてもいい話なんだけど、厨房担当を志望した理由はある?」
近くで見ると女性は二十歳過ぎのようだ。茶色い髪を三つ編みにしてメイド服を着ている。その指先は赤い。
「私、洗濯担当のメイドになって五年なんですが、指先が荒れて洗濯が嫌になっていて仕事を辞めようかなと思っていたんです。そうしたら厨房で人を募集しているというのを見てそれなら厨房で働いてみようと」
「料理人も冷たい水を使うし、手が荒れるわよ?」
「はい。でも、同じ荒れるのでも、私の予想なんですが、掃除メイドより、料理人の方がお給金が良いのではないかと思いまして。同じ手荒れするならお給金が良い方がやる気がでます!
それに、休みの日は城下にある実家に帰って母と一緒に料理をしたりするので簡単なものなら作れます」
正直である。そしてその通りなのだ。洗濯メイドよりマクギーの初任給の方が多いのは事前にフレデリックに確認してある。前にいた料理人よりはまだ見習いなので少ないが、大公城の食を担うのだからそれなりの責任と信頼が必要になってくるので結果高い設定になっているのだ。
これは見所がある。
「正直な人は好きだわ。上長にはもう言った?」
「まだです。採用していただけるかわかりませんでしたので」
誠に正直である。
「そうね。引継ぎとかはあるの?」
「ありません。洗濯メイドは何人もいるので私一人が抜けても次の人が採用されるまでいくらでも回せます」
「わかったわ。あなたを今日の昼から厨房担当にします。今からフレデリックのところに行って異動願いを出して上長に挨拶してきて。名前を教えてくれる?」
女性がパッと明るい笑顔を浮かべた。
「レリーです。よろしくお願いいたします」
「よろしくね。あとこれだけは言っておくわ。まだ見習いではあるけれど、ここの上長はマクギーよ。マクギーが年下だからといって勝手な行動をしたり、言うことを聞かないと異動してもらうことになるわ。
あくまでもマクギーと関係性を良好にして美味しい料理をたくさんの人たちに食べてもらう。美味しいものを食べれば元気に働ける。そういう思いで担当してほしいの」
「はい!かしこまりました!」
「ではこれから頑張ってね。まだしばらくは私たちもいるから安心して」
「はい!」
そう言ってレリーは出て行った。フレデリックのところに行くのだろう。使用人用に王都から手荒れのクリームを買い付けた方が良いだろう。マリーズが使っていた王都の店に手配してもらうようフレデリックに伝えないとなと考えた。
「良い子が来たわね。ああいう正直な子は却って清々しくて良いわ」
「そうですね。不安に思いながらここに来たのでしょうが、顔も明るくなったので頑張ってもらましょう」
こうして一人厨房担当が増えた。昼からやってきたレリーはよく働いた。本人が言っていたように休みに料理をしていたというだけあって包丁さばきも良い。年下のマクギーにもきちんと敬語を使っている辺り正直で真面目な性格なのだろう。
いい人材が来てくれたとマリーズは喜びながら皿洗いを続けた。
そしてその二日後、一人の少年が厨房にやってきた。兵士の服を着ている。
「ロジャーです。僕を厨房担当にしてください。お願いします」
「それは構わないけど兵士でしょ?ここでは兵士はなりたい人が見習いから始めると聞いたわ」
その言葉にビクッとロジャーが震えた。
「どうして厨房担当を希望するか聞いてもいい?」
マリーズは怖がられたのかと思いなるべくゆっくりと優しく問いかけた。
「僕の家は城下で小さな雑貨店をやっているのですが、父は次男の僕に兵士になれといって勝手に応募したんです。
僕は本を読んだりボードゲームを一人でしたりするのが好きで家にこもりがちの子どもだったのです。そうしたら父に男なんだから強く鍛えてこい!とある日急に放り込まれたんです。
15歳で放り込まれて3年が経ちましたが、嫌々やっているのもあるのでしょうが、これでも筋肉は付いた方なんです」
確かに貧弱ではないがマクギーより少し体格が良いくらいだ。
「元々筋肉がつきにくい体質なのかもしれません。ですが、やはり仕事は嫌々したくはないです。万が一のことがあって出征しても僕は役立つどころか邪魔にしかならず直ぐに殺されて終わりでしょう。
それに引き換えこう見えて兵士が料理を担当していた時僕が一番上手かったんですよ。だからたまに料理が苦手な先輩の代わりに厨房に入っていました。
大公妃殿下を始め皆さんが料理するようになってから見違えるように先輩や後輩が生き生きして鍛錬をしてるんですよ。美味しい料理をたくさん食べて、苦手な料理もせずに鍛錬に打ち込める状況に喜んでいました。
だから、僕は兵士より、そんな兵士を支える料理人の方が向いているんじゃないかなと。人にもあまり会わなくても良いですしね。
その合間に戦地で作る美味しい料理の研究もしたいです。食べられるだけマシな環境に置かれるとはいえ、日持ちがするものや簡単に美味しいものが作ることができたら喜ばれるかなって」
中々ちゃんと考えている。兵士に向いていないと本人は言っているが、目線はちゃんと兵士として育っていたのだ。
「お父様は大丈夫?」
「はい。殴られても説得します。まあ当分は実家に帰りませんが」
そう言って笑う少年はスッキリとした顔をしている。3年間悩み迷っていたのかもしれない。自分に向いているかどうか。そして向いているかもしれない仕事を見つけ、父親に逆らう勇気を持ってここに来たのだ。
「では採用します。フレデリックに異動の願いと、上長に報告。あと、悪いんだけど、兵士の給金より料理人見習いの方が少ないのよ。正式に料理人になれば増えるけど」
「大丈夫です。僕は三食ここで食べてますし、主な趣味は読書です。図書館に行って借りるのでお金は貯まる一方の生活ですから少し下がっても問題はありません」
そんなロジャーにレリーに伝えたようにここの長はマクギーであることを伝え、翌日から来てもらうことになった。
そうこうすること10日。厨房担当が合計7名になった。
うち二人は姉妹で掃除メイドをしていたが、苦手な先輩がいると言って異動願いを出したいと言ってきた。合う合わないはあるものだが姉妹揃ってとは凄い先輩がいるものだとマリーズは思った。
18歳と20歳の姉妹はパンを焼く担当がしたいと言って、レシピ集からいくつか作らせると完成度が良かった。できればお菓子の担当もしたいという。
お金が貯まったら実は二人でパンと焼き菓子の店を開きたいのだそうだ。子どもの頃から作っていたというだけあって焼き菓子も焼かせてみたらまだまだ店に売るには劣るが美味しいものが焼きあがっていた。
レリーと仲が良かったという洗濯メイドが一人、大公城の役人担当のメイドが一人。
寄せ集めといえば寄せ集めだが、それぞれがそれぞれの思いを持って志願してくれたのだ。しかも7人いれば、ちゃんと休日もとれる。
当初は一か月で人数が揃うか心配だったがなんと10日で揃ったのだから、残りの日数はそれぞれが持ち場を考えて、料理の腕を磨いていくだけだ。その間申し訳ないが休みはない。
急場で指導するので余裕がないのだ。いつまでもマリーズたちがいるわけにはいかない。
しかし、その懸念は一か月もかからずに払拭された。
なんと、ちゃんとした組織として形成され、志望しただけあって皆熱心に料理の作り方を実践で学び、一流料理人にはまだまだ遠いが十分美味しい料理が作れるようになっていた。
兵士だったロジャーが組織立てを考えて、皆がそれぞれ支持に従った。マクギーはなんと全員にレシピ集を書き写して渡していた。いつ寝ているのか心配になったほどだ。
マリーズたちの手から離れるのに3週間。全員の顔が真面目ながらも楽しそうなのを見てマリーズは安心した。
これなら大丈夫。やっていける。若い彼らに任せれば上手くいく。マリーズは肩の荷が下りたと感じた。
マリーズは厨房を後にしフレデリックの下に向かった。来月からあの七人で料理をしていくという報告とシフトを作成してもらうために。
マリーズはノックをした後フレデリックの執務室に入った。マリーズが説明するとフレデリックは実に嬉しそうに笑った。
「マリーズ様に感謝いたします。この三週間で見違えるほど使用人たちや役人たちの顔色が良くなりました。
実はラファエル様も食事量が増えて、少し青白かったお顔に赤みが増してきましたよ」
「そう!なら良かったわ。でも不思議な制度ね。ラファエル様から使用人まで同じ料理なんて」
大公城では使用人と役人、更に重鎮とラファエルも同じものを食べている。もちろん使用人用食堂に来るわけでなく、役所棟や重鎮たちの個室にはそれぞれ担当のメイドがいて、食事の時間に取りに来てワゴンに乗せて配るのだ。
だから使用人たちのように食べ放題というわけではないが同じものを食べている。
「前大公様からの方針で、同じものを食べることで絆と連携が生まれると」
「素晴らしいお考えね。フレデリックは美味しい?」
「ええ。とても美味しく毎回いただいております」
「じゃあお願いがあるんだけど。今作っているのって、私が公爵家の料理人に教えてもらったものなの。だから大公領で好まれる料理とか、名物とかそういったものがあったら教えて欲しいの。これからは地元の料理も加えていきたいし」
マリーズが尋ねるとフレデリックはしばらく考えているようだった。
「そうですね。大公領は元々フランディー王国の王家の領地とザッパータ国が合わさっておりますから、両方の料理本を集めておきましょう。マクギーに渡せばよろしいでしょうか?」
「あら美味しそうね。こういったら不思議な感じだけど他国の料理も楽しめそうね。じゃあよろしくね」
マリーズは部屋を後にすると再度厨房に戻ることにした。1ヶ月任せて欲しいと言ったのだから、今の段階でも十分に任せられるがそれではマリーズの仕事が終わった気がしない。1か月は厨房に立つつもりなのだ。
「マリーズ様。ちょうど食材の商人が今来ているので欲しいものはありますか?」
マリーズが厨房に戻ったところにマクギーが話しかけてきた。
「見たいわ」
マリーズが近づくと商人は緊張した面持ちになった。当たり前である。この商人、兵士が料理を作っているのを良いことに安い食材を高い食材の値段で売っていたのだ。マリーズは初日に気付いた。
明らかにもうダメになりそうな野菜がたくさん混ざっていたのだ。全部それはいくらか問いただし、フレデリックの納品書と請求書を見比べる。そして明らかに金額が見合っていなかったのが判明した。
しかし、マリーズはその商人を仕入先として使い続けることにしたのだ。自分が時々見に来るから二度とこういったことをするなと命じた上で。
もしここで新しい商人に代えたとしたら、新人ばかり、しかも責任者は14歳のマクギーだ。騙そうと考えるかもしれない。しかし既に一度騙した商人に釘を刺しておけば悪い品を持ってくることはないだろうと考えたのだ。時々大公妃自らが見に来るとなっては、次に見つかれば店は潰れ本人は捕まり二度と日の目を見ることはないのだから。
「ポンガは必ず欲しいわ。あとそうね、この野菜は何かしら?」
「これはガロデと言いましてこれから収穫が本格的になる高原野菜です。茹でて食べるのも良いですが、スープに入れるのも良いですよ」
「マクギーはどうやって食べてたの?」
「やはり茹でて塩を振って食べてました。ホクホクとした食感で幼い子どもたちも食べやすくて人気がありましたね」
「そうなのね、だったらこれも買いましょう」
商人とマクギーのやり取りを見ていると、改心したのかきちんと相談しながら決めている。ちょっとした出来心だったのかもしれない。僅かなお金を儲ける為の。その出来心が危険な時もあるのだが、この商人に関してはもう大丈夫そうだとマリーズは判断した。
マリーズの食事改善が始まって3週間。食事をしながら仕事をしていたラファエルはずっと気になっていたことをフレデリックに尋ねることにした。
「料理人を新しく雇ったのか」
「やっとお気づきになられましたか?」
とぼけるフレデリックにラファエルはムッとして当たり前だろうといった。
「オレだって一か月近く前から気づいてたさ。何なら料理が変わって一日目からだ。でも勝手に料理が得意な兵士のみが担当することにしたのかと思ったんだ。しばらく様子を見て団長と相談しようかと思っていたんだが、さすがにこうも毎日色々出てくるとおかしいと思うだろ?
おまえはオレのことを味覚音痴だとでも思っているのか?」
「そうですね。あまり食に興味はないだろうとは思っておりました。しかしながら、もう2年ですから体制も新しくした方が良いということになり一か月試しにやってみることにしました。
今は兵士は鍛錬に集中していますよ。ちなみに料理人として新しいく採用したのは1名です」
「一人!一人でこれだけ作れるわけがないだろう?」
「もちろんです。後は城内で賄っております」
「こんな急展開、妃が料理に文句でもつけたか?」
「いいえ。初日から大変美味しそうに召し上がっておられましたよ」
「あんなもの公爵家の令嬢が美味しそうなんていくらおまえが妃を気に入っているといっても嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ」
苛立たし気にフレデリックにいうラファエルはそんなはずはないと断言している。何故なら本人がそんな料理をこの2年食べ続けたのだから。
「いいえ、嘘などついておりません。しかし、マリーズ様はこれでは栄養の偏りや味の偏りがあって食べる人たちの健康が心配だとある日おっしゃって」
「それで料理人を雇ったのか?」
「いいえ、自ら連れて来られました」
「まさか王都から呼んだのか?」
ラファエルの眉間にしわが寄る。
「いいえ。慰問先から料理人を志す少年を連れてきて一緒に作っておられますよ」
「はあ?」
「ですから、慰問先の孤児院で料理人になりたいと言っている少年を連れて来られて、料理人見習いとして採用してほしいとおっしゃるので採用しました。
始めは人手が足りませんでしたからマリーズ様とマリーズ様の侍女が一緒に作ってらっしゃいましたが、城内で厨房に異動したい人間を募ったところ希望者が出てきまして、計7名の厨房担当ができました。
ちなみに一か月試すとマリーズ様自らがおっしゃっていらしたので今も厨房の手伝いに入られていますよ。
それからメニューは、マリーズ様が公爵家の料理人に作ってもらったレシピ集を持って来られていてそれを見て作ってらっしゃるようです」
ラファエルは頭を抱えた。好きにすればいいと言ったがまさか自ら厨房に立つとは。想定の範囲外だ。
「で、一気に料理が改善されたと」
「そうですね。使用人も兵士も喜んでますよ。毎日美味しいと食堂を去る際に料理人たちに伝えているようです」
「で、そこにオレの妃が混ざっていると」
「はい。そういうことです。ご自分のという自覚はあられるようで良かったです」
「屁理屈はいい。オレの許可は?」
「マリーズ様に好きにしていいとおっしゃったのはラファエル様です。マリーズ様のご要望に私はお応えしたまでです」
確かに好きにしろといった。自分の邪魔をしなければ好きに過ごしてかまわないと。
だが自ら料理をする令嬢がどこにいる。しかもラファエルはそれを毎日食べながら、兵士が勝手なことをしたと誰にも確認せず様子見をすることにし、そう言いながらも美味しい食事に実は疲労感も減って仕事の効率も上がったなと思っていたなど滑稽極まりないではないか。
疑った兵士にも申し訳がない。大公を継いで2年。まだまだだなと思っていたが、ここに来て自分がみっともない間違いをしている間に、いつかはラファエルが改善しなければならないと思っていた料理が、マリーズにたった三週間で改善されてしまった。
マリーズを見る目を変えないといけないのではないか?本当に噂通りの令嬢なのか?大公領の当主である自分が噂などに惑わされていてはいけないと思いながらも、人伝で聞いたあの話だけは許せないとどうしても思ってしまう。
「マリーズに今日の晩餐に出席するように伝えろ」
フレデリックが驚いた顔をしている。
「食堂で晩餐を摂られるのですか?マリーズ様と」
「そうだ。当主として感謝は伝えたい」
「かしこまりました。ではお時間は7時にいたしますね」
フレデリックが下がったあとラファエルはまた頭を抱えた。
勢いでああ言ったが何を話せばいいのだ?放置すると決めた自分の妃相手に。いずれは跡継ぎを作る為の話し合いをしなければと思っていたが何も考えずに言ってしまった。
ラファエルは目を閉じ上を向いた。あの日の記憶が蘇る。
結婚式と披露宴が終わり初夜の時間になったラファエルは端的に伝える文言を考えながら妻となったマリーズの部屋へ向かった。
マリーズの部屋を準備するようにフレデリックに伝えたら、結婚式を挙げているうちに勝手に自分の部屋も移動され、両親が使っていた部屋にされていた。
真ん中に応接室がありその左右にラファエルの寝室とマリーズの寝室がある。もちろんこれらの部屋は中にある扉で繋がっている。
勝手なことをと思ったが反抗するのも大人げないと好きにさせた。中の扉の鍵はかけておけばいいだけだ。応接室は好きに使わせようと思った。公爵家の令嬢だから広い部屋を使っていただろうしそれくらいが当たり前と思うだろうとも思った。
部屋に着くと薄明りの中、マリーズがベッドに座っていた。
ウェディングドレスの時は素直に愛らしい顔をした、それでいて真っすぐ人を見る令嬢だと思った。
婚約式をした時はまだ14歳という年齢に見合った愛らしさだったが、どこかおどおどしていて自信なさげな感じで心許ないと感じたが、それが4年の間にすっかりなくなっていた。
そして今は肌が透けそうなほど薄い生地をまといその姿は怪しい色香を放っていた。
布の上からでもわかる柔らかそうな肌と、一度舐めれば甘い香りを放つだろうことが容易に想像できる首筋。ラファエルはそんな自分を見上げるマリーズの体を押し倒したくなる衝動に駆られた。
自分たちは今日夫婦になったのだ。その白い体を味わって何が悪い。本人もわかっているからそこに座っているのだ。
そう思ったが、マリーズの肩が少し震えていることに気づき我に返った。
そうだこの女は我儘公爵令嬢と王都で知れ渡るほどのことをしてきた女だ。まともな友もおらず、学園では人を蔑み、自邸でも使用人に無体なことを言って楽しんでいたというではないか。
しかもあの言葉は許せない。
ラファエルは計画通りに放置することにし、我ながら酷いなと思いながらも冷たくあしらった。
そのことを今は後悔し始めているとでもいうのか?たった料理くらいで。
それでも、ラファエルは当主であるのだからちゃんと一度話そうと、一瞬逃げることも考えた今日の晩餐に出ることを再度決めたのだった。