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食いしんぼ令嬢は大公様に嫁ぐことになりました

前作、『お一人様伯爵令嬢は次期公爵様の包囲網から逃げ出したい』のヴィクトルの妹マリーズの話になります。あれから四年経った話です。

この作品だけでも大丈夫なように書きますのでよろしくお願いいたします。

 フランディー王国は大陸の西北にあり、自然豊かで四季折々の風景が楽しめる風光明媚な国として大陸全土に知れ渡っている。

 特産品や資源も多く、各領地を治める貴族たちは争いを好むことなく領地経営に勤しみ、王家と領民を大切にする者が多い。王家も同じく、貴族も平民も等しく大切にし、国民にとても慕われていることで有名で、安全に旅行が楽しめる国として他国からの観光客も多く、観光収益だけでもかなりのものが上がっているため、国民の多くが飢えることなく生活できる国である。

 そんな中、一人の花嫁が嫁ぎ先へ向かう馬車に揺られていた。


 花嫁の名はマリーズ。ジョフロワ公爵家の長女である。

 この結婚が決まったのは四年前。マリーズが14歳の時である。

 毎月手紙でやり取りはしていたが、この4年、会ったのは最初の顔合わせの時の一回限り。それでも貴族はそんなものだと思ってマリーズは受け入れた。

 王命であったのももちろんあるが、甘えん坊であると自覚していたマリーズは家族から独り立ちする良い機会だと思ったのだ。

 そして今、王都から10日かかる道をたどり向かっている先は、嫁ぎ先のローランサン大公領である。流れる景色を見ながらこの四年の事をマリーズは思い返していた。


 四年前、久しぶりに王都に大公がやってきた。王家に跡継ぎを紹介する為である。

 当時の大公はアレクサンドル。黒髪に赤い瞳の大公で、跡継ぎはラファエル、二十歳。初めての登城であった。大公に似た黒髪に赤い瞳の青年で、王城内の女性たちが次々と顔を赤らめ下を向いてしまう程美丈夫だった。

 ローランサン大公領は元々王都の直轄地でいくつもの鉱山を有していた。王都の領地だった頃、更に採掘場所を探しているうちに隣国との国境付近でサファイアの鉱山を発見した。

 国家間のルールで、鉱山は先に見つけた方に所有権があり、それが国境付近だった場合、採掘を進めていくうちに国境を越えた場合は、産出量の2割を相手側に渡すこととなっている。

 当時その直轄地はガーナット王国とザッパータ国に接していた。

 ザッパータは小国で、そもそもインガラン王国の辺境伯領だった。しかし。数代前のの辺境伯が急に独立を宣言し、当時インガラン王国の王女が嫁いだばかりであったこともあり大混乱になった。

 辺境伯とインガラン王国で戦闘もし、結果辺境伯が宣言した通りザッパータ国という名で独立国となったのだった。

 しかし、辺境伯領を動かすのと国として動かすのでは、やることなすこと様々なことで壁にぶちあたり、そのことにザッパータ王は苛立ちを隠せなかった。そして上手く国を動かせないまま孫の代になり、隣国でサファイア鉱山を発見したと知り、お金に困っていたザッパータは無謀にも大国フランディー王国へ侵略してきたのである。

 世界が平和な時代に予想だにしなかったことで一時は押され気味だったフランディー王国だったが、直ぐに形勢を逆転し、ザッパータ国全てを掌握するのに一か月かからなかった。

 その際に前線で活躍したのが当時の王弟で、元々の直轄地とザッパータ国を合わせて、ローランサン大公領として与えられることになった。

 当時のザッパータ国は荒れ放題だった為、それの改善に努め、今では大公領はザッパータ国だった場所も含めて穏やかで裕福な領地になった、と聞いている。

 マリーズは実際に見たことがないから人から聞いた話と、読んだ書物で知った話だ。。

 この四年の間、ラファエルが会いに来てくれることもなかったし、マリーズが会いに行くこともなかった。いや、実際は大公領を見てみたいと打診したことがあったのだが、忙しいことを理由に断られたのだ。

 その時は三日泣き続けた。自分が気に入らないからだと。

 実際この結婚は政略結婚だ。現在三か国に隣接している大公領は防衛の要だ。そこに、国王の重臣の娘を嫁がせることでより関係を強固にしたいという狙いだからだ。ザッパータ国のように独立宣言などされてはたまったものではないから。

 マリーズは婚約者が決まったから明日王城に行くということを前日に知らされた。唖然とするマリーズにもちろん否とは言えない。王命なんだなと察したからだ。

 ただ父も母も寂しそうにマリーズを抱きしめてくれた。

 そして翌日精一杯めかしこんで王城に行き、顔合わせしたのが二十歳の次期大公ラファエルだったのだ。少し年が離れていることもあって、マリーズは実感が湧かなかったが、実際に嫁ぐのはマリーズが学園を卒業してすぐだと言われたので、その頃には釣り合う存在になれるように頑張ろうと思った。

 ラファエルは感情の読めない顔で何を考えているのかさっぱりわからないと思った。子どもを押し付けられたと思ったのかもしれない。などと考えながら顔合わせは終了し、帰宅したマリーズに使用人たちはみな祝福をしてくれた。これは喜ばしいことなんだとマリーズは言い聞かせた。そうじゃないと、自分が大公妃にいずれなるなんて信じられなかったからだ。

 大公妃とは王妃に次ぐ地位になる。色々思うところはあったが、いずれその地位に相応しくなれるように勉強しようと誓った。

 しかし数日後、呼ばれたお茶会で悲しい真実を突きつけられた。

 クララック公爵家の次女セリア主催のお茶会の席だった。

 本当はマリーズは行きたくなかったのだが、公爵家同士仲良く均衡がとれるようにとしていることもあって、いつも呼ばれれば出席していたが、楽しかったことなど一度もなかった。いつもセリアに母の出身が伯爵家ということで馬鹿にされ、見下されるお茶会など行きたいわけがない。

 その日もそうだろうと思いながら行ったら、今回は横にバルベ侯爵家のホランを連れていた。仲が良いことは知っていたが二人並んでマリーズの前に立って壁を作られると怖気づいてしまう。

「ねえ、マリーズ。あなた、ラファエル様の婚約者に選ばれたんですってね?どうやったの?」

 セリアである。

「どうやったも何も、陛下の意向だから私が何かしたわけではないわ」

「いいえ、そんなことはないわ。ジョフロワ公爵家が陛下に頼んだんでしょ?そうじゃなきゃマリーズなんかが選ばれるわけないじゃない」

 酷い言いようであるが、毎回こんな感じなのでいちいち気にしていられない。マリーズにこんな対応をするくせに、マリーズの兄を狙っているセリアの神経がわからなかった。同じ血が流れているというのに。とにかく義姉になるのは止めて欲しいので兄にはセリアだけは選ばないで欲しいと頼んであるほどだ。

「そう言われても陛下に呼ばれて行ったら紹介されたのだから何もしていないとしか言えないわ」

 気丈にも言い返すのもいつものことだ。2歳年上のセリアとホランは小柄なマリーズにとったら怖い存在でもあるが、それに負けるようでは公爵家の娘などやれない。

「そう。でもきっとラファエル様もがっかりされていると思うわ。だって本当はホランと婚約したかったんだもの」

 驚きに目を見開いたマリーズににんまりとセリアが笑う。

「ホランの家の領地は大公領と接しているの。それで先日大公様たちが王都に来られた時に王城より先にバルベ侯爵家に挨拶に来られて、その時にラファエル様とホランは一瞬で恋に落ちたそうよ」

「ええ、ラファエル様が優しい瞳で私を見てくれたの。その一瞬を今でも鮮明に覚えているわ。私たちは結ばれる運命だってね。同じことを考えているってすぐにわかったわ。

 だから大公様たちが帰られた後、お父様にラファエル様と婚約したいってお願いしたの。その日のうちに打診したんだけど、もう婚約者が決まったからと返事が来て涙が止まらなかったわ」

「マリーズのせいでホランが泣いたのよ。あなたが割り込んできたから。

 本当にマリーズってわがままでズルいわね。公爵家は王家には今代嫁げないのに自分だけ大公家に嫁ぐなんて。父親が宰相だからってズルいことしたんでしょ?」

 あんまりだ。マリーズは何もしていない。言われた通りに受け入れただけなのに。

「本当に私は何もしていないもの。陛下がお決めになったことだから私や父がどうこうすることはできないわ」

「まだ口答えするの!?公爵家の人間として恥ずかしくない?あら、恥ずかしくないのかしら?母親は伯爵家だものね。

 こんなニキビだらけの醜いマリーズが婚約者だと知ってラファエル様はきっと悲しい思いをされているわ。美しいホランと婚約したかったでしょうに」

 その日のお茶会ではずっとこんな話をされ続けていた。帰りたくても帰れない。帰れば逃げたと思われるから。美味しそうなケーキも食べる気にはならずただ時間が過ぎるのを待った。

 そんなことがあったけれど、マリーズはこの結婚に前向きに捉えようと必死に勉強し、毎月心を込めてラファエルに手紙を書いた。

 ラファエルからは生真面目な字で大公領でとれた作物のことなどがかかれ、最後にマリーズの体調を気遣う言葉が書かれていた。恋文とは程遠い内容だがそれで満足だった。

 王命だとしても、婚約者に選ばれたからには大公妃を務めなければならない。ラファエルを支え、大公領の発展に貢献する。

 マリーズはこの目標の為に四年を使い、大公領についての知識がいっぱい詰め込まれた。取れる鉱物どころか大まかな地図も、更に主な農産品や領民たちの生活事情なども覚えた。

 領地経営や大公領で産出される宝石類の加工についても学んだ。

 しかし、二年前にラファエルが大公を継承したが新大公の就任式には呼ばれなかった。小規模で行うとのことだったが、陛下の名代で父とジゼット妃殿下が参加したのだから、婚約者の自分も呼ばれても良かったのではないかと思うが我慢した。

 その時が来れば自分が大公妃としてやっていかなければならないのだからその時までの我慢だと自分に言い聞かせて。

 しかし噂で聞いてしまったのだ。領地を接しているバルベ侯爵家は侯爵とホランで式典に参列したと。その時は部屋から出なかった。

 何故婚約者の自分が王都にいてホランが大公領にいるのか。婚約者というのはこんなにもろい関係なのかと。学園に通い出して間もない頃のことでより不安定だったマリーズは涙が止まらなかった。

 心配した義姉が部屋に着て、マリーズを抱きしめずっと撫でて落ち着かせてくれた。義姉がいなければ今の自分はないと思うほどマリーズは義姉に懐いている。

 こんな素敵で優しい義姉を選んだ兄は素晴らしい判断をしたと心から称賛したほどだ。


 そう。その学園も前途多難な始まりだったのだ。

 入学してすぐ、マリーズは主に上級生から白い目で見られ冷たい扱いも受けた。

 二歳年上のホランが、自分がなるはずだった大公妃をマリーズが爵位にものを言わせて奪ったと言いまわっていたのだ。

 涙ながらに引き裂かれた自分とラファエルを悲しい美談として語り、皆それを信じて、入学したてのマリーズは冷たい扱いを受けることになった。

 我儘な公爵令嬢として。

 公爵家の令嬢として国に影響を及ぼすような我儘など一度も言ったことがないのに。

 同級生は腫れ物に触るように接してきた。それは公爵家というのもあるだろうし、次期大公妃というのもあるだろうが、一番はホランの語った話で、我儘なマリーズに何かしたらホランのように何かされると思われたようだ。

 それでもクラスで明るく振舞い公爵家令嬢として落ち度がないよう、試験でもいい結果を出した。その支えになってくれたのはメルディレン侯爵家のマルグリットの存在だった。

 マルグリットは入学当初から人の目を気にせずマリーズに話しかけてくれた。明るい彼女の側で明るく笑い話しているうちに、他にどう思われても良い。一人でも信じてくる人がいればいいのだと思うことができた。

 相変わらず上級生からの冷たい視線や態度は気になったが、マルグリットと一緒なら怖くなかった。

 マルグリットはちょっと変わっていて、選択科目の際、刺繍か朗読会もしくは体術か剣術だったのだが、マルグリットは剣術を選んだ。そんな令嬢はまずいないがこれまでもそういった学生がいたという前例がわずかながらあるのだからとすんなり許可がおりたのだ。だから、マリーズは一緒に剣術を選んだ。

 刺繍は得意だし、朗読会など暇の極みだ。それならマルグリットと一緒が良いと両親に頼んだら学園が許可したら良いといってくれてマルグリットと一緒に剣術を学んでいる。

 マルグリットは姉の第三王子妃の近衛騎士になりたいとずっとメルディレン侯爵家の護衛騎士に教えてもらってきたが、学園で剣術の腕を更に磨き、学園卒業後は近衛騎士育成専門学院に入るのだそうだ。

 そんなマルグリットは同学年の男子に負けない強さだった。マリーズはというと体力作りと素振りばかりしていたが、半年もすると何とか形になってきた。講師に三年あれば、それなりに戦うことができるだろうと言われた。マリーズは剣術のセンスがあるらしい。

 ホランたち上級生はそんなマリーズも気に入らず、大公家に嫁ぐからと点数稼ぎで剣術を学んでいると言って回っている。

 マリーズとラファエルが婚約してもう二年たつというにホランは諦めきれないようだ。

 友人たちの前でさめざめと泣き、ラファエルからもらった手紙だと言ってよく見せているようだった。実際その手紙の中身をマリーズは見たことがなかったが、遠目から見たものは、おおよそマリーズ宛とは程遠い、色遣いにも気を配った高そうな封筒だった。マリーズにはいつも家門が刻印されている仕事用の何の変哲もないものに封蝋してあるだけ。

 それでも婚約者は自分だし、自分にできることをしようと我慢した。

 ラファエルには誕生日に必ず贈り物をした。マリーズが刺繍したハンカチとカフスなど、必ずマリーズが刺繍をしたものを一緒に贈ったのだ。一針一針丹精込めて仕上げたものだ。

 気に入ってくれたかどうかはお礼の手紙からは伺いしれない。事務的に書かれた感謝の言葉が並んでいるだけだったから。

 それでもラファエルからもマリーズの誕生日には贈り物が届いた。初めはクマの大きなぬいぐるみだったが、その次からは髪留めなどに変わった。

 嬉しくてたくさんの言葉を書き並べた。何かがあろうとも、マリーズに真摯に向き合おうとしてくれているのだけは間違いないと感じたからだ。

 学園では相変わらず上級生からは、わがまま公爵令嬢と中傷され婚約を辞退しろとまで言われたが、これは王命である。学園という小さな場所で話すような問題ではないのだ。

 相手はそれをわかっておらず、マリーズを見かける度にネチネチと言って来ていた。

 しかし、講義室でマルグリットと楽しく話しているうちに、周りから少しずつ変化が始まった。マリーズを見る目が変わってきたのだ。マルグリットのおかげである。

 話す人が増え、中には直接、ホランが言っていたような人には見えないと、言ってきた人までいた。自分の見ているものが全てですよ、そういうものなんですよと笑っておいた。

 男子の見る目も変わってきた。剣術の講義の時に黙々と頑張っているマリーズを見て、将来大公妃になる為に努力をしていると好意的に見る人が増えたのだ。

 マルグリットは大概の男子に勝ってしまう為恐れられていた。だがそんな二人が仲良くカフェで食事をしている様はどこにでもいるお嬢様で、いつしか男女問わず友人が増え楽しく学園生活をおくることができるようになったが、そうなったのはもうすぐ二年という頃だった。

 ホランが卒業してしまえば嫌味を言って来る人も減るし楽になるだろうと思っていた。実際そうなったし、二年になってからは毎日楽しく学園生活を送り、たくさんのことを学び、大公妃になる為に様々なことを家庭教師をつけて勉強した。

 

 そんなマリーズにとって四年はあっという間だった。

 ローランサン大公からは、専属でつけられる侍女がいないから王都から連れてくるか大公領で雇うように言われていた。どうしようか迷っていたら、マリーズについていたメグが付いて行くと言い出した。

 メグは母子家庭だ。元夫は幼馴染で王城の侍従をしている。侍女たちからモテていてその為常に愛人がいる状態だった為、メグから離婚を切り出した。慰謝料はいらないから親権と養育権をメグが持つことで離婚が成立したという経緯がある。

 メグに息子はどうするのか?と聞いたら王都より自然のある所で育てたいから連れて行きたいというのでもちろん了承した。もしかしたら王都から離れたかったのかもしれない。

 メグはとても気が利いて働き者の良い侍女だ。マリーズはついて来てもらえるなら頼もしいと喜んだ。

 そしてもう一人、カレンが手を挙げてくれた。大公領は多くの国と国境を接しているため、国の要の要塞で屈強な男性が多いと聞いている。しかも主力産業は鉱山で、自分は王都のなよっとした男より屈強な男性が好きだからできればそこで働きながら夫も見つけたいというのである。

 もちろんこちらも大歓迎で受け入れた。使用人たちが良い男探せよ!と声をかけているのを見た時は、カレンは明るく元気な女性なのでこんなに公爵家でも人気があるのだから、大公家にいったら直ぐに相手がみつかるのではと思った。

 花嫁衣装も公爵家で準備した。婚家であるローランサン大公家が準備をしてもおかしくないのだが、中々花嫁衣裳の連絡が来なかった為こちらで準備すると伝えたら、そうして欲しいと返事が帰って来た。

 マリーズは少し悲しい気持ちになったが、自分で好きなデザインを選べることを喜ぼうと思いなおして童顔を補えるよう、少し大人な雰囲気のドレスを作った。

 義姉なんかは反対して可愛いデザインのばかり選ぶのでその時ばかりは部屋から追い出した。

 結婚式はローランサン大公領で行われることになっていたので、準備の為に一人先に大公領に向かうマリーズは家族や使用人たちと連日別れを惜しんでいた。

 同じ国内でも馬車で10日は遠い。中々会うことは叶わないだろう。それでも家族の絆は切れないし、家族も使用人たちも、いつマリーズが帰って来ても良いように部屋を整えておくと言ってくれた。

 いよいよ出立の日。最後の荷物確認をしてマリーズは馬車へと向かった。

 手に持っている鞄に入っているのは、この四年間ラファエルと交わした手紙と誕生日にもらった贈り物。これだけは失くせないと自分で持って行くことを主張した。

 そんなマリーズに家族は微笑ましい笑みを浮かべたが、心の中では不安が大きかった。大公妃になるのに相応しいだけの教養とマナー、その他様々な知識を身に着けたが、実際はそんなにいるのか?と思うほどの勉強量だったのだ。

 マリーズは勉強して大公妃に相応しくなるべく努力すれば、いつか報われる日が来ると信じて勉強しているようだった。もちろんそれは報われて当然のことだと家族全員が思っているが、少ないラファエルからの手紙。以前噂の絶えなかったホラン嬢がまだ未婚であることなどがマリーズを不安にさせているのを皆が知っていた。

 マリーズに中々会えないのが寂しいのもあるが、やはり、マリーズに幸せになって欲しいという気持ちが強く、王命で受けた結婚だったが、これで良かったのか?と父は思い、母は自分の持っている全てを教えたから大公妃としては大丈夫と思い、兄と義姉は可愛い妹に会えなくなるのは寂しいけれどマリーズなら大丈夫と言い聞かせることで納得させていた。

 あとはラファエルがどう対応するか予測ができないので、温かく迎えてくれることだけを祈った。

 そして、馬車に乗ったマリーズを馬車が見えなくなるまで見送った。

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