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お盆の歌
治くんは、何度も捜索された山の入口から見つかった。
入口には小さな川があり、小さな橋が架けられている。その橋の下から、ほとんど無傷で、川に足だけ浸けて。まるで涼みながら昼寝でもしているような状態で見つかった。
そして、何故か余所行きのポロシャツを着ていた。スラックスを履いていた。普段の彼を知る人なら、少なからず違和感を覚える。働き者の治くんは作業着以外の服をあまり着ない。僕が最後に平服の治くんを見たのは、20年くらい前に彼が金婚式の旅行で北海道に行くのを見送った時以来だった。
しかし、それ以外に不審な点はなく、事故として処理された。葬儀も滞りなく終わり、遺された家族や友人も日常に戻っていった。
治くんを亡くした悲しみも少しずつ和らいだ頃、ふと思い出した。
「誰かが、おじゃれこの歌、歌ってた……」