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頭に血が昇ったルクシア



「ふぅ、対人戦は久しぶりだな、普段は魔物とかばっかりだしなぁ」


「しのごの言ってると殴るわよ」


 学校の自由に使える特訓場に悪質ストーカーを連れ出すと、私は早速殴り掛かる準備をした。


「·····そっちがやる気なら、俺もちょっと本気出すぜ?」


 ルクシアと戦うことになった勇者は、抑えていた百戦錬磨と言っても過言では無い気配を放出し、腰に提げていた刀を抜き放った。


 それと同時に、どんなカラクリかは知らないが·····


 実際には、ステータス画面から手に入れた勇者に相応しい性能を持つ防具を装着し、瞬間的に着替えを終え鎧姿になった。



「あぁ、刀は一応峰打ちにしておくぜ?」


「貴方が防具を着けるなら私も着けさせて貰うわ」


 対するルクシアは、ルクシオンを発動しマジックバッグの中からライトアーマーを取り出すと、瞬きするよりずっと速い速度で鎧を装着した。


「なっ、まさかお前も····· いやそんなはずは」



 あまりの速さに、勇者はルクシアが自分と同じ力を持っているのでは無いかと錯覚する程だった。


「覚悟は良い?」

「そっちは武器なしか?じゃあお手柔らかに····· がいいか?」


「違うわよ?」


 シュンッ!



「武器なんて使ってたら····· この辺りが消し飛ぶわ」


 次の瞬間、光に迫る速度でルクシアが移動し勇者の目の前に現れた。


「ッッッ!!?!?」

「せいっ!!」


 ッッドガァァァアアアアアンッ!!!!


 ルクシアが突き出した拳は衝撃波を纏い、轟音を響かせながら勇者に直撃。



「あっぶな、なんだ、今のは·····ッ!!」


「へぇ、噂通り強いのね」


 ·····せず、ギリギリの所で回避していた。


 大振りのストレートだったからこそ、その動きを予測出来て辛うじて回避したのだ。


「拳が見えなかった····· まさか、あのステータスは本当なのか?」

「歯ァ食いしばりなさい、気合いを入れたら命だけは助かるかもしれないわ」


「おわっ!?くっ、なんだ!?」


 そしてルクシアの追撃は止まらない。


 ドラゴンが放った超音速の攻撃さえ見てから避けられた勇者でさえ、ルクシアの放つ拳は全く目に追えず、更に逃げても瞬間移動をしたのかと思うほど速く追いつき、絶え間のない攻撃を繰り出してきた。


「そこだっ」

「危ないわね」


 ガキャンッ!!


「いっっっづ!?硬い!!?」

「·····そっちの武器も金剛不壊、なのね」


 その隙を何とかみつけて刀を振った勇者だったが、光速で対応してきたルクシアは側面を叩きその進路を逸らした。


 ·····だが、本来は刀をへし折る勢いだったにも関わらず一切の歪みさえ見せないのを見て、ルクシアはそれが防具と同じ『金剛不壊』の武器であると勘づいた。


「その防具も金剛不壊か!」


「教える義理はないわ、それより無駄口叩いてると舌を噛み切るわよ」


 ブォンッ!!


「がっ!?あぶ」

「喰らいなさい」


 ドゴァァアッ!!!


「がふっ!!?」


 開始から数分、サルートでさえ音を上げるほどの亜光速の猛攻を何故か全て捌き切れていた勇者に、ついにルクシアの拳がモロに叩き込まれた。


 まるで戦車の主砲が直撃したかの如き威力の拳は、圧倒的な力を持って勇者を吹き飛ばした。



「がはっ、痛いな·····ッ!!」


「貴方の防具もなのね」

「なんちゅう重さと衝撃だよ、君の拳はっ!!」


 それもそのはず、絶対に壊れない砲弾が弱いはずが無い。

 何せ現代兵器の中でも最強格のレールガンでさえ、ルクシアの軽いジャブに敵わないのだから。


 ·····その攻撃に原型を残して耐えた勇者も、現代のあらゆる装甲より頑強なのだが。



「一撃で終わり?·····私が満足してないわ、立ちなさい」

「くっ、こんな所で····· 負けるかァっ!!」


 ドギャァァアア!!!


「強化したのね」

「あぁ、ナメてかかってすまん、·····次は本気だ」


 ルクシアの強さに流石に危機感を覚えた勇者は、人間には向けないと決めていた本気の力を解放した。


 ガキィンッ!


「へぇ、早いわね」

「これも見切るか····· 仲間の皆も見切れなかったはずなんだけどな」


「ユーシャさん!流石にそれは·····」


「遅すぎるわよね」


「なにっ」

「言ったでしょう、私は本気を出せないって·····」



 だが、その攻撃力はルクシアを超えたかもしれないが、速度と反射神経はルクシアを超えることは無い。

 何せ光はそれ以上の速度が存在しない、絶対的な最高速度なのだから。


 そして力は速くなれば速くなるほど強くなる。


 故に、光速に至るルクシアの力も、速度に比例し無限大に強くなり続ける。



「·····少し頭から血が引いたわ、せめて殺さないでおいてあげる、だから精々足掻きなさい」


「ヤバいっっっ!!!!?」


 勇者は、今まで危機察知能力でルクシアの攻撃を回避していた。

 攻撃が見えずとも、異世界転移で手に入れたその力のお陰でどこに危険な攻撃が来るかを見れ、予め回避する事が出来ていた。



 だが、ルクシアが『殺さない程度に容赦しない』と決めた瞬間、その危険な領域が視界を埋めつくした。


「くっ!?うおおおおおッッッ!!!」

「はぁっ!」


 ルクシアの蹴りが勇者の刀に直撃した。

 刀は歪みはしなかったが、その蹴りの速度を受け自らの推進力へと変え、亜光速で勇者の手から解き放たれた。


 そして無防備になった所をルクシアが見逃すはずもなく·····



「覚悟しなさい」


「待っ!参っ」


 バキッ!ドゴッゴシャッ!メギャンッ!ゴッ!!


「痛ぇっ!くっ、なんっ」


「ふふふ·····」


 まだ頭から血が引ききっていないルクシアは、ターディオンを解除すると本来の力で勇者の事を執拗に攻撃し始めた。

 本来の力、といってもそこは異世界人基準。


 ルクシアの容赦のない拳と蹴りは勇者をピンボールの玉のように弾き飛ばした。


 更に飛ばされた先で先回りしたルクシアに攻撃を喰らい、狭い特訓場を縦横無尽に弾き飛ばされ、ルクシアの心ゆくまでその攻撃は止むことは無かった。



 勇者は全力全開ならギリギリ何とか出来るかもしれないと思ったが、これ以上力を出せば周囲に被害が出るというルクシアと同じ結論に至り、勝ち目がないと悟りようやく降参したのだった。




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