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ライトアーマーの真の性能



「さてと····· サルートも帰ったことだし、本気で試すかしら」


 全身に浴びた血肉を洗い流しサルートを家まで送り届けた後、私は再び町の外にやってきていた。


 今度は巻き込む人も居ないからこそ出来る、亜光速域での戦闘テストだ。



「ふぅ····· 不壊の武器も使いたいし、可能な限り強そうな敵が良いのだけれど····· 何か知らないかしら?」


「知らないです」


「そう·····」


 という訳で、亜光速で殴っても平気そうな敵が居ないか、知ってそうな人に聞きに来た。


 その相手は、このライトアーマーの元となった下着アーマーを手に入れたあの塔型ダンジョンに居た吸血鬼だ。


 ·····まぁ、あのヴァなんとかは倒したから居なかったけれど。


「というか、貴女がボスになったかしら?」

「はい、なんか変な仮面被ったら吸血鬼からランクアップしちゃいまして····· 暫定的に私、エイシャがここのマスターになってます」


 で、主を失ったダンジョンだったが、変な仮面を持ってきていたエイシャとかいう吸血鬼がマスターになったようだ。



 ちなみにコアが残っていてギリギリ生き残っていたヴァ(略 だが、その後エイシャの謀略によりコアを踏み砕かれて無事死亡している。

 今はヴァ(略 の頃のブラックダンジョンから改善し明朗快活なホワイトダンジョンになっている。


 ·····まぁ、エイシャを除き光に弱いため相変わらず薄暗いが。



 閑話休題。



「で、なんかいい案は無いかしら」


「ないです、貴女が暴れると私でも死にます」

「そうよね·····」


「というか、本当にもうダンジョンで暴れないでください····· 階層の復興だけで物凄く大変でしたので·····」


 エイシャの言う通り、実はルクシアが片っ端から崩壊させたこのダンジョンはほぼ全ての階が生存可能なレベルにまで復旧されていた。

 あれもこれも、全部新マスターのエイシャの苦労の賜物だ。


 もしルクシアが最上階に直行せずに前と同じように階を破壊していたら、エイシャは首を吊って居ただろう。

 ·····まぁ、進化したエイシャは別にその程度では死なないが。



「もうドラゴンとかスカイクラーケンでも殴ってくればいいんじゃないですか·····」


「そうするわ」

「ゑ゜」


「聞いた事が無い声が出たわね?」


「や、やめておいた方が····· ドラゴンもスカイクラーケンも、どちらも手を出さない方が·····」

「やって見なきゃ分からないじゃない、じゃあ行ってくるわ」


「あっ、待っ·····」


 ギュインッ



 エイシャが止めようとした頃には、光と化したルクシアは既にダンジョンを出て空高く飛び上がっていた。


 ちなみに目の前で閃光を浴びたエイシャは灰にはならなかったが驚いてひっくり返った(無傷)。




 そんなこんなで空を亜光速で駆けていると、あっという間に目的の魔物を見つけた。


「デカいわね·····」


『·····』


 それは空にプカプカと浮かぶ途轍もなく巨大なイカ、スカイクラーケンだ。



「というかぜんっぜん居なかったわ、ドラゴンの方が早かったかしら」


『·····』


 この個体は体長が約1000mとダイオウイカの50倍以上もあり、更にその巨躯が空にフワフワと浮かぶ異様な光景がルクシアの目の前に広がっていた。



「さて、結構強いと聞いたけど、どんなものかしらね?」

『·····』


「·····何も言わないわね、というか何を食べて生きているのかしら」


 と、そこへ都合よくスカイクラーケンの主食が飛来した。


『ギョー!!』

「危ないわねっ!!」



 ルクシア目掛けて口を開けて飛来したのは、ハリケーンシャークという積乱雲や台風や竜巻の中に生息する空飛ぶサメだ。

 大きさは10mほどと、メガロドンサイズもあるバケモノ鮫だが·····


『·····!』


 ドガァンッ!!!


「ひゃっ!?は、早いわね·····」


 スカイクラーケンの目がハリケーンシャークを捉えた瞬間、胴部分が急激に膨張しタコのように膨らみ、漏斗から空気を放出してソニックブームを纏いながら一瞬で接近、急激に体の向きを変えてその足を広げ、ハリケーンシャークへと絡み付いた。


『シャアアアアア!?!!?!?ッッジャガジャジャガガガガッ!!?!?!』

「ひっ、えげつないわね·····」


 そして足の中央にある強靭な顎でハリケーンシャークを頭から齧り、瞬く間に10mもあったハリケーンシャークを食べきってしまった。


 流石にえげつなすぎる光景に、ルクシアも若干引いていたほどだった。



「·····けど、今が狙い目ね、『ターディオン』」


 私は宙に浮いたまま、ルクシオンを解除し最高倍率に近い『ターディオン』へと切り替えた。



 倍率は光速の99.99%、極限まで光速に近付けた最強最悪の一撃がスカイクラーケンへとその矛先を向けた。



「はあああああっ!喰らいなさい!!」


 カッ!!!


 音速で飛行できるはずのスカイクラーケンを遥かに上回る速度の流星が、空を駆けた。


 次の瞬間、全力で突き出された私の右の拳が空を斬り裂き、スカイクラーケンに直撃した。



 ッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッ!!!!


「離脱っ!!」


 直撃と同時に、ルクシアの金剛不壊の拳の先で圧縮された大気が核融合反応を引き起こし、ほぼ純粋なE=mc^2に近い効率で原子核が途方もなく巨大なエネルギーに変換された事により爆発が発生。

 巻きあがった爆炎は大気を押しのけ衝撃波を生み出し、幾重もの凝結雲からなる傘雲を発生させ周囲へ有害な光線や超高熱を放出した。


 当然、最高で摂氏数億度に達する高温の拳が直撃してスカイクラーケンが耐えられるはずもなく·····

 そもそも、剣で簡単に斬れるほど攻撃特化で防御力の無いスカイクラーケン相手に、ルクシアの亜光速の拳は過剰な威力過ぎた。


 もはやスルメになるという次元を越え、数千万度を軽々超える高温が分子を崩壊させ発生した爆発により瞬時に飛散させ跡形もなく消し飛ばした。



「っと、うまく行ったわね」


 私は拳を突き出した右手を確かめたが、傷一つついていない。

 実験は成功ね。


 これで、亜光速で殴っても無傷で済む方法が確定したわ。



 ちなみに、金剛不壊は原子の振動さえも強力に抑制する力があるため、数億度になろうが外部からの原子の振動を受け付けず、つまり熱を無効化できるという仕組みだ。

 更にそれに加えてルクシアの反応速度によって非武装部分に達するより早く光になり回避する方法を用いる事で、人類では無しえない拳一つでの戦術核兵器級の一撃を放てるようになったのだ。



「·····ただ、味気なかったわね、もっといい的とか無いかしら?」


 そんな抑止力級兵器の彼女は、まだ自分の実力を開放しきれていないと思いジリジリと伝わる爆発の余波による熱を感じながら自ら獲物を探して光魔法による無限大の視野を活かし周囲を探し始めた。



「無いわね、·····でも」


 ルクシアは、自らが生まれ育った国からほど近い、細長い半島の中腹あたりにある、不気味な形をした建造物をはるか数千キロ先から見据えた。



「魔王城でも殴ってみようかしら?最強と悪名高い魔王が私の一撃に耐えられるのかしら?うふふ·····」



 とは言ったが、流石に島一つ消し飛ばせる一撃を放った後に陸地で亜光速の一撃を試す気にはなれず、当初の目的も達成できた私は大人しく変える事にしたのだった。




 ちなみに、ルクシアに一瞬だが城を周囲の地形諸共消し飛ばされそうになった魔王は嫌な予感がして背筋がかなりゾワッとしていた。



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