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光速武装ライトアーマー



 ぎゅっぎゅっ

  カチャッカキンッ


 パチンッ



「どう?」

「まだ動いてないわよ、でもいい感じね」


 あれから30分、私はサルートに着け方を教えられながら手伝って貰い、ライトアーマーを無事に装着し終わっていた。


 ちなみに着け方は癖はあるけれど、1度分かればそんなに難しくは無かったわ。



「んっ」


 ギュッ

  ギュムッ


「手の開閉も足の動きも問題無いわね」


 動く度に、レザー素材の部分が擦れ合う独特な音が鎧から鳴り、少し気にはなるが動きに問題は無さそうだった。


「それより胴の部分の方が気になるんだけど、どう?手足は私は手を加えてないからさ」


「そういえばそうね」


 そしてサルートの改造を施された体部分を確かめ始めた。


 体を捻ったり、思い切り逸らしたり、シャドースパーリングをしてみたりして動きの邪魔にならないか等、気になる所を探してみた。



「うん、完璧ね」

「ふふん、さっすが私ね!」


 サルートはその結果に自画自賛して嬉しそうにした。

 何せサルートの店の宣伝にもなるようにかなり手の込んだ代物に作ったのだから、良い結果になって喜ばないはずが無い。


 この先ルクシアが戦争で目を見張る活躍するであろうと見越した上で、それに見合う服を作り同時に作った店として名を轟かせようという、ある種の信頼をもって作った至極の逸品だからだ。



 もっとも、その思惑も信頼もルクシアはあまり気が付いていないのだが。



「ただ·····」

「有料よ?」


無料(タダ)じゃないわよ、この装備、ちょっと重すぎないかしら·····」


「え?だってドラゴン革にオリハルコンも使ってるんだもの、重いに決まってるじゃない」

「ドラゴン革!?金貨何枚分よ、この装備!!」


「加工費も含めてピッタリ金貨1500枚ってところ?」

「使い切ったのね····· 恐ろしいわ····· ってそこじゃないわよ、重すぎて動きにくいのだけど?」



 サルートの作った防具は確かに性能も良く、並大抵の金属より強く自己再生能力まであるドラゴン革まで使ってる最高級品だ。

 ·····が、ドラゴン革もオリハルコンもかなり重い金属で、軽装備を求めていたルクシアには少し重すぎた。


「けど、ルクシアなら重さを軽減できるでしょ?」

「そうだけれど····· 維持するのも少し大変なのよ?」


「無意識でできるって言ってなかった?」

「·····出来るわ」



 しかしサルートはそこまで計算に含め、最終的にルクシア自身が重量軽減を行う事で軽量化を施し完成するよう設計していた。


 流石の腕前に、ルクシアもこれ以上文句は言えなかった。



「さてと、じゃあ早速テストする?」

「え?これで殴って良いのかしら」


「死ぬよ?私が」


「まぁそうよね」


「外で試してみたら?って事なんだけど、ついて行っても良い?」

「どうしようかしら·····」


 確かにテストしてみたい気持ちはある。

 けれど、本来求めていた全力全開の攻撃に関してはサルートが居ると放てない。


 たぶん、放った瞬間にサルートは死ぬから。


「えぇ、わかったわ、軽く動きのテストをしてみるだけにするけどそれでもいい?」


「オッケー、じゃあ町の外に魔物····· どうしよう相棒、私冒険者じゃないから出れないかも」


「はぁ·····」





「·····貴方も不幸ね」


「ごうな゛るどおぼっべば」

「なんて?」


「なんべぼねぇ」



 その後、サルートも外に出るために冒険者ギルドにやって来て登録を無事に終わらせた。


 で、また入ってきたらジャーマンとかいう、私が登録する時にも邪魔をしてきた荒くれ者にちょっかいを出されたけれど、サルートは難無くボコボコにしてしまった。


 さすが私の相棒····· だけれど、少し不憫ね。


 勝てる訳無いじゃない、私でも勝率は五分なんだもの。



「ルクシアー!Dランクだってー!」

「お揃いじゃない、良かったわね」


「あっルクシアさんはCにランクアップしてますよ」


「·····そう」


 こうして、ルクシアとサルート2人だけの冒険者パーティ『ナイスバディー』が結成された。

 オマケにルクシアはスパイス運び等をチマチマやっていたお陰でランクアップもしていた。


「でもあのジャーマンだっけ?あの人ホントに強いのかしら」

「強いみたいよ、私たち程じゃないけれど」


「あの2人がおかしいんだよ、痛ぇっ!ちっ、マジで容赦ねぇんだよあの2人····· てかお前の装備なんだよそれ」


「ふふっ、新装備よ」


 相変わらず実力証明で良いように使われたジャーマンは、痛みを忘れるため酒を飲みに酒場に向かった。


 そんなことも露知らず、2人は早速依頼を受けて街の外へと出かけて行ったのだった。





「で?何倒すって?」


「·····えっ?選んだのサルートじゃない、何倒すか見て選んでないの?」


「えーっと?ゴズイーラね」

「知らないわ」


「牛の頭をしたトカゲらしいけど」

「何よそれ、居るのかしらほんとにそんな生き物」


「見ればすぐ分かっ·····」

「見て解るかしっ·····」



 ズゥンッ

  ズゥンッ·····


『ブルルルルッ·····』


「「絶対アレね」」


 ルクシア達の目線の先に、牛頭のデカい蜥蜴が現れた。

 どう見たってアレがゴズイーラだ。


 見間違いのしようがないし、しかも結構デカいからすぐに見つかった。


「なんか舌ベロベロしてるけど、あれってトカゲの癖かしら」

「牛もベロベロするらしいわよ?でも長いわね·····」


「あの舌が美味しいらしいけど、ちょっと気味悪いかも?」


『ブモ?モォォォオオオゥ!!!』


「あっ見つかったわ」



 そしてアッチも此方をすぐに見つけた。


 頭が闘牛っぽい見た目だからなのか、結構攻撃的だ。

 そして馬車を何台もひっくり返したために討伐依頼が出されており、ルクシア達に命を狙われる羽目になった。


 だがゴズイーラは先に命を奪ってやろうと言うかのような勢いでルクシア達目掛け突進を始めた。


「じゃあまず」

「私からね!ふんっ、どっこいしょーっ!!!」


『バモォッ!?』


 ドゴォンッ!!!


「あ、ちょっ」


 防具の性能を試したくて来ていたはずのルクシアを差し置き、サルートが飛び出すとゴズイーラの体の下に潜り込み、一撃食らわせた。


 その威力は凄まじく、数トンはあるゴズイーラの体が浮き上がりひっくり返してしまった。



「ふぅ、人間相手だと使えないんだよね、『礼砲』」

「·····えげえないわね」


 あれこそがサルートの必殺技『礼砲』だ。

 彼女は岩属性魔法使いだが、同時にもう1つだけ属性····· いや、一つだけ岩以外の魔法が使える。


 それが『爆発』、物を爆発させるだけでなく推進力へと転換も出来る超破壊力をもつ魔法だ。


 サルートはその自身の腕に岩属性魔力を巻き付け、爆発魔法から耐えられるようにした上で大砲のような一撃を叩き込む技をゴズイーラに叩き込んだのだ。


 ちなみに『礼砲』の由来は、拳ひとつで礼砲に匹敵する爆音を鳴らせるその力に対する賛美から名付けられたらしい。



「というか、私の防具のテストなんだから余計な事はしないで頂戴?」


「あっ、メンゴメンゴ、ほら起き上がったし次はルクシアの番じゃない?」

「·····まぁそういう事にしておいてあげるわ」


『モ゛ォォォオオオォォオオッ!!』


 

 サルートの『礼砲』によりひっくり返ったゴズイーラは何とか起き上がると、怒りを込めて再び2人目掛けて突撃を再開した。


 大砲を腹に食らっても大したダメージにならないその頑丈さは、かなり高レベルの魔物の証拠だ。

 そして、ルクシアの前ではそれが仇となった。



「サルートの礼砲を食らってすぐ起きあがれるのね、·····なら好都合よ」


 私の口角が上がるのが自分でもわかった。


 だって好きなだけ遠慮なく殴れる相手が現れたのだから。



「光速も亜光速も早すぎるわ、だから·····『ターディオン γ』」


 私は音の10倍程度の極()速でターディオンを発動すると、目視すら難しい速度で地面を駆けた。


「ふっ、·····凄いわね、足が痛くないわ」


 今までは地面の踏み込みを軽くしなければ足が砕けそうな程の衝撃が来ていたが、金剛不壊の鎧のお陰なのか衝撃がかなり軽減され、ものすごい速度で駆け抜ける事が出来た。


 これなら、殴る方も期待出来るわ。


「じゃあ早速····· シッ!」


 ひゅぱっ·····


『ゲゲボガバギバッッッッッ!!!?!?!?』


 ドパァンッ!!!



 ルクシアがガラ空きのゴズイーラの体の下に潜り込み、強烈なアッパーを鳩尾に喰らわせた。

 その瞬間、マッハ20で放たれた彼女の拳が腹を穿ち、その拳が止まった瞬間に前方に圧縮されプラズマ化した大気が解放された。


 すると体内に入り込んだ拳の先から想像を絶する衝撃波が放たれ、ゴズイーラの体は衝撃波と圧縮大気の急激な膨張と高熱で発生した蒸気によって内部から破裂し、大惨事を引き起こした。


 具体的に言うと、ルクシアの真上で肉風船が大爆発し、周囲に筆舌に尽くし難い真っ赤なモノを2人を巻き込みながらぶちまけた。



「きゃぁぁあああっ!!?!?!?」

「ちょぉぉーーーーっ!!?っあばっ!!」



 ドバシャァァアアア!!!



 巻き込まれた2人は、当然の事ながら全身がエグいくらい血塗れになり、半泣きで近くの川まで体を洗いに向かったのだった。



 ついでにサルートはブチ切れた。


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