ビキニアーマー改造計画
「·····って事があったのよ」
「相変わらずぶっ飛んでるねぇー、で?ブツは?」
「持って来てるわ」
「わお····· ホントに下着みたいじゃない」
ダンジョン攻略から2日後、休みも終わった私は学院にやってきて親友のサルートに手に入れたビキニアーマーを見せていた。
「で、試着したの?」
「したわよ、サイズが合うのも、絶対に外に着けて出る気が無いのも、ちゃんと確認したわ」
「私らが着けたらそりゃ見事な事になるもんねぇ、男の目線を奪いまくれるんじゃない?」
「気持ち悪い目で見られたくないわよ·····」
「だよねー」
あのビキニアーマーは一度だけ、ルビーが居ないタイミングで試着してみたけれど恥部だけは隠せるくらいの酷い有様で、外で着けて戦うなんて出来る訳のない見た目だった。
·····で、ここからが一番の問題だったのよ。
「でもソレ着けなかったら良いんじゃない?」
「出来ないのよ、セットで装備しないと金剛不壊が働かないのよ·····」
「えぇ·····」
手足の防具が重要なのに、不要なビキニ部分を身に着けないと効果が働かないのよ·····
どうも、本体はあくまでビキニ部分で手足はそれに付随して効果を得られてるみたいなのよね、だから困っているのよ。
「という訳で、このビキニアーマーに装飾を加えてちゃんとした見た目に出来ないかしら?」
「金剛不壊で手を加えられないのに?」
「だからそこをうまくやれるサルートに頼みたいのよ、出来るわよね?」
「ふふ、出来ないとでも思った?」
という訳で、私は服飾のプロフェッショナルのサルートに、この下着みたいな破廉恥な防具を私に似合うちゃんとした防具に仕立ててもらうつもりなの。
そうすればようやく身に着けて使う事ができるはずだわ。
「流石ね、じゃあ頼んだわ、ちなみに報酬は·····」
「奮発してくれてもいいんだけどね?だって幾らあっても損はしないもの」
「金貨1500枚でどうかしら」
「アホ?」
「急に暴言って酷いわね」
「って、何この金貨、見たことない柄じゃない」
私が机の上に出したのは、あのダンジョンにあふれる程あった金貨1500枚だ。
合計で数えるのも面倒なほど····· だいたい5万枚ほど重力魔法で軽くして持ち帰ったから、相当な額が私の手元にある。
·····まぁ、どの国のどの時代のコインかわからないから、金としての価値しかないけど。
「金の価値で支払うって事でいいかしら?」
「もっちろん!任せなさい!!」
「で?デザインはどうするの?大まかな要望くらいは欲しいかも」
「元々の部分は見えても見えなくてもいいわ、でも肌の露出は多すぎると嫌ね、あぁでも太股というか足の部分は付け根まで出てると動きの邪魔にならなくて助かるわ」
「ふんふん、なるほどね~、それで?あとは·····」
「任せるわ」
「おっけー」
という訳で、ビキニアーマーはそのままは嫌だったからサルートに頼んで、普通の装備になるくらいの装飾を加えてもらう事にした。
追加した部分は金剛不壊にはならないでしょうけど、光になって回避できるから問題ないし追加部分が壊れる事もないはず。
うん、我ながら完璧な計画ね。
◇
そして一週間後、サルートから呼び出されて彼女の屋敷へとやって来ていた。
「んで、デザイン案は3つ作ったんだけれど····· どれがいい?」
サルートが提案してきたデザインは3つあって、どれも彼女が本気でデザインした物だったんでしょうけど·····
「一つはスリップランジェリーじゃない!!もう一個は装飾を加えただけでお腹とか出てるし····· 却下よ却下!」
「だよねー、で、本命は3つ目ね」
「まぁそうでしょうね、2つ目のデザインにレザーで服とかを足したデザインだもの、私の要望通りね」
最初二つは彼女の悪ふざけで、私のプロポーションを活かせるようにと露出度を上げているセクシーなデザインだった。
でも本命だった3つ目のデザインは見事で、手足のつなぎ目以外は露出を極限まで抑えて、でも所々は通気性も考えてか薄手の布を織り込んでデザイン性も上げていて、豪華だけれど無駄ではない装飾も散りばめられた見事なデザインだった。
で、肝心のアーマー部分は下は隠れるように組み込んで、上は外から見えるけれど追加した鎧パーツのお陰で胸当てのような部分鎧に仕上がっていた。
「いやー、大変だったんよ?金貨1000枚も使っちゃったし」
「バカ?」
「ケンカ売ってる?まぁでもその反応すると思ってた、だってこれオリハルコンだし」
「·····貴重すぎるわよ」
オリハルコン。
それは希少魔導金属で、魔術的特性が非常に高くなおかつ頑強という最強の金属の一角だ。
硬さならアダマンタイトに劣るが、魔導的に防御をしてくれる上に見た目が良いのが特徴だ。
だが当然高額で、金と比べると10倍近い値段がする代物だ。
「そう、だから部分的にしか使えなかったんだけど····· どう?結構いい感じでしょ?」
「最高ね」
故にアーマーの一部にしか使用できなかったのだが、それが逆に魅力を引き立てるよう仕上げられているのはサルートの腕前だろう。
ちなみに、そのイメージを読者向けにわかりやすく伝えると、最近のソシャゲに出て来そうな女騎士キャラのライトアーマーような感じだ。
動きやすさもあり、なおかつ無駄な露出は控え目で重要な部分は守れているデザインで実用性がある物を探してもらうとわかりやすいかもしれない。
閑話休題。
「·····で、さっきから気になってたのだけど」
「なに?」
「なんか、もう完成したみたいな口ぶりだけど?」
「もうとっくにできてるけど?」
「·····早く言いなさいよ、それ」
そして肝心の防具についてだが、実は既に完成していた。
というか、部屋に入った時点で布の掛けられたトルソーがある時点で気が付くべきなのだが、ルクシアは気が付いていなかった。
「じゃあお披露目よ~?えいっ!!」
バサッ!!
「·····イメージ図の通りすぎてあまり驚かないわね」
「忠実に作り過ぎた?じゃあここら辺の布を切って露出を上げ·····」
「やめなさいっ!恥ずかしいのよ、肌晒すの·····」
「じゃあ文句は言わないでね?渾身の力作なんだから」
ひと悶着あったけど、そこにあったのは私の望む通りの見事なライトアーマーで、スカートとかは無いけれどドレスのように可憐で美しい装備だった。
·····あの破廉恥な装備からは想像できない程、見事な仕上がりね。
「早速着けて色々やってみてもいいかしら?」
「もちろん!ただ色々拘ったせいで着け方が面倒になっちゃったから手伝うわ」
「ええ、頼むわ」
という訳で、私は早速完成したライトアーマーを身に着ける事にしたのだった。




