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欲しかったけどそうじゃない



 ダンジョン39階。


 そこは今までの階層と違い、あのヴァアアアアアアアアアアアが言った通り最後の部屋が近いのか豪華な作りになっていた。


「豪華というか、屋敷ね·····」


 今までより暗い階層の中には禍々しい屋敷が聳え、ここがダンジョンの主が住む場所なのだと示すかのようなオーラを放っていた。


「さて、吹き飛ばそうかしら」


 が、ルクシアは容赦しない。

 この見事な屋敷も一撃で灰燼にしようと、オーク型貯金箱を投げる構えを取った。


 ·····が、投げるのをやめてしまった。


 先程のヴァン(略が言った、他にも良い宝が沢山ある、という発言が引っかかったのだ。

 決して屋敷を壊すのが可哀想と思ったわけではない。


 流石に最後の階層になると置いてある宝も桁違いに良い物が多いだろうから、勿体なく感じたのだ。



「仕方ないわね····· ちゃんと探すとするわ」



 ルクシアは木刀を片手に、ようやくダンジョンを正攻法で攻略する事にしたのだった。





「申し訳ございませんでした、姫、どうか命だけはお許しくださいませ·····」

「姫様、どうか命だけは·····」


「ふふっ、姫と呼ばれるのも悪くないわね」



 さて、この訳の分からない現状についてなのだが·····


 ルクシアが屋敷に入るなり、吸血鬼の従者たちが襲い掛かってきたのだが、そのうちの1体をルクシアが紫外線で塵にするという惨い殺し方をした結果、残った吸血鬼たちが恐れをなしてルクシアに命乞いをして、なぜか姫と呼ばれ付き添われてしまっていた。


 流石の吸血鬼でも、命は惜しかったのだ。


 というか、ダンジョンを一撃で消し飛ばすバケモノが居るとヴァン(略から聞かされ、なんなら八つ当たりで八つ裂きにされたりしていた従者たちが、そのバケモノにケンカを売る気力なんて残っていなかった。

 更にここには降参したら殺しに来る主がもう居ないため、あっさりと降参したという訳だ。



「で、宝物庫はどこかしら?案内しなさい」


「は、はい、こちらでございます·····」


 おどろおどろしい屋敷の中をおどおどしたメイドに案内されて進んで行くと、重厚な扉の前へと案内された。

 普段は従者でさえ近付けば殺されるヴァン(略の宝物庫なのだが、もう主は居ないためあっさりと案内されてしまったのだ。


「おっ、お好きなだけお持ちください、そそそそしてできれば早急にお帰り頂けると·····」


「·····そこまで怯えられたら殺す気も失せるわよ、攻撃してこなければ殺す事は無いわ」

「あ、有難き幸せです····· では開けますが、私たちでも開けたことが無い部屋故、これ以上の案内は出来ませんがお許しくだしませ」


「そこまでの暴君じゃないわよ·····」


 既にダンジョンの階層の大半を消し飛ばしたのだから十分暴君なのだが、もうツッコミを入れる気力も無くなったので割愛しよう。


「では開けます·····!」


 ギィィィイイイッ


 という嫌な音を立てて開いた扉の向こうには·····


「·····いかにも、って感じね」

「こ、これは·····」

「見事ですな·····」


 いかにもダンジョンのお宝部屋だ、という感じの金銀財宝が山積みにされた宝部屋が広がっていた。


 それを見たルクシアは·····


「この硬貨とか、貴方たちって使わないわよね?なんで集めてたのかしら」

「そう言われましても·····」


 なぜか硬貨が沢山ある事にツッコミを入れた。

 確かになぜ通貨が必要ないダンジョンに硬貨がやたらあるのか疑問だが、今気にするのはそこではないだろう。


「·····まぁいいわ、目的の物はあるかしら」

「お供します、姫」

「何をお探しでしょうか」


「防具よ、腕と足を覆える鎧があればいいわ、できれば軽量で動きやすいけれど手足を関節まで覆える物ね、あっそれと『金剛不壊』が付いてる事が必須条件よ」

「畏まりました、皆!姫の探し物を手伝いなさい!」


『『はい!!』』


 そして広大なお宝部屋を、屋敷に仕えていた従者吸血鬼たちが集まって総出での捜索が始まった。



「姫、これはどうでしょう」


「へぇ、壊れない槍ね、貰うわ」

「有難き幸せ、ではまた行ってまいります」


「わかったわ、·····ほんとにこれがあって助かったわ」


 その後、ため込んだ財宝が多く捜索は難航しているものの、色々収穫はあった。


 その中でも特に助かったのは、不壊ではないが『マジックバッグ』だ。

 見た目はポーチくらいのサイズなのだが、中身が無限大とも思える程広く、色々な物を収納できるという夢のようなアイテムだった。


 ちなみにそれはヴァン(略の執務室という名のダンジョンマスターの部屋にあったらしく、色々と書類らしきもの等が入っていたが、全部出して今はルクシアの宝入れになっている。

 現に今も持ってきた不壊の槍を手馴れた様子でスルスルっとマジックバッグの中に収納し、もう自分の物として扱っていた。


「姫、この赤い宝石なんてどうですか?何やら不思議な波動を感じますが」

「こちらの石の仮面はどうでしょう」


「要らないわ、好きにしなさい」


「はいっ!」

「·····ところでその仮面、なんかこの石ハマりそうじゃない?」

「あっ確かに、ちょっと嵌めてみる?んで被って····· あっヤバいかも、ろうそくの光が、助け」

 GYAWAOOOOOOO!!!


『WRYYYYYYYY!!!?!?!?!』

「あぁっ、エイシャが何か大変な事に!!」


「何してるのよまったく·····」



 ·····このように、時々変な物も持ってくる吸血鬼も居るが、割と良い物も持ってくるためルクシアは満足していた。



「姫ー!!!見つけましたぞ!姫の願望に一致する防具でございます!!」


「あっ見つかったかしら!見せてちょうだい!」


 そしてついに、ルクシアの目当ての品物が見つかったようだ。


 それはトルソーに着用させられて保管されていて、そのトルソーごと吸血鬼の執事が持ってきてルクシアへと手渡した。


「両手を肘まで覆える籠手に、両足も膝上あたりまで覆っている防具があるわね、ちゃんと金剛不壊も付いてるじゃない、確かに私の望み通りね」



 それは、正にルクシアが望んだとおりの防具で、黒を基調とした軽そうな装甲に金色の装飾が施され、所々に宝石も散りばめられた、どこかの姫騎士が付けていても可笑しくないような見事な防具だった。


 ·····が。


「えっと、·····体の部分の鎧は」

「それで合っていると思います」


「ほぼ下着じゃない·····」



 胴の部分が、下着より布面積の少なかった。

 確かに装甲は付いているのだが、ほぼ装飾用といった感じで胸と股の局部だけを覆う構造のそれは、他の重要な臓器のある腹や胸部を全く守れておらず、鎧として何の意味があるのか不明な代物だった。


 いや、もはや下着より酷いという点では服よりも格下と言えるであろうその防具は·····


「説明があるわね、ええと····· 説明によるとコレは····· 不壊のビキニアーマー·····? 何よコレ、ふざけてるのかしら」



 ビキニアーマーだった。



 確かに手と足を覆える防具が欲しいとは言ったけれど、胴部分は要らないとは言ってないわよ。

 なんでこんな破廉恥な恰好の防具を着なきゃいけないのよ、何の意味もないじゃない。


 でもデザインがいいのが悔しいわ、私に似合いそうな見た目もしているし·····


「姫、上から何か羽織るかインナーを着用しては?」


「·····そうね、その手があったわ」



 しかもよく考えれば、攻撃を光になって自動回避できるルクシアにとって防具はさほど重要ではなく、亜光速攻撃の反動から身を守れる装備が欲しかっただけで、機動性も確保できるビキニアーマーは最高の防具と言える物だった。


 さらにプロポーションの良いルクシアがビキニアーマーを身に着ければ、その魅力は最大限発揮されるだろう。



「·····うん、このままは嫌ね、あとで何とかするわ」


「そうするのがよろしいかと、それか一番重要な部分の鎧は除いて籠手と足具だけ使うのも良いと思います」

「逆よ、胴部分より手足の方が重要よ」




 が、流石にそのまま身に着けるのは恥ずかしかったのか、というかこの場で着替える訳にもいかず更にこんな破廉恥な鎧は着たくなかったルクシアは、特に試したりなどもせず着用せずにマジックバッグへと投げ込んだのだった。







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