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強くない、けれど便利 それが『光魔法』



 私、ルクシア・ターディオンは特筆すべき所もあまりない、フォトケミス魔法学院の学生だ。



「次、ルクシア」


「私の番ね、ええと····· 不味いわ普段詠唱しないから忘れてるわね····· えっと『光よ球となりて打ち出されよ』、ライトボール!·····だったかしら」


 ピカッ!

  ひゅーん·····


   ガコンッ!!


「合ってた、ギリギリセーフね·····」

「当たる位置もギリギリですがね」



 今は攻撃魔法の実習の時間だが、ロクな攻撃魔法を使えない私にとっては地獄のような時間だ。

 


「ぐっ····· 光魔法は基本的に支援担当だからあまり練習してないのよ·····」


「支援魔法とはいえ、それは数少ない攻撃魔法なので練習はして下さい、それに光球魔法は正確に飛ばして照らす事が重要ですので」

「わかりました·····」



 だから私は、攻撃魔法の実習の成績はあまり良くない、何せ授業の成績は下から数えた方がずっと早いくらいには酷いわ。


 ·····私が適正のある『光属性魔法』は攻撃にはあまり使えない魔法だから仕方ないのだけれど。



 どのくらい弱いかと言うと、1番基礎的な『○○ボール』の魔法でさえ弱くて


 炎なら燃える

 水なら湿潤させて動きを鈍くさせられる

 土ならかなりな破壊力がある

 風なら物凄く早くそして見えない力を当てられる

 闇なら相手の視界を奪える力がある


 ·····そして光は、無属性のボールに発光する機能がついてるだけなのよね。

 当然威力も低く、ノロノロと飛ぶせいで簡単に避けられるから最弱だ。



 ただ、全くもって使えない訳では無いのよ?


 暗闇の中では、このライトボールが光源になってくれるし、飛ばして先を照らして安全を確保したり出来る、かなり重要な魔法ね。


 ·····うん。

 他の光魔法もそんな感じで、基本的に照らす事がメインの役割なのよ。



 むしろ弱すぎる光魔法だけ差別されてもおかしくないのに他の元素魔法と並んでいられるのは、戦場で光源を確保することがかなり重要視されてるからなのよね。



「よっ後方支援、調子はどうだ?」


「げっ····· マッハに絡まれたわ、今日は厄日ね·····」



 そして絡んできたマッハは同級生の男子で、風魔法の使い手だ。

 彼の風魔法は速く、音と同じ速度で飛翔する世界最速の不可避の魔法で、攻撃魔法の中でも上位の属性だ。


 練習試合で風魔法を使われた事あるけど、早すぎて避けられたもんじゃない。


 ·····まぁ、私は運動部で格闘もしていたからギリギリ避けたけれど。



「はぁ····· 光魔法以外が羨ましいわ·····」


「ん?お前一応もうひとつ属性使えただろ?何だったか」


「ウザ·····」

「聞こえてんぞー、風の力なめんなよ」



 そして何より、攻撃系統の魔法でも上位に属する風属性を使える彼は、攻撃系統最弱の私をからかうためウザ絡みしてくるのよね。

 まるで夏場の湿度高めの熱風みたいで私は嫌いよ、本当に暑苦しいわ。



 ·····で、話を戻すけれど実は私はもうひとつだけ使える属性の魔法がある。

 それが『重さ魔法』だ。


 あんまりにもマイナーすぎてマトモな名前もない、ただ物体の重さを変えられるだけの魔法だ。

 しかも重さ魔法の中でも低レベルな、重さを変える魔法くらいしか使えない。



「でもいいじゃない、光で照らしたり重さ魔法で重い荷物も軽々運べてサポートに役立ってるのだから、風魔法でこんなの出来るかしら?」


「·····出来ねぇけどよ、やっぱり魔法といえば攻撃系統が花形ってもんだろ?なぁ!」

『そうだそうだー』

『やっぱり派手に魔法飛ばすのが1番ですわ!』

『·····まぁ、支援の大切さもわかるけどな』


「いっつもこればっかり、はぁ·····」



 だから、攻撃に使えない魔法しか使えない私はからかわれ続ける運命なのよ。


 不幸中の幸いなのは、サブ属性含めて支援においては他の属性よりずっと役に立ってるお陰で完全に無下には出来ないところかしら?


 お陰でイジメられずに済んでるし。



『実習は終了です、各自教室に戻るように』


「あっ授業終わった、帰·····」

『ルクシアさんは片付けの手伝いをお願いします、成績に加点しますので』


「·····れないよね」



 ちなみに、成績で重要視される攻撃魔法の項目がいっつも成績が低いのに退学させられないのは、授業の片付けを手伝う代わりに加点して貰ってるからなのよね·····

 なんか悔しいけど、仕方ないと割り切っているわ。



「やれやれ····· 『軽くなれ』、よいしょっと」

「やはり重さ魔法は便利ですね、ではお願いします」


「いつもの倉庫ですよね、かたづけてきます」



 私は授業で使った道具の中でも、特に重い物の重さを軽減して持ち上げた。


 まぁそれでも重いけど。



「にしても、良く鍛えてますね」

「攻撃魔法が使えないんで、せめて戦えるようにトレーニングはしてるんです」


 ちなみに私は格闘部所属で、光魔法で攻撃出来ないから別の手段で戦えるように自主的にトレーニングをしていた。


 格闘技がメインで剣術も少し使えるけど、実戦で使えるかはわからない。



「魔王軍相手に使える気はしないですけどね」


「幹部級ともなれば、接近された時点で魔法使いでなくとも死を意味しますからね」

「まぁ護身用ですよ、あると無いとじゃ違いますから」



 いつかこの学校を卒業したら、魔王軍との戦いに出ることになる。

 だから攻撃魔法がほぼ使えなくても、少しでも戦う手段は覚えておかなくちゃいけない。


 まぁどうせ後方支援になる運命だけれど。



「·····はぁ、天気も悪くなりそうだし、本当に実技は苦手だわ」



 役に立ちたいけど、あんまり目立った活躍の出来ない私の心には明るくな事の無いモヤモヤがずっと残っている。

 そしていつも通り燦然と輝く太陽を見上げようとしたが、私の心のように分厚い雨雲が近づいて隠れてしまっていてため息をついたのだった。




 ·····まさか、このすぐ後に何もかもをひっくり返す事態が発生するなんて全く思いもせずに。



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