32. 君は僕を殺してくれない
「あら、ラーラ様。お見舞いですか?」
アイリスが椅子に座り机の上で闇魔法が問題なく使えるかどうか──机には様々な影の人形やらなにやらが踊っているように見える──調べていると、アイリスの療養部屋にラーラが入ってきた。
「もう大丈夫とお伝えしたかと。ほら、こんなに魔法も使えるようになりましたわよ
「よかったです。でもアイリスさんとちゃんと話したいことがあって」
「……」
ふ、と闇魔法を消し、アイリスはその縦に割れた瞳を隠そうともせずにゆっくりと瞬きをする。
どうぞ、とラーラを椅子へ誘う。
『念話でお話しましょう。いつ何があるかわかりませんから。ラーラ様、お話したいということは』
『はい。私たちはどこから話して、どこまで話すかについてです』
ラーラとアイリスの視線が交差する。
『みんな、私たちが話してくれるときを信じて待ってくれています。確かにすぐにでも聞きたそうにしてはいますがアイリスさんの体調が良くなるまで、私たちの決意が固まるまで我慢してくれています』
『そうですよね。なぜ竜族の私が勇者一行に最初からいたのか、なぜラーラ様がそれを言わなかったのか、お話するには全てを開示せねばなりませんから』
アイリスが手を組んで、ラーラに問う。
『ループされていることを、お話されますか』
ずっと悩んでいたことを指摘され、ラーラはどきりとする。
死んだら人生が巻き戻る現象のことを誰かに話そうと思ったことがあるのか。それは頷くことができる。だが信じてくれたかといえば、首を振るしかない。
(みっともなく死にたくない、ループしているから助けてほしいなんて教会に命乞いをしたことも、それこそエリックに相談したこともありました。でも結局は死んでしまってやり直しだった)
きっとエリックは過去のループと同じようにラーラを守ろうとしてくれるだろう。それでも戦争が起きたり、邪竜王の攻撃に巻き込まれたり、病で死んだりと回避できない死については彼でもどうにもならなかった。
此度のループにおいての彼ら、勇者一行にループのことを話しても良いとラーラは思っている。信じてくれるだろう、変わらず接してくれるだろう、共に力を振るってくれるだろう。だが一つ、懸念点があった。
『このループはどこかおかしい。今までにはなかった現象が起きているのです。だからそんなループで全てを話したらどうなるのか、何度もループを繰り返してきた私でもわからない……』
ラーラは顔を俯かせる。
(女神様の介入、それが一番恐ろしいのかもしれない。いつ何時、仲間を失うのか。それが一番、私自身が死んでしまうことより恐ろしい)
そして──クリスのこと。
ループしても戻らなかった邪竜化。もしこの機会、このループを逃してしまえばもう邪竜から戻れなくなるかもしれない。最後のチャンスなのかもしれないから、ラーラは慎重になっていた。
『この旅はクリス様のためのものです。クリス様が元に戻ってくれるため全力を尽くす戦い、それがこのループだと私は考えています。だから、私は……』
『皆に話すことでそれをふいにしてしまうことが、怖いのですね』
他ならぬクリスのことを想うあまり、恐怖している。
他ならぬクリスを助けたいがため、勇気が出ない。
ぎゅ、と手を握りしめるラーラ。
『ラーラ様、覚えておいでですか?』
『なんでしょう』
『私たち竜族はループを知覚している。ただ知覚といっても個体差があって、ラーラ様のお近くにいればいるほど記憶は残ります』
アイリスは微笑んで目を細める。
『例えこのループが失敗に終わったとしても、私はラーラ様のお供に再びなるでしょう』
『……いやです、もう失敗をしたくないのです。次にループをしてしまえばクリス様が、もう……本当に戻れなくなるかもしれない』
それに、とアイリスはラーラの手をとった。
『今、全てを彼らに話してしまえばループしても彼らは思い出すかもしれません。謂わばこれは保険です』
『いやです、そんな失敗が前提だなんて! 私はクリス様を絶対に助けたい! だからそのためにみんなを試すようなこともしたくない、私はみんなを信じているのです!』
アイリスはその言葉を聞いてにこりと笑った。
『ほら、大丈夫でしょう? 皆を信じればきっと力になってくれます。貴女一人だけではないのですよ、陛下を助けたいと思う者は』
『アイリス、さん……』
臆していたのだ、ラーラは。
クリスのためにと思いながら一番クリスを助けられる道筋を自ら見ようとしなかった。
邪竜化をしたクリスを助けるためには、ラーラ一人だけではいけない。皆の協力が必要なのだ。
(私のループするこの呪いは、呪いではなかったのかもしれない。全てはクリス様を助けるためのループなのかもしれない……!)
ラーラはその青の瞳をはっきりとさせて、アイリスを見た。
「私、全てを話します」
アイリスはゆっくりと頷く。
「仰せのままに、ラーラ様」
昼食後の時間。ラーラは口火を切って話し出す。
エリックは静かに聞き入り。
シシリーは驚きを隠せないまま。
ステファンは気まずそうに目を逸らした。
「私がこのループで勇者になったのは何かの運命としか思えないのです。この世界をこれ以上邪竜王──クリス様に壊されないようにするためにも、私と戦ってほしいのです」
静寂が部屋を満たす。すぐに信じてくれとは言わなかった。荒唐無稽な話だと馬鹿にしてくれたってよかった。
ただ、自分に力を貸して欲しい。
世界のために──クリスのために。
この救いの勇者のために。
「……死んだら人生が巻き戻る、ね」
エリックが静寂を打ち切った。
「ねぇラーラちゃん。何回くらい、そのループってのを繰り返したか聞いてもいい?」
「エリック様、それは……勇者様に」
「うん。一体何回死んだのかと聞いてるよ」
シシリーが話を遮ろうとするが、エリックは最後まで言った。
ラーラは口を開こうとして──はたと気づいた。
「わからない……」
「わからない? どうしてだよ」
ステファンが訊くがラーラは何度考えても回数なんて覚えていなかった。
「何回死んだか、わからないんです。数えるのをやめてから……もうどうでもいいってなっちゃって、何もしなかった人生だってあったから」
「数えるのをやめちゃうくらい、君は何度も死んでいたんだね」
エリックが瞳を閉じる。
そして、こう言った。
「ごめんね、ラーラちゃん。僕たち人族はラーラちゃんがそんなに苦しんでいるのに知らずにのうのうと生きていた。そんなに辛い目に遭ってきたのに今回のループでまた勇者になってくれた」
「……前回のループで私が、竜王クリスという方を傷つけて、ラーラ様を……殺してしまったから」
シシリーが震える両手を目の前にやって、顔を覆う。
「私が、やったんだ。勇者様を殺して苦しませたの、私だったんだ……!」
「シシリー。それはオレもそうだ」
ステファンが重い口を開いた。
「オレが過去の勇者を裏切ったから、お前は死んだ。オレたちが想像もできない苦しみを味わってきた。それでもお前はオレを、オレたちをあのとき王城で選んだ。どうしてだ?」
ラーラを見つめるヘーゼル色の瞳はただひたすら真実を知りたいという思いで溢れていて、ラーラは答えることにした。
「経験がありました。打算もありました。私とアイリスさんだけでも大丈夫だとも思っていました。でも、旅をするうちに──貴方たちとだったらクリス様を救えると、本気でそう思えるようになってきたのです」
だって、とラーラは続けた。
「今までのループで、私を含めてこの五人で旅をしたのははじめてです。ここまでゼレンセン王国まで近づけて、誰も欠けることなく来れたのはみんなのおかげ」
ラーラが窓の外、暗黒の雲に包まれてきている空を見上げてから一人一人の目を見て伝える。
「アイリスさんは前回のループからお世話になり、私の召喚に応じてくれて、ずっと支えてくれました。ステファンは最初こそぶつかりましたが今では信頼できる前衛で安心して背中を任せられる、とても頼れる方です。以前の裏切りの理由だってわかりました」
柔らかな金髪と若草色に視線を移す。
「シシリーさんは私のことを、みんなのことを一番に思って行動してくれました。覚えてますか、貴女が私たちを信頼して囮になってくれたこと。竜族を蔑称で呼ばなくなった貴女を、どれだけ嬉しく思ったことか。貴女の優しい仲間思いの気持ちに救われてきましたんです」
シシリーは悲痛なほどに肩を震わせる。
「エリックさんは最初の戦いのときからバラバラだったみんなをまとめて、今ではこの星で一番のパーティだって思うくらいに成長させてくれました。私の弱いところを支えてくれて、勇気付けてくれました。それに」
ラーラはエリックを真っ直ぐに見据えて言った。
「今でも女神様に情報を与えないように、その不完全な千里眼で必死に抗ってくれている」
「……なんのことだか」
とぼけるエリックにアイリスが口を開いた。
「神殿でエリック様は女神様と接続してしまったのでしょう? そして今でも竜族である私を殺さないように武器を遠くに置いている」
「確かにお前、弓矢と短剣はどうした」
ステファンが周りを見渡しても、いつも携帯している武器は見当たらなかった。
肩を下ろしてエリックは観念したように言った。
「……そこまで見透かされてたなんてね。参ったよ、ラーラちゃん。確かに僕の目は今、クロニカさんにもらった目薬のおかげでなんとかなってるし、いつ乗っ取られてもおかしくないように口の中に毒薬を仕込んでるよ」
「お前、そこまで」
絶句するステファンにエリックは笑いかけた。
「ラーラちゃんには毒薬のことバレないと思ってたんだけどなぁ。薬師の心得があったなんて知らなかったよ」
ましてやループしてたなんてね、と言うのでラーラが微笑みかけた。
「貴方は覚えていないでしょうが、エリックさんにはたくさん教えてもらったんですよ。剣の師匠だってエリックさんでしたし、何も知らない貴族の令嬢だった私を一端の魔法剣士に鍛え上げてくれた」
「……そっか。そうだったんだね」
僕は今まで君を助けてこれていたんだ。エリックは心の中で安心する。
ラーラは今度はステファンとシシリーに顔を向けた。
「ステファン、シシリーさん。貴方たちがいなくてはこの旅は成り立たなかった。シシリーさんがはじめに私を信じてくれたように、私も二人を信じたんです。だから恨んでもいないし、これからとても頼りにしているんですよ」
「……ほんと、ですか……」
シシリーはしゃっくりを上げながら顔を上げる。もう顔がぐしゃぐしゃだったから、ラーラが近づいて顔を優しく拭いてやる。
「私、勇者様の大切な人を、クリスさんって人を……邪竜にしちゃったんですよ」
「それをさせたのは女神様だと先日明らかになりました。貴女のせいではありません」
「わ、わたしっ……! これからも、勇者様の旅に、ついていっても……いいんですかっ!」
「ええ。貴女の光魔法は錯乱している竜族の方々を治すのに必要です。貴女の仲間想いな気持ちが私たちの要でもあるんですから」
わぁん、とシシリーがラーラに抱きついて泣き出した。その柔らかな頭をラーラは撫でる。
「……オレだって、いいのか。お前と同じ前衛だぞ、いつ裏切ってもおかしくねぇ」
「そうですね。ステファンには私が道を違えたらこの首をはねてほしいとお願いしておきましょうか」
「なっ……なんてこと言いやがる!」
ステファンが立ち上がってラーラに詰め寄った。
「貴方なら私のことを躊躇なくこの命を絶たせてくれる。無論私が間違ったことをしたらの話ですが、これでもとても信頼しているのですよ?」
「そいつぁ、いくらなんでも……信頼しすぎってやつだぞ。この、この……」
拳を握り、ステファンが絞り出すような声で言う。
「脳筋勇者がっ……」
「はい。脳筋なので、それしか考えられないんです」
「バカ野朗。大切な男のためにそこまでするんだから脳筋勇者って言ってんだ」
ふふ、とラーラは笑ってしまった。心の底から嬉しそうに。
「ほんと、バカだよお前。いいか、お前がその邪竜……クリスってやつを救わないなんて言いやがったら、オレが顔ふっとばしてでも正気に戻させるからな」
「ありがとうございます、ステファン。それでこそ貴方です」
褒められても嬉しくねぇ、と言うが。
「私からも感謝を。ステファン様」
とアイリスに言われてしまえば。
「ま……どーしてもって言われてるからな。オレの沽券に関わるし」
頬をほんの少し赤らめて頭を掻いた。
シシリーは泣きやんだようでラーラに向かって「よろしく、お願いします……っ!」と眦を真っ赤にしていた。
「それにしても、脳筋勇者に本当に男がいたなんてな」
「そ、そんな言い方はしないでください……確かにクリス様は私の命の恩人と言っても過言でもありませんが」
「こりゃ大変だぞ、がんばらないとなエリック……エリック?」
ステファンがいち早くエリックの異常に気づく。
「おい、エリックどうした。なんか言え!」
ラーラやアイリス、シシリーもエリックに近づいて声をかけるが彼は何も言わない。
金色に光り続ける瞳を開いて、表情が抜け落ちていた。
「エリックさん、エリックさん! 聞こえていますか!」
ラーラの必死な声に、エリックがほんの少しだけ反応する。
ゆっくりと──ラーラへと視線を合わせて。
「らー……ら」
その呼び方は、決してエリックがしないもので。
どこか懐かしい感じがして、ラーラはエリックの肩に力を込める。
「ラーラです。聞こえていますか」
声が震える。
千里眼は千里眼に引っ張られる。エリックの千里眼が女神と接続してしまったのなら、こうも考えられる。
邪竜王の千里眼──クリスの千里眼にも、繋がる。
「……ぁ……ら、ら」
「私はここにいます。貴方は、貴方は──!」
エリックの金色の瞳から、真っ黒な涙が溢れ出てくる。
そして、こう言った。
「はや、く。にげ……て、おれ……から」
クリスが、ラーラと対面する。
「みんな、にげて」
ふ、とエリックが意識を失う。
「エリックさん!!」
「早くクロニカ様を呼びましょう! 異常事態だと!」
ステファンがクロニカを走って呼びに行き、シシリーがエリックの懐から目薬を取り出して彼の目に薬を垂らす。
「アイリスさん……今のは」
いつの間にかラーラは自分の手が微弱に震えていて、アイリスが冷静に答えた。
「あれは……陛下です。陛下は必死に意識を保っておいでなのでしょう」
「もう、クリス様の意識が今ので無くなっていたとしたら……」
「ラーラ様!」
アイリスがラーラの目が覚めるように声を張り上げた。
「希望を捨てず勇気を振り絞る、それが俺の光なんだと、陛下は以前ラーラ様のことを仰っていました。陛下はラーラ様の助けを待っているのです! だから気をしっかり持ってください!」
そうだ。自分は救う……クリス様を救う勇者なのだ。
ラーラは顔を上げて、エリックの顔に流れた黒の涙を指で拭き取る。
「エリックさんも……クリス様も、絶対に救います」
「ええ。勇者ラーラ様」
アイリスは微笑み、シシリーが大きく頷いて。
ステファンが連れてきたクロニカが、エリックを診ることになった。
「視えたんだ。きっとあれは、邪竜の視界だったんだと思う」
エリックがクロニカによる診察が終わり、寝台から起き上がって皆に言う。
「邪竜の視界……ということは」
「陛下の視ていた景色が見えたということですね、エリック様」
シシリーとアイリスの言うことに頷くエリック。
「飛んでいたんだ。自分が抑えきれなくて、ずっと胸の中に溶岩みたいな熱くて黒い魔力がはち切れそうになってて。でも身体が勝手に動いて──最後に視えたのは、大きな街だったんだ」
「おいおい、街っていやぁもう残ってるのはあそこしかねぇぞ」
ステファンが指摘するのは、そう。
「アルア王国の王都、ですね」
静かにラーラが言った。
「うそ、それじゃあ邪竜になってしまった勇者様の大切な方が、王都を……!」
「そう。王都を襲撃しようと今、向かっていたんだ」
シシリーの言葉に続けてエリックが答えた。
ラーラは髪をいじりながら考える。
「これから飛行魔法を使っても間に合わない。どうすれば……」
「そこで、このアタシ。クロニカ様の出番ってワケだな」
ふふん、と腕を組んで後ろに結った三つ編みを揺らし、クロニカが指を振った。
「大薬師は大魔法使いでもある。こんなこともあろうかと王都近くに移動魔法の陣を敷いておいてるのさ。おまけに以前調査しにいったときに命懸けで敷いた陣だってある」
「それってもしかして」
エリックがごくりと唾を呑み込む。
「そ。魔界ゼレンセンへの入り口さ」
準備が整ったら私に声かけな、千里眼の赤ん坊くんはもう大丈夫だろうから、とクロニカは外へと出ていく。
「オレは大丈夫だ。いつでもいける」
「私もいけます。今度は女神様の思い通りにはさせません」
ステファンとシシリーが各々の武器を持つ。
「私も準備は既に。エリック様は大丈夫ですか?」
「……」
エリックは瞳を閉じたまま、口を噤んでいた。
だが、ラーラに言葉を投げかけた。
お願いをするように、頭を下げて。
「ラーラちゃん、頼む。僕が次に乗っ取られてしまったら、君の聖剣で僕の目を潰してくれ」
「何を言うんですか!」
ラーラが叫ぶように言ったが、エリックはそれでも、と続ける。
「僕の千里眼は女神様にも邪竜王にも繋がっている。僕がさっき乗っ取られたとき、口の中の毒薬を噛めなかった。間に合わなかったんだ」
エリックは目を閉じたままラーラに向く。
「目を閉じていても君の顔がわかる。ここまで僕の目は育ってきてしまった。次に乗っ取られたとき僕はどうなるかわからない」
だから、ラーラちゃん。
「いや、勇者ラーラ。万が一のときは、僕を」
切り捨ててくれ。
その言葉を聞いた瞬間、ラーラはエリックの頬を叩いた。
「……いいですか、エリックさん! 貴方は私の大切な仲間です! みんなで無事に帰るんです、世界を救って、クリス様を救うんです! そうしたら貴方の目だってなんとかする方法が見つかります!」
エリックの手元に、彼の武装──弓矢と短剣を押し付けてラーラは言ってのけた。
「私は勇者ラーラ、聖剣は女神から受け取ったけれど、これはクリス様を助けるための剣。貴方を傷つけるための剣ではないのです!」
いいですね、エリックさん。
ラーラが力強く、彼の手を握る。
(君は、僕を殺してくれないのか)
エリックは想う。千里眼を通して、ずっと旅してきた、ずっと見守ってきた彼女を。
(僕を見てくれない君は、僕の命をあげると言ってももらってくれないんだね)
君は世界を救う勇者。
君はあの人を救う勇者。
じゃあ、僕は──。
「貴方は私の、一番はじめに手を差し伸べてくれた、大切な仲間なんです!」
そうか。
そうなのか。
ずっと視ていたあの女の子は、君だったんだ。
はじめて剣を手に取ったあの子を鍛えて、一緒に冒険した──知らない記憶が視える。
きっとそれはループの思い出。彼女の中に、いつも僕はいた。
それだけで僕は。
「──わかった。僕も行こう。君の仲間として」
エリックは、その優しい野に咲く花のような、月のような瞳を開いた。
エリックをラーラは殺さない。
果たして彼のことは、どうするのか。
エリック編、そして王都襲撃編です。
評価、ブクマ、感想いつもありがとうございます、励みになります。
明日の更新は遅くなるかもです。よしなに!




