知らない子
子猫たちはなかなかのやんちゃ者だった。がりがりと畳の部屋で爪を砥ぐし、よく二匹で走り回ってじゃれている。
「はは、元気だな」
兄さんも子猫たちの可愛さをようく実感したらしい。数日後、ついに飼っていいとお許しが出た。この子達を見つけた時、兄さんが猫のための生活必需品を買って来てくれていた。
「なあ」
グリグリとキジトラに足に頭を擦り付けられる。その様子があまりにも可愛かった。もう一匹は黒猫だ。
クールな印象を与える子だ。でもキジトラくらい甘えん坊でそのギャップが可愛すぎる。
僕は猫たちにメロメロだった。
「名前、つけないのか?」
「え、あ、そうか」
兄さんに指摘されるまで気が付かなかった。
「えーと、ふたりとも男の子だし、男らしい名前がいいよね」
真剣に悩み始めたら兄さんが吹き出した。
「呼びやすい名前で頼むよ」
そう言われてもなぁ。じゃあ!
「キジトラがスイ、黒い方はクロね」
「お、呼びやすいな」
兄さんにも受けが良かったみたいだ。
「これからもよろしくな。スイ、クロ」
僕が頭を撫でると二人は鳴いた。
***
僕は学校にいる。今、高校二年生だ。
男子校なので気楽なものだ。次は移動の授業だから急がなくちゃいけない。
「翔也、一緒に行こうぜ」
肩を抱き寄せられて視線を上げると、大好きな北斗くんだった。
自分がカッコいいってこと、このコはたぶん分かっていない。実は僕の密かな想い人だったりする。
「翔也、どうした?行こうぜ」
「う、うん」
北斗くんと理科室に向かったら、僕たちと同じくらいの男の子が廊下に立っていた。黒髪に青の瞳。綺麗な子だ。転校生かな?
「翔也ー!」
明るい声がして、後ろから抱き着かれた。え、誰だろう?その子は明るい茶髪だ。瞳は青。
「あ、あの、どちら様でしょうか?」
その子達にそう尋ねたら明らかにしゅんとされた。
「僕たちのこと、分かんないの?」
「スイ、翔也はこの世界の住人だ。無理を言うな」
僕は固まった。え、今「スイ」って言わなかった?
「翔也、知り合いか?」
「えーと」
予鈴が鳴っている。
「二人も来て!」
僕は彼らにそう告げたのだった。
続く