学園にて 2
不定期投稿です。
まだまだ拙いですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
「殿下」
ジャスパーの後ろから笑顔のアレキが見えた。
笑顔ではあるが、明らかに目が笑っていない。
「うわぁ!」突然の事にジャスパーが驚きの声を上げる。
「いつの間に後ろに?」周りの側近達もザワついている。
王太子殿下の側近や王家の影よりも気配を消せる兄って いったい…
驚いているジャスパーに構わず「まだルビーには近付かないお約束では?」とアレキが低い声で問う。
「お、おう。しかし、ルビー嬢が面白いので、つい…」何故か焦り気味に答えるジャスパー。
「殿下…」更に威圧するアレキに対して笑いながら「あぁ、分かっているから!」と、ジャスパーが肩を叩いていなす。
「お前、今朝は何故クリソベリル伯爵令嬢を庇った?」
ルビーへと向き直って、先程の焦りは無かったかの様にジャスパーがニヤリとする。
「え…と」
急に見透かされた様に訊かれ、答えに詰まるルビー。
「ルビー、応える必要は無い」アレキが呆れ気味にルビーの前に立つ。
「お兄様…」目の前を遮られ、ホッとするが「アレキ、そういうお前の態度が良くないのではないか?」
やれやれといった様子のジャスパーが肩を竦める。
「まぁ、良い。先程の件、考えておけ」そう言って側近達とゾロゾロと食堂を後にする。
当たり前の様に同じテーブルに着くとルビーの頬に手を遣り「何かされなかったか?」とアレキが心配そうにキラキラした瞳で見詰める。
これには一緒に居たフローライトも目を逸らして、そっと気配を消す。
「い、いえ、全く!」顔から火が出そうになりながらも慌てて答えるルビー。
…いったい、何を見せられているんだ?という顔で、気配を消しながらコソコソとルビーに「またね」と合図をして、去って行くフローライト。
そんな彼女に申し訳無さと感謝を込めて笑顔を送り、頬に当てられた手に自分の手を重ねて「お兄様、私は大丈夫ですから」と瞳を見詰めれば、重なった手を取ったアレキが目を細めて「あぁ…俺が遅れて来なければ…」と更にルビーを抱き締めようとする。
「お、お兄様、此処は学園内ですし、大袈裟ですわ!」
両手を広げる兄を押し退け「お食事は済みました?」とサンドイッチを差し出す。
サンドイッチを前に口を開けるアレキ。
お皿を持ったまま、キョトンとするルビーに
「食べさせて」
キラキラした蒼い瞳で見詰められれば、1切れのサンドイッチを口元に運ぶ以外の選択肢が思い付かない。
嬉しそうに食べるアレキを可愛いと思いながらも、ふと我に返れば、周りの人達は苦笑いしつつ見て見ぬふりをしている。
居た堪れないが仕方ない。一刻も早く食べてもらってこの場を去りたい。
最後に(さすがに自分で)お茶を飲みながら「教室まで送ろう」
と言うアレキに従い食堂を後にする。…断ると面倒なので。
「また放課後」
そう言って去っていくアレキを見送って、本日 何度目かの溜息を溜息を吐く。
こんなに兄に甘やかされていては、自分も兄もずっと独り身なのでは?
そんな心配がモヤモヤと胸に渦巻いてくるのだった。
ブクマしてくださって ありがとうございます!
ダラダラとしてしまってますが、ラストまで構想は決まっておりますので お付き合いいただけたら幸いです。