学園にて
不定期ですが、少しずつ書けたらいいなと思っております。
「ルビー様、おはようございます」
声を掛けて来たのは学園で最初に仲良くなった、フローライト・コーネルピン伯爵令嬢。
可愛らしく優しい雰囲気の彼女は密かに男子からも人気がある。
「おはようございます」笑顔で返し、あの店の小物が可愛いなどと暫しの雑談を展開する。
すると「おはよう!朝から大変だったな…クック…」
笑いながら割って入って来たのはヘリオドール・カイヤナイト伯爵令息。フローライトの婚約者である。
また、幼い頃からの顔なじみでもある。
「おはようございます、ヘリオドール様。また何かあったのですか?」先に教室に居たフローライトは今朝の出来事を知らない。
「いつものアレだよ」「あ…そうでしたの」
(ちょっと待って、それだけで通じるの?このお二方、さすがは婚約者同士ね)
ヘリオドールとフローライトは仲が良い。さりげなくフローライトを気遣うヘリオドールと少し無鉄砲なヘリオドールを1歩引いてフォローに回るフローライト。本当に、微笑ましいくらいに仲睦まじい。
二人に囲まれていると、羨ましいが寂しさも感じる。
ルビーには今のところ、婚約者はいない。兄のアレキにもである。
以前、自分もそろそろ誰か…と家族に相談したが、「ルビーは嫁に行く必要など無い。ずっとこの家にいればいい」アレキの一言で話は終わってしまった。両親共に頷いて。
貴族たるもの、家の繁栄の為の政略結婚なんて当たり前で。
もちろん、フローライト達の様に想い合って結婚出来たら幸せだろう。でも、そうでない事も少なくはないがそんなものだろうと思ってきた。
ルビーとアレキの両親は仲が良い。貴族には珍しい恋愛結婚だとも聞いている。
正直、羨ましい。
だが、自分は恋愛出来る自信が無い。何故なら、原因はあの兄である。
見目麗しく、学業も家業の手伝いも完璧で性格も悪くない兄。ただ1つ、妹最上主義な点を除けば。
そんな男性が常に身近に居るのだ。しかも大切にしてくれる。
どうしても他の男性になど目が行かない。
やはり、結婚は諦めるべきか。人知れずついた溜息は鐘の音に溶けた。
午前の授業が終わり、食堂で休憩中。
フローライトと他愛無い話をしながらサンドイッチを食べていると。
「お前がアレキの妹か?今朝のあれ、なかなかに面白かったぞ」
見上げてみると、誰もが知る顔。
「ジャスパー殿下!」慌てて席を立って礼をする。フローライトもルビーと共に礼をする。
「此処は学園内だ。気にするな」従者や取巻に囲まれたこの国の王太子が笑顔で制する。
「ルビー嬢…だったか?」「はい」
見定められている様で居心地が良くない。
「婚約者はいるか?」「まだ決まった方は居りません」
「では、一度 家へ来ないか?」「え?」
笑顔ではあるが、目が真剣な王太子。驚きのあまりに声が出ない。
(何故 私が?初めて直接お目にかかったというのに。しかも殿下のお家って?すなわち王宮?いやいやいや、いきなり私などには場違いですよ。)
長いと思われる一瞬にいろいろなことが頭の中を駆け巡る。
「大変ありがたいお話ではありますが、私の一存ではお応え出来かねます。一度持ち帰り、家族と話した上で改めて…」言いかけると「あぁ、すまない。思い付きで言ってしまった。お前の事はサファイアからも聞いているのでな」
「サファイア様が…」
サファイア・テクタイト公爵令嬢。綺麗で優しく聡明な、ジャスパー殿下の妃最有力候補である。ルビーにも気作に接してくれる先輩だ。
だからこそ、誘われたからと簡単に王宮へなど行けない。サファイア様に要らぬ誤解をさせたくはない。しかし、簡単に断れる話でもない。
「殿下」
怒気を孕んだ低い声が響く。
ブクマいただいてるみたいで…ありがとうございます!
初めての完全オリジナルで、なかなか纏まりませんが頑張ります。