閑話・ガーネット・1
悪役令嬢風に現れて、そのままだったガーネット嬢のお話です。
誰も不幸にはしませんよ。
少しだけ続きます。
ルビーの両親のお話も構想中です。
ガーネット・クリソベリル。
伯爵家の令嬢。
青い瞳で金の巻き毛。華やかな見た目で学園での成績も上位の彼女は、困惑していた。
内密に申し込んだクンツァイト侯爵家嫡男、アレキサンドライトに全く相手にされず、聞けば重度のシスコンだとか。
妹の為なら文字通り何でもするという。
断られたのはその妹のせい?だって私は申し分無い令嬢の中の令嬢。格上の侯爵家に嫁いでも何の遜色も無いはずだわ。
そんな思いから、彼の妹のルビー嬢へ声を掛けた。
ちょっと脅かすつもりで伸ばした手。
絶対に避けられる早さだった…はずなのに、否、避けた彼女の髪が枝に引っ掛かり転びそうに。
でも、光の速さで現れたアレキサンドライト様に抱えられ、無事に倒れなかった彼女は、事もあろうか私を庇ったのだ。
…なんてことでしょう。
私はなんてことをしてしまったのでしょう。
我に返って後悔をしても遅く、その日はずっと他の生徒から遠巻きにされていた。
昼休みも終わろうとした時。
「おひとりですか?」顔を上げると、ルビー嬢とアレキサンドライト様が食堂の隅に居た私に声を掛けて来た。
今朝の様子を見ていた人から噂話が広がり、誰も傍に来ないので1人で昼食を済ませ、一息ついた時だった。
「え、えぇ」
今更取り繕っても仕方なく、変わらず自分のままで対応すると。
「今朝は髪を気にしてくださって、ありがとうございました」
ニコリと微笑むルビー嬢の横で、しっかりその腰を抱いたアレキサンドライト様も「ルビーを気にしてくれてありがとう」と声を掛けてくださって。
気付けば涙が溢れていて、お2人とも慰めてくださって。
それからは、他の生徒達も普通に接してくれたのだった。
あれ以来、ルビー様とは時折お茶をしたり、アレキサンドライト様がご不在の時には昼食をご一緒したりしている。
何かと気に掛けてくださるので、今は誰も私を遠巻きにしたりしていない。
「私にはとても敵いませんわ」
常に寄り添い、ルビー様しか目に入れていないアレキサンドライト様に婚約を申し込むなんて、我ながらとんでもないことをしたものだ。
溜息混じりに独り言を呟くと。
「誰が誰に敵わないって?」
後ろから声がして、振り向くと知らない男性が笑顔で立っていた。
珍しい黒いの髪に黒の瞳の彼は「君、如何にもな貴族の令嬢って感じだね」楽しそうに私を見ている。
不躾な視線だが、品が無い訳ではないので嫌悪感は感じない。
そういえば、隣国から留学生が来ていると聞いた。
彼がそうなのだろうか?
不思議そうに彼を見つめていると。
「俺、ジェット。君と仲良くなりたいな」
「え…」
無邪気な笑顔で言われたら、断れる雰囲気でもなくて。
「私は…ガーネット・クリソベリルです」
自分らしくなく、小さく返すと「よろしくな!」嬉しそうにニコリと笑って流れる様な仕草で手を取られた。
「また会おう」手の甲に軽く口付けられて、驚いているうちにジェットは去っていた。
あれから、気付くと近くで興味深そうに私を見ているジェットに照れくささを感じながらも、けして嫌な感じは無い自分に戸惑っている。
そんな彼が、どんな人だったかは…少し先にわかることになる。
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