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終幕・1

遅くなりました。

もう少しだけ続きます。

「そういえば」

ルビーの肩を抱いて彼女のクセのある髪にそっと手を伸ばし、毛先を弄びながらアレキが思い出した様に呟く。


「ルビーは殿下に会いたいのか?」

夢見心地だった先ほどの遣り取りから、スッと現実に引き戻された。


アレキの表情を窺うと、憂いを感じて言葉に詰まる。


「…殿下からのお誘いをお断りすることは出来ないのでは?」

恐る恐る、アレキを見上げる。


「そ、それに、殿下の側室になれればクンツァイト家のお役に立て「お前がそれを言うか?」

言葉を遮られ、唇に人差し指を当てられる。


「先ほどの母上の言葉を忘れたか?そもそもお前は準王族なんだぞ」

…ん?私が準王族?

お母様の言葉を思い出す。

私を産んでくださったお母様は、エメラルドお母様の妹。

実のお父様…という言い方はなんとも言えないけれど、オニキスお父様じゃなくて………


「王弟殿下…」


思わず口から出た言葉に自ら驚く。


「その娘のお前は?」


「…王族に属する…でしょうか?」

「何故、自信なさそうなんだ?」

アレキが笑いながらルビーの頭を撫でる。


「まぁ、実際は公爵令嬢になるかな?」

聞けば、お父様…王弟殿下はオパールお母様と結婚した際に大公閣下となったそう。

その家門は今も残されていて、領地は王家とクンツァイト家、サファイア様のテクタイト公爵家で共同管理されていて、ルビーには継承権も残されている。


「では、殿下はいったい…」何の為にルビーを招いたのだろう?

興味を持たれたのは理解するが、婚約者のサファイア様がいらっしゃるのに。

「まぁ、従妹と話でもしたかったんじゃないか?」

王族の血を引くたった一人の従妹だから。


それだけ?

皆が見ている場所で言うことか?

ただでさえ、溺愛する兄のせいで普段から目立ってしまっているのに、王太子殿下に声を掛けられるなんて…


若干パニックになり、頭を抱えたルビーをアレキが抱き寄せる。

それだけで落ち着いていく自分に改めてアレキへの気持ちを実感する。


「王太子殿下とサファイア嬢の仲は良好だしな」

そう、あんなに素敵なサファイア様と寵を競うなどと滅相もない。自分は一生日陰の身で良いとさえ思っていた。


「殿下は酷いです」

ぷぅと頬を膨らませ、揶揄われた事に気付いたルビーを抱いたまま笑いながらヨシヨシと背を撫でるアクア。

落ち着いた頃を見計らい、ルビーに向き直る。


「ルビー、お前がクンツァイト家の繁栄を考える必要は無い。お前の存在が家を明るくしている」

…何より俺の大切な女性。


「誰にも渡すものか」


「…お兄様?」

ルビーに呼ばれてハッとして、彼女を見ると怯えた様子でアレキを見上げている。


何事も無かったかの様に表情を変えて。

「だいたい、王族の力など無くても廃れる様な家名ではない」

アレキにそう言われてしまえば納得するしか無い。

普段からの父オニキスとアレキの手腕を見ていればルビーの心配など杞憂に過ぎない。


それにしても、先ほどのアレキの表情…。

全身から黒いオーラが湧き出ている様だったのだが、見間違いだろうか?

顎に手を当てて考えていると、ルビーの手を取ったアレキが抱き上げて膝の上に乗せた。


「お、お兄様っ!これは…」

「暴れるな。動きだけでなく口も封じるぞ」


ジタバタと身動ぐルビーにニヤリと笑ったアレキが両手を束ねる。

これは動いてはいけないと本能で察したルビーは小さく…はい…と呟く。







なかなか甘い話になりません…

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