魔術の応用。
ムゥ、身体のあちこちが痛い。
毎日の鍛錬に悲鳴を上げる、ボクの柔な肉体。
ちっとも筋肉はつかないし、心も折れそう。
いつまでも、ボクはちびっ子ワンコのままだ。
見た目も、幼児になってしまったし。
この間、古倉さん所の嘉子ちゃんに会った。
ボクが中学生の頃は保育所に通っていて、里帰りするといつも遊んでくれた。
それが、今では嘉子ちゃんが中学生。
ボクと、立場が逆転。
でも、無いか。
園児の嘉子ちゃんには、よく怒られていたっけ。
落ち着きが無いだとか、もっと考えて行動しなさいとか。
嘉子ちゃんのお母さんは、牙狼族でボクの乳母さんだった。
だから、嘉子ちゃんにはボクは小さい妹みたいなもんだったんだろう。
嘉子ちゃんは、お姉さんと同じ看護師になるって言ってた。
みんな、頑張っている。
ボクも、頑張ろう。
「ユウナ、昨日の残り物だけどから揚げ食べな。」
「おばば、ユキは大丈夫?」
「すっかり優しい顔立ちになって、ハクと仲睦まじくしているよ。」
「ユキなら、優しいお母さんになるね。ごちそう様、長はどこ?」
「薪割り、しとるで。」
「ボク、手伝ってくる。」
「危ないから、やめときな。」
「長、ボクにもやらして。」
「おっ、やってみるか?重いでの、ちゃんと腰使わな危ないぞ。」
「うーん、しょっと!わっ、あーあ。」
「まだ、ムリじゃわい。お前の方が斧より、小っこいでの。」
「うーん、やっぱりムリなんだ。結構、鍛えたと思ったのに。」
「ユウナ、薪割り一つでもコツがいるんじゃ。魔力を使うのにも、闇雲でもあるまい。最初から上手い奴なぞ、おらん。そう言えば、お前剣術使いだったな。斧を刀だと思えば、案外上手く行くかもな。」
「じゃあ、もう一回。うん、しょっと!」
「やったー、真ん中からキレイに割れたよ。」
「ようし、その調子だ。そこにあるの、片付けてみろ。」
「ムン、バキッ!ムンッ、カッコン!」
ボクの割った薪を長が、乾燥棚に積み上げていく。
最後の一本、パッコーン!
終わった、調子に乗った。
めちゃくちゃ、腰が痛いし腕がプルプルする。
「ユウナ、えらいぞ。ちゃんと、最後までやり遂げたな。ミミ様の鍛錬終わったら、新しいゲーム機買ってやるからな。」
「本当!ボク、頑張る!」
ユキの様子を見に行くと、温かそうな藁をしいてもらってすやすや寝ている。
起こすのも可哀想なので、ハクを連れ出してランニングに出かける。
あちこち痛いけど、乗り越えないと明日は見えない。
夕方になる前に一度帰って、装備を整えた。
ミューちゃんに声を掛けて、おばばに夜食を貰う。
よし、準備万端!
ミミのお家まで、ひとっ飛びだ。
ミューちゃん、前見えないから耳で顔塞がないで。
「お師匠様、来たよ。」
「おう、ちゃんと来たな。今日は、魔導杖持って行くぞ。」
「やった、大魔法使えるんだ。」
「では、飛ぶからついて来るがいい。」
山を幾つか越えると、大きな沼が見える。
その畔に、降り立つ。
「お師匠様、ここで何するの?」
「今から、わしが影魔術を使う。お前の得意な闇魔術に、応用して使う様に。」
「〈シャドー・イーター!〉」
沼に魔法陣が輝いたと思ったら、只の更地に代わっていた。
「ほえー、お水無くなった。ねぇ、沼はどこに行ったの。」
「〈シャドー・リリース!〉」
前の状態の沼に、戻った。
「すごい!ねぇねぇ、どうやってするん?闇魔術でも、出来るん?」
「時空魔法使えるなら、拡張して使えばよろしかろう。ただ、沼は流動するから固定にかなり魔力取られる。そこで、お前の魔導杖じゃ。」
「そっか、杖に法力集めたらいいんだね。」
「そう言う事、ちょっとは賢くなったな。」
「うん、じゃあやってみる。〈ダーク・イーター!〉やったー、消えたよ。」
「どうじゃ、法力の使い心地は?」
「うん、暖かく身体が包み込まれる感じ。」
「お前の母も、同じ事言うておったな。やはり、親娘だの。」
「そっか、母様の法力は温かいんだ。じゃあ、出すね。〈ダーク・リリース!〉」
「これで、大魔法の使い方は問題なかろう。わしの羽根で作った、解析書じゃ。読み込んで、みなさい。」
ボクは、ミミの羽根を持ち片目を閉じる。
頭の中に、色んな大魔法の使い方が浮かぶ。
そのままでは使えないけど、分解しながら頭に叩き込む。
「お師匠様、覚えたけどちょっと時間かかりそう。やっぱり、属性が違うから?」
「いや、お前が特別なのだ。明日は休みにするで、一度整理するのじゃ。体力作りは、サボるなよ!」
「えーっ、休みじゃないじゃん。」
「とりあえず、休憩じゃ。夜食の用意、しな。」




