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師の教え。

 夕方になる前に、日課の体力作りを終えた。


 ユキは、ミューちゃんと女子会をしている様だ。


 おばばに作ってもらった夜食をハクに括り付けて、鍛錬に行く。


 ボクは、短剣を装備して魔導杖を持った。


 場所はわからないけど、ハクはミミに教えてもらったらしい。


 黙って、ハクの背中に乗る。


 「行ってきまーす!」


 「ハク、ユウナを頼むな。」


 ボクは、信用が無いらしい。


 まっ、ハクはもうすぐお父さんだ。


 峠を越えて、見知らぬ沢に出る。


 その沢伝いに遡ると、祠が見えて来た。


 祠から、ミミが出て来た。


 「ここ、もしかしてミミのお家?」


 「そうじゃ、里の者は山の神様と崇めているがな。」


 「詐欺っぽい、ミミは神様じゃないよね。」


 「何、言うとる。神など、存在せぬのだ。それを名乗っても、詐欺にはならんわ。」


 「えっ、神様いないの?」


 「人が信じる者が、神じゃ。それが、例え一本の木でもな。」


 「外国も、そうなのかなぁ。」


 「あれこそ、詐欺じゃ。金ヅルを逃さぬ為の、方便じゃな。奴らの言う事が正しければ、この世は何度も滅んでおるわ。」


 「ほう、よくわからん。」


 「馬鹿は放ておいて、お主そのオリハルコンどうした?又、甘やかしの長や鬼に買ってもらったか?」


 「イヤイヤ、オリハルコンなんて買える代物じゃないでしょ。これはね、ママがダンジョンで仕留めたの。」


 「ほう、あの聖女がな。だから、覚醒したのか。」


 「凄いでしょ、ボクのママ!」


 「聖女なら、当たり前じゃ。どうせ、お前か鬼がサポートしたのじゃろ。」


 「身も蓋もない、ねぇボク何で覚醒しないの?」


 「子供なんだから、ムリじゃろ。お前は、覚醒しない方が良い事もあるのだぞ。」


 「えっ、どういう事?」


 「覚醒すれば、成長が停まる。今なら、どんどん強くなると言う事じゃ。」


 「さすが、賢者様。何でも、知っているね。それでボクは男の子、女の子どっちなの?」


 「フェンリルなのだから、女に決まっておろう。今さら、何言うとるんじゃ。」


 「フェンリルに、オスはいないんだ。子作り、どうするんだろう?」


 「別に、人間だろうが獣人だろうが魔族でも相手は選ばん。フェンリルが最強なのだから、産まれてくる子はフェンリルじゃ。」


 「ボク以外にフェンリルは、何人いるの?」


 「わしが知る限りでは、おらん。」


 「えっ、ボクだけ…。」


 「さっ、鍛錬始めるぞ。魔導杖は、置いて行けよ。そんな物使ったら、この辺一帯吹っ飛ぶでな。」


 「やっぱり、ボクって魔力多いんだ。」


 「法力な、空中のエネルギーを使うから限界知らずじゃ。」


 「マジ、怖っ!」


 「ほれ、ついてくるのじゃ。」


 ボクは、ハクと共にお師匠様を追った。


 やがて、あまり大きくは無いが立派な滝にぶつかった。


 時が停まった様に、滝全体が凍りついている。


 「ユウナ、お前何故呪文を唱えん。大分、発動を端折っておるじゃろ。そもそも、魔方陣は理解しておるか?」


 「魔方陣って、何?呪文、要るの?」


 「はぁ、そこからか。まぁ、良い。お前の母も、適当だったからな。」


 「母様の魔力って、やっぱり凄いの?」


 「魔力では無く、法力だ。あ奴は、天才だ。」


 「じゃあ、ボクも天才?」

 

 「お前は、お利口さんだな。」


 「もう、子供扱いして!」


 「子供じゃろ、何なら赤ちゃんじゃな。」


 「ムゥ、ボク大人だし。」


 「おねしょ治してから、いいな。」


 「うん…。」


 「それでは、あの滝を溶かす魔術を放ってみなさい。」


 「んと、ファイヤーボムかな?エイッ!」



 ちょっとだけ表面が溶けただけで、びくともしない。


 今度は、ファイヤーストームだ。


 火炎の竜巻が、滝にぶつかる。


 派手な音を建てているが、滝にはさほど影響は無い。


 んー、どうしよう?


 お師匠様を見ると、ハクと一献傾けている。


 しょうがない、あれを使おう。


 「相転移!」


 滝の凍っていた部分が跡形も無く蒸発し、上流から水量は少ないが水が流れてきた。


 「ユウナ、今何をした?」


 「んとね、氷に圧力をかけて沸点を低くしたの。」


 「全く、頭がいいにも程がある。闇魔法じゃな?」


 「うん、ボクの一番得意な属性。」


 「お前、まさか空間魔法も使えるのか?」


 「えっ、内緒だよ。見つかったら、中のお菓子とか玩具取り上げられちゃうから。」


 「はぁ、何と勿体ない!まっ、お主らしいのか。しかし、火属性はあまり得意では無いのじゃな。」


 「夜に火遊びすると、おねしょしちゃうもん!」


 「さよか、それわしが言うたんだったな。」


 「まっ、闇魔法が使えるなら大して問題では無いな。」


 「お師匠様も、使えるでしょ?」


 「わしは、転送くらいしか使えん。何しろ、学校教育受けとらんでな。それに、元々闇に生きているから必要ないのじゃ。いざとなったら、影に潜ればいいでな。」


 「おぅ、忍者みたい。ボクも、影に潜りたい。」


 「ムリじゃ、存在が光り輝き過ぎて影がもたん。」


 「ちぇっ、残念。」


 気付いてないのか、この子は。


 自分が、何であるか。


 ただの、聖獣では無いのに。


 かわいそうに…。


 「ユウナ、何でドライヤー使わんかった?」


 「あっ、そう言えば。」


 「せっかく教えてやったのに、やはりお主はアホじゃな。」


 「でもさ、あんなに大きな滝をドライヤーで溶かそうとは思わないじゃん。」


 「そうか、《ドライヤー》!」


 山肌を覆っていた氷雪が一気に溶けて、雪崩が起きていた。


 「凄!お師匠様、とんでもないよ。」


 ボクは、ハクを抱えてやっと難を逃れた。


 そうか、お師匠様は派手な魔法を使うんじゃなくて自分の魔力で術の底上げしろって言いたいんだ。


 だから、体力作りもさせているのか。


 お師匠様、ボク頑張るよ。


 


 


 


 






 

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