後悔。 3
寮に戻って、荷物の整理を始める。
家具やベッドなどは備え付けなので、それほど手間はかからない。
今日は、寝具の用意と寝巻きの準備が最優先だな。
体調は悪くないが、疲れたのでお風呂どうするかな。
いつの間にか、ベッドの上だった。
すっかり、辺りは真っ暗。
タマのマンションを見ると、電気が点いていない。
又、寝てるか玩具で遊んでいるのかな。
下に降りて、時間を確認する。
もう、10時か。
お風呂は、明日だな。
顔だけ洗って、着替えてちゃんと寝よう。
表が、騒がしいな。
門限ギリギリだな、どうしようかな。
寮母さんが、玄関の外にいた。
「何か、あったんですか?」
「えっと、進藤さんだっけ?そこのコンビニで、若い女の子が襲われたのよ。それで、うちの寮の子じゃないかって先までお巡りさんがね。」
「大丈夫だったんですか?」
「うちは、大丈夫。それにしても、こんな目の前で怖いわね。」
「襲われた女の子は、どうしたんですか?」
「一応、ケガは大した事無いけど待機してる救急車で様子見てるみたい。すぐそこのマンションに、引っ越して来たばかりらしいわ。今、保護者の人来るの待ってるみたい。」
「その女の子って、萌黄色のカーディガン着てませんでした。」
「直接は見てないけど、お巡りさんがそんな事言ってたかも。」
「寮母さん、ごめんなさい。もしかしたら、その子って私の同級生かも。ちょっと、確認しに行っていいですか?」
「えっ、知り合いなの?どうしよう、私も一緒に行くわ。まだ、危ないから。」
「ご迷惑、おかけします。」
お巡りさんに、寮母さんが説明してくれて救急車のそばに来る。
中から、小っちゃい子の泣き声がする。
間違いなく、タマだ。
救急車のドアが開いて、お巡りさんが呼ぶ。
「ウワーン、麻里ちゃん。ウエーン、ウッ、ウッ、アーン!」
私に抱っこされたタマが、泣き止まない。
「タマ、どこか痛くない?ケガは、してない?のど渇いたでしょ、ちょっと待っててね。」
「イヤッ!ウッ、ウワーン!」
「進藤さん、私が買ってくるわ。」
「すいません、果物のジュースを。」
「あのー、どう言ったご関係で。」
お巡りさんが、そばに来る。
先の救急隊員は女性だったが、お巡りさんは男性だ。
タマが、イヤそうに顔を背ける。
「怖くないわよ、お巡りさんよ。私は、この子の幼なじみです。偶々、昨日ここの寮に引っ越して。」
「はい、進藤さん。あら、お巡りさんもいかが?」
「いえ、勤務中ですので。こちらの方は、おたくの寮生さんですか?」
「はい、そうですよ。」
「プッハー、オイチイ!」
「お嬢ちゃん、お巡りさんにお話し聞かせてくれる?」
「イヤッ、ウワーン!」
「タマ、泣いてちゃわからないでしょう。お巡りさん、やさしいわよ。」
「お姉ちゃんが一緒なら、大丈夫かなぁ。」
へっ、私?
「すいません、一緒に話聞いてもらえませんか?」
「寮母さん、どうしましょう?」
「マンションも近いし、連絡先がわかればいいわよ。今日は、その子の面倒見てあげて。」
「ほら、お姉ちゃんも一緒だよ。」
「あのー。」
「はい、そう言えば被害者との関係を聞いてもよろしいですか?」
「同級生です。」
「あっ、あのすいません。」
謝られても、怒りの行き場が無い。
私が老けてるのか、タマが幼いのか。
その後、女性警官も加わって色々話を聞かれた。
その内に、事務所の専務さんが来て私達は解放された。
とりあえず破れた衣服の代わりに着せてもらってたジャンパーを返して、コートを着させる。
犯人が、捕まったらしい。
あの、高橋だった。
努に帰された後、マンションの前で待ち伏せしていたらしい。
コンビニに買い物に来たタマに、催涙スプレーをかけていやらしい事をしたとの事。
すり傷位で、幸いケガも無く貞操も守られた。
あれ、貞操?
なので、タマは訴え無いみたい。
高橋も未成年で初犯なので、勤務先と両親に連絡取って釈放との事。
あの時、帰らずにもう一晩泊まっていれば。
その後、専務さんとタマを連れてマンションに戻る。
急に泣き出した私を、タマが抱きしめる。
専務さんが、温かいコーヒーとミロを入れてくれた。