仮免許合格?
結構、大きなスーパーね。
ホームセンターも、一緒の建物だった。
夫のキッチンは一応道具はあったが、調理した形跡が無かった。
あの人が、する訳無いか。
手早く作れる材料を買い込んで、ホームセンターにやって来た。
シーツやらを洗濯してしまったので、ここで手に入れようと思ったのだ。
あら、クマサンの大きいぬいぐるみ。
今頃、ユウナはどうしているかなぁ?
ママに逢いたいって、泣いてなきゃいいけど。
ヤバっ、私が泣きそうだわ。
娘とは、上京して以来ずっと一緒だった。
何気に、こんなに離れ離れになるのは初めてだ。
最初は、同級生。
次第に姉となり、気付いたら母になっていた。
その都度愛おしさが増えて、あの子無しでは生きていけなくなった。
私たちは、あまり似ていない。
血が繋がっていないのだから、当たり前だ。
だが、どこに行っても親子だと言うと納得される。
それだけ、あの子は私を信頼しているのだろう。
私は、別にあの子にとっていい母親になろうとは思わない。
ただ、あの子の幸せを願うだけ。
夫も、そうなのだろう。
私たち夫婦も、お互い信頼しあっている。
子はかすがいと、良く言ったものだ。
シーツや小物を買い込んだら、結構な量になった。
昔なら、へばる所だけど今なら何とかなる。
しかも、夫のマンションはすぐ向かいだ。
エレベーターに乗り、インターホンを押す。
髪の無い頭を掻きながら、夫が開けてくれる。
「重かっただろう、こちらによこしな。」
「片付いた、何これ?」
歩ける様にはなったが、壁一面にうず高く書類が積み上げっている。
「いやー、やるにはやったんだが。」
「これって、宿舎に持っていけないの?」
「あそこだと、陳情やらで議題の勉強が出来ん。つい、たまってしまうんじゃ。」
「一度、陽介を呼んだ方がいいわね。」
「あの、ドアーフの男の子か。」
「あいつ、こういうのの整理得意なのよ。多分、この量ならフロッピーで小さくまとめてくれるわよ。」
「スマン、わしがそのフロッピーとか扱えんわ。」
「もう、これだから戦前生まれは。私も、扱えないけど。ユウナなら、出来るわよ。」
「あの子は、こういう事は長けているんだな。」
「そうよ、私の娘ですもの。まっ、いいわ。焼きそば作るから、あなたはシーツとカバー取り付けてね。」
焼きそばが、出来た。
もやしとミニウィンナー入りの、簡単な物。
包丁もまな板も無いのだから、しょうがない。
わざわざキャンプ用のアルミ鍋で、作った。
道具を揃えても、夫は使わないだろう。
でも、手作りの温かいのが食べたい。
後は、わかめスープと。
夫は二人前、足りるかなぁ。
「あなた、食べましょう。はい、スーパードライね。」
「すごいな、何も無いのにこんなのが食べれるなんて。やはり、お前魔法使いなんだろう?」
「んふ、そんな訳ないでしょ。冷めるわよ、早く食べましょ。」
夫と籍を入れて以来、二人っきりでゆっくりするのは初めてかもしれない。
「ユウナがいないと、何やら新婚さんみたいだな。」
「あなた、私たちは新婚よ。」
「おう、そうじゃった。子供がいるせいで、何年も連れ添っている様な気がしとったわ。」
「確かに、そうかもね。ユウナ無しでは、私たちやっていけないかも。」
「わしは、麻里だけでも幸せだぞ。」
「ありがとう、あなた。私も、愛しているわ。」
「じゃあ、頑張って二人目も作るか!」
せっかく新しいシーツやカバーに換えたのに、台無しになりそうな二人だった。
お二人さん、ここは田舎のログハウスではないぞ。
壁の薄い、ワンルームマンションだぞ。
翌朝、怠い身体を起こしてシャワーに向かう。
身体を拭いてドライヤーをしている内に、後から入った夫は支度が終わっていた。
ドライヤー、いらないもんね。
朝ごはん食べながら、免許センターに行く事にした。
朝ごはんに連れて来られたのは、卸売市場だった。
なるほど、ここなら早朝からやっている。
私たちが頼んだのは、ハタハタの焼き魚定食。
秋田名物、八森ハタハタです。
お腹にいっぱいブリコを貯えて、美味しそう。
うーん、堪らん。
また来ようね、あなた。
そして、新屋にある免許センターに到着。
今日は、仮免許試験と言う物を受けるらしい。
この為に、夫がわざわざ雪で車庫入れやクランクなど庭にコースを作ってくれた。
程なくして、仮免許の合格証がもらえた。
車で待ってくれていた夫に見せると、抱き上げて喜んでくれた。
もちろん、実家にいる娘にも知らせる。
あいにく、誰もいなかった。
そっか、二人共に仕事だもんね。
お母さんが、今日もスキー場に連れて行ったのだろう。
夫がお祝いに、ステーキをご馳走してくれるらしい。
そして、そのまま青森のフェリー乗り場に向かうって。
新婚旅行よ、北海道をぐるりと一周。
免許センターは、どうせ来年だからね。
ゆっくり、周りましょ。
ママ、二人目は弟がいいな。




