イクママ。
キラキラの店内に、入る。
「もしかして、郁恵ちゃん?」
向こうにいた親子連れが、母に話しかけて来た。
「ありゃ、敏彦君。なんで、こんな所にいるの?」
「仕事がヒマになったんで、家族と帰省を兼ねてスキーに来たんだ。うちの嫁の香と、娘の由香だ。前に、会った事あるよね。」
「香さん、お久しぶり。由香ちゃん、大きくなったわね。うちの娘の麻里と、息子の慎吾よ。後、孫の悠那よ。悠那は、初対面ね。」
「孫?おっ、ユウナ!本当に、小っこくなったなぁ。」
「シャチョサン、シゴトヒマナノ?」
お前は、フィリピンパブのホステスか!
「ユウナ、知ってるの?」
「うん、事務所の社長。三浦のおばちゃんの、甥だよ。」
「お久しぶりです、悠那の母の麻里です。いつも、娘がお世話になっております。」
「いやー、こちらこそ。悠那には、だいぶいい思させてもらったから。」
「あっ敏彦君、三浦さんの甥っ子だったか。ユウナの事務所の、社長だったの?あの、洟垂れ小僧がね。」
「同級生なんだから、洟垂れ小僧は辞めてくれよ。しかし、こんなに大きな娘さんがいたなんて。しかも、孫娘が悠那だとは思わなかったよ。って言うか、ちょっとおかしくないか?」
「聞いてないの、悠那の父親と麻里が結婚したんだよ。」
「へぇ、こんなに若くて綺麗なお母さんなんて羨ましいな。」
「敏彦君、隣の綺麗な奥さんに怒られるわよ。」
「慎吾君、悠那ちゃんの事好きなの?」
突然、由香ちゃんが爆弾発言をした。
モジモジする、ユウナ。
オイッ!
「ユウナは、オレのかわいい妹だ!」
えっ、婚約者じゃないの?
ユウナが、プルプルしている。
「良かったわね、由香。貴女も、ユウナちゃんに優しくするのよ。」
「うん、ママ!」
「慎吾!」
「何だよ、姉ちゃん?」
こちらを見た慎吾が、慌て出した。
ユウナが、泣いている。
「あれっ、ユウナちゃんも慎吾の事好きなの?お兄ちゃんだから、取られるのいや?私がお姉ちゃんになったら、いっぱい優しくしてあげるから安心して。」
由香ちゃん、大人だわ。
それに比べ、うちの娘は。
あんた、大学生やろ?
それにしても、慎吾!
二股か、それがお前のやり方かー!
「ユウナ、違うからな。お兄ちゃんは、ずっとお前と一緒だからな。」
「お兄ちゃんなんか、大っ嫌い!ばーば…、ワーン!」
ユウナの事を知る敏彦さんは、複雑な顔をしている。
ばーばに抱きついたユウナを見て、由香ちゃんとママさんは気まずそうだ。
大好きなお兄ちゃんを取り上げたと、思っているのだろう。
「敏彦君、孫がこんなだから後でね。私、スキー場で働いているから声掛けてね。」
「何か、済まなかったね。慎吾君、モテモテだね。」
「由香ちゃん、又遊びにおいでね。」
「はい、ユウナちゃん泣かないでね。お兄ちゃんと、仲良くしてね。」
「ビェーン、ア~ン、ウワーン!」
私達は、一旦店を出てベンチに腰かけた。
私は、ユウナのお尻を自分の膝の上に乗せて何度も叩いた。
「痛いっ、お母さん痛い!アーン、ウワーン!」
「麻里、やめなさい。こんな所で、周りが見てるわよ。」
「姉ちゃん、オレが悪いんだ。そのくらいに、してやってくれよ。」
「はぁ、私の娘よ。私が、何しようと関係ないでしょ!」
ユウナを抱き起こし、顔を近づける。
「お母さん、ボクの事嫌いなの?グスン…。」
「えぇ、嫌いよ。もう、何でも自分の思い通りになると思ったら大間違いよ。」
「そんなの、思ってないもん?お母さんの、バカ!」
私は、ユウナを胸に押し付ける。
「ユウナ、あなたはもう大人なの。だけど、それを自分の都合のいい様に使ったら駄目でしょ。お母さんは、あなたの無邪気な所は好きよ。でもね、独りよがりの無邪気はただ周りを傷つけるだけよ。わかる?」
「う~ん、難しいよ。ボク、わからないよ。」
全く、お前のいい頭で少し考えてよ!
「ばーばやお兄ちゃんが、困ってるでしょ。ユウナは、それでも楽しい?」
「ううん、楽しくない。」
「少しずつ、考えていきなさい。慎吾も、お願いね。」
「あぁ、済まなかったユウナ。オレも、ちょっとずつ教えていくよ。」
母が、あんぐりしてた。
「さすが年の功だね、麻里。」
「ちょっと、母さん!」
「ばーばって、イクエって言うの?」
「そうよ、家族に恵まれているのよ。ユウナも、私の大切な孫娘よ。」
「う~ん、イクママありがとう。」
「へっ、私の事?」
「うん、だって由香ちゃんのお母さんより若くてかわいいんだもん!だから、イクママ!」
「どうしよう、麻里。私、明日死んでるかも。」
「いやー、イクママずっとユウナと一緒にいて!」
こいつは、先言ったばかりなのに。
どうしたらいいのよ、文太君。
慎吾は、一貫してユウナのお兄ちゃんでしたね。




