新婚さん、いらっしゃい。
夕飯は、ちょっとがっつり目にしようかなぁ。
冷凍庫にあった猪肉を、りんごと生姜に漬け込んで。
それから、ミズって言う山菜のたたき。
舞茸と手羽元の、煮込み。
後は、ユウナの好きな筋子。
そして、買って来た葉物をシーザーサラダにしました。
そろそろ作業も終わりそうなので、姫竹のお味噌汁を温めて猪肉のショウガ焼きも用意する。
「美味しそうだね、お母さん。」
「ちゃんと手を洗ってらっしゃい、ユウナ。お父さんは、まだ?」
「じっちゃん、重機に燃料入れてる。すぐ、来るよ。」
「手洗ったら、手伝ってね。」
フライパンを洗っていると、ユウナが戻ってきた。
「置いてあるの並べて、お椀と箸も出しておいて。」
「ほーい、じっちゃん帰って来た。」
「ええ匂いが、するの。おぉ、ご馳走じゃな。」
「早く、手洗ってきてよじっちゃん。」
「ユウナ、そのじっちゃんって呼ぶの辞めない?お父さんって、呼びな。」
「何で?」
「私がお母さんで、文太君がじっちゃんだとおかしいでしょ。」
「確かに、でも呼びにくいなぁ。ずっと、じっちゃんだし。じゃあ、パパって呼ぼうかな。」
「それは、それでどうなの。」
「似合わないね。」
「何が、似合わないって?」
「お父さん、ユウナは幸せだよ。」
「改まって言われると、照れるの。」
「二人共、ちゃんと慣れなさい。じゃあ、食べましょ。」
【いただきま~す!】
「おいしい!このショウガ焼き、すごく柔らかい。」
「ユウナ、サラダも食べなさい。」
「ミズのたたき、旨いな。麻里は、料理上手だな。鍛えないと、たちまち太りそうだ。ユウナは、それで大きくなったのか。」
「そうだよ、お母さんは何作ってもおいしいんだから。」
「ユウナも、お母さんに料理教わっているのかな。」
二人の顔が、沈む。
「ユウナも、少しづつね。」
「うん…、ボクねフルーチェが得意なんだ。」
「フルーチェって、何だ?」
「今度、作ってあげるねお父さん。」
「あぁ、楽しみにしているよ。」
「ねぇ、あなた。何で、工事しているの?」
「いや、増築しようと思ってな。客間を作ろうと思って。」
「民宿でも、始めるの?」
「今、麻里が客間を使っているだろ。そのまま、使ってもらうとして。新たに、客間を作ろうと思ってな。」
「フーン、ソーナンダ!ユウナ、荷物まとめなさい。お母さん、実家に帰るわ。」
「何だ、何だ?いったい、どうした?」
「お母さん、今すぐ?」
「すぐよ、ユウナはお母さんの味方でしょ?」
「ユウナ、わし何かしたかなぁ?」
「お父さん、最低!お母さん、泣いてるよ。」
「えっ、悪かった。謝るから、許してくれ。」
「何が悪かったか、わかっているのお父さん?」
「さっぱりじゃ、ユウナはわかるのか?」
「ボクに聞く?」
「麻里、教えてくれ。なんでも、直す。気に入らん事があったら、何でも言ってくれ。」
「お母さん、お代わり!」
「ふー、珍しいわね。又、筋子ばかり食べて!」
「なぁ、わしもお代わり。」
「あなた!私は、妻ですよね?お客様じゃないのよ。」
「済まん!後で、ちゃんと話そう。こればっかりは、わしの思い違いだ。ユウナが寝てからな、麻里。」
「お母さん、真っ赤か。」
「うるさい、早く寝なさい。」
「ボクの、お代わりは。」
「もう、はいあなたも。」
「ユウナは、寝たのか?」
「絵本を読んであげたら、すぐにね。」
「そうか、済まんなぁ。子供の世話まで、押し付けて。」
「あなた、謝ってばかりよ。」
「うん、現実味が無くてなぁ。あのお嬢様が、わしの中に居るなんて。」
「私は、ユウナの母だけどあなたの妻なのよ。もっと、私を見て。」
「おいで、麻里。」
二人の時間が、ゆっくり流れて行く。
体格差を考慮して、腫れものの様に扱う文太。
しかし、麻里は貪欲だった。
今まで見た事も無い大きさに慄くが、耐えた。
それを大切に扱う、文太。
満足気にベッドに横たわる、二人。
これで、夫婦円満だろう。
翌朝、起きてこないユウナ。
シーツに、世界地図が。
「グシュ、ワーン、ウワーン!」
「ユウナ、シャワー浴びて着替えてきなさい。」
「ゴメンナザイ、お母さん。ワーン、ウエーン!」
「どうしたの、トイレ行かなっかったの?」
「だって、怖いんだもん。真っ暗なんだもん!」
「怒ってないから、大丈夫よ。」
これは、これで問題だな。
早く、一人で寝られる様にせねば。
母は、新婚なのじゃ。




