飲み屋。
「たまには、外で飯食うか?」
「じっちゃん、どこに行く?」
「庄のやに、行くかな。」
「聞いた事、無いね。」
「最近出来た店でな、どっかの料亭で修業して来たらしいわ。ほれ、前に飯田呉服店があった所じゃ。」
「あぁ、あそこね。じっちゃん、運転代わって。飲むでしょ?」
「ふむ、ではギルドに先に寄るか。」
ベア以外の魔石を換金して、じっちゃんが帰って来た。
「何それ?」
「ワンコの餌じゃ。骨やら、干し肉なんかじゃな。ギルドなら、安くなるからな。」
「では、麻里ちゃん狭くて済まんな。」
「お姉ちゃん、じっちゃんに抱っこしてもらえば。」
「もう、ユウナ!」
駅前に車を停めて、シートバッグをごそごそする。
「じっちゃん、まだ早いからスフィンクスに行こう。お姉ちゃん、はい。」
着替えの入った袋を渡されて、キョトンとする麻里。
「ユウナ、久しぶりに一緒に入るか?」
「やだよ、誰かいたら恥ずいもん。」
「ユウナ?」
「温泉だよ、駅の中にあるんだ。」
「へぇ、同じ町なのに知らなかった。」
大人一人300円、露天風呂まであってお安い。
中に入ると、まだ暗くなっていないからか誰もいなかった。
大きな浴槽が二つと、洗い場。
奥の扉を開けたら、露天風呂らしい。
先に、シャワーでダンジョンの汗を流す。
浴槽に入ると、じんわり温かくて身体に染みわたる。
「イエーイ、バシャッバシャッ!」
「ユウナ、泳がないの!」
「ウッサいな、ババァ…。」
「何ですって、今何か言った!」
ユウナが、角に追い詰められ浴槽に沈んで行く。
「ブクブクッ、ンパ~!死ぬ、助けて!ごめんなさい、お嬢様!」
「あんた、時々本音が出るわね。ババァって、いつも思っているんでしょ!」
「露天風呂、いこお姉ちゃん。」
もう、人の話聞かない。
「ふぅ、いいお湯だった。」
髪を乾かして、フルーツ牛乳を飲んでいると文太君が拗ねていた。
「じっちゃん、もうワンカップ飲んでんの?」
「待ちくたびれたわい、おなごの湯は長いの。」
「文太君が、できあがる前に行こう。」
お店は、駅から徒歩で2分すぐそこだった。
カウンター席と、テーブルに奥には小上がりがあって感じのいいお店。
私達は未成年なので、山ぶどうジュース。
文太君は、生の大ジョッキ。
【乾杯!】
山ブドウジュース、美味しい。
一杯、千円です。
天然の山ブドウ100%なんだって!
突きだしは、じゅんさいの酢の物。
私達は開店直後に来たので、二組目のお客が来た様だ。
「あっ、学兄ちゃん。」
「おっ、居ったのか。お疲れ様です、おやっさん!」
「おう、お前等もこっちに来て座れ。」
お前等?
「あっ、由美先輩。なして、この野獣と一緒?」
「久しぶり、タマちゃん。相変わらず、めんこいな。あら、進藤さん?」
「はい、お久しぶりです。由美先輩、こっちに残ってたんですね。」
「おっ、由美と知り合いか?」
「そうだよ、高校の一コ上。なして、学兄ちゃんと一緒なのさ?」
「あぁ、おやっさんの会社で一緒に働いているんだよ。由美、ユウナは俺の甥っ子だ。」
「甥っ子?姪っ子でしょ?」
「うん、お前いつから女になったんだよ。」
学兄ちゃんは、じっちゃんの妹の息子。
鬼族のハーフで、ボクのおじさんだ。
小さい頃から面倒をみてもらっていたので、ずっとボクの事を男として疑っていない。
東京の大学を出て向こうで修業して、こっちに戻ってじっちゃんの会社の跡継ぎとして頑張っている。
脳筋で男臭い学兄ちゃんが、由美先輩を連れているのは似つかわしくない。
「俺、来年由美と結婚するからな。ユウナ、ちゃんと叔母ちゃんに挨拶しな。」
「えっ、えぇ~!」
「いいの、由美!こんなお馬鹿で、がさつなクマで。」
「おい、ユウナ?」
「タマちゃん、素に戻っているわよ。叔母ちゃんは、大丈夫よ。進藤さん、義姉妹ね。盃を交わしましょ。あなた、タマちゃんのお母さんでしょ。」
「なっ!」
「違うよ、麻里お姉ちゃんはじっちゃんのお嫁さんだからお祖母ちゃんだよ。」
「ユウナ、本当か?おやっさん、やるねぇ!」
「うん、あぁ…。」
「ユウナ、誰がばあちゃんだって!ふだんから言わせておけば、クソババァだの。ちょっと、そこに直りなさい!」
「ふふふ、タマちゃん面白い。私の事は、叔母ちゃんでいいわよ。」
「うん、叔母ちゃん!」
「それで、麻里ちゃん。実際、どうなん?おやっさんの事。」
「どうって言われても…。」
「うるさい!学、飲め!今日は、最後まで付き合えよ!」
「うわぁ、絡み酒かよ。」
「とりあえず、学兄ちゃんと由美先輩の結婚を祝して乾杯!」
【乾杯!】
いいタイミングよ、ユウナ。




