洞窟ダンジョン。
その夜は、おじいさんが釣って来た鮎を食べた。
私の、大好物だ。
季節になると、自宅に大量に差し入れてくれる。
両親も好物なので、大喜びだ。
「ユウナ、狩りはどうじゃった?」
「あまり深い所には言ってないけど、魔物が少ないね。何で?」
「ダムが出来てから、獣が人里に降りる様になった。餌が無いから、魔物も減ったのじゃろう。」
「まっ、おかげでお姉ちゃんも慎吾もゆっくりダンジョン楽しめたけどね。」
「麻里ちゃんは、もうすっかりお姉ちゃんなのだな。甘えん坊じゃが、よろしくお願いします。」
「ふふふ、じゃあ私もおじいさんに甘えますね。」
「この中では、わしが一番年下じゃがな。ワッハッハ!」
「レディの前で、歳の話は禁物ですわ。」
「じっちゃん、だから嫁が来ないんじゃね。」
「放っといてくれ!」
「今からでも、頑張りなよ。お姉ちゃん、どう?」
「どうって…。」
「大人をからかうもんじゃない。」
「だって、じっちゃんとお姉ちゃんは幼なじみでしょ。じっちゃんは、鬼族だからボク等より早く大人になったけど。今でも、お姉ちゃんが好きなんでしょ?」
「えっ、鬼族?じゃあ、あの時の文太君?立派に、なって。」
「この年になると、照れるのぉ。これ以上は、年を取らんがな。」
ユウナはじっちゃんと呼んでいるが、実際はまだ見た目30代の青年だ。
実際は、80歳になるかな位だが。
対して私達は、物心つくまでかなり時間がかかる。
恐らく、悠那はもっとだろう。
そして鬼族は、身体強化に優れており早めに成長する。
麻里が幼かった頃は、近隣の暴れん坊として有名だった。
しかし、麻里の本当の両親に預けられてからは勉学や修行に励み今日の成果になった。
特に、麻里に対してはお姫様に相対する様に憧れを抱いていた。
「ボクは、お姉ちゃんがばっちゃんになってもいいよ。痛っ、痛た!」
ユウナのこめかみに、思いっきりグゥをめり込ませた。
「明日も、撮影か?」
「ううん、明後日から。うぅー、まだ痛いよ。」
「ちゃんと躾がされている様で、安心したわい。明日は、坑道に潜るか。ボス部屋があれば、いいのだが。」
「ボス部屋って、覚醒出来る所でしょ?私が行っても、大丈夫かしら。」
「心配は、要らんよ。わしとユウナが、居る。それと、わんこ達もな。」
「お姉ちゃん、行こう!」
「うん、頑張るわ!」
「それじゃ、早めに風呂入って寝るかの。温かったら、追い焚きするんじゃぞ。」
「はーい!」
翌朝早めにユウナをたたき起こして、支度をする。
今日は、坑道に潜るので強力なサポートメンバーがいる。
文太おじいさんの頭の上、高みからそれは見下ろしてくる。
「ヴゥー、ヴッ、ブッ!」
そうです、うさぎのミューちゃんです。
ミューちゃんは、毒検知や暗視索敵に優れた魔物だそうだ。
罠があれば、発見や解除もしてくれるらしい。
おじいさんの頭の上で、ドヤ顔で人参スティックを食べている。
食べ終わると、私の胸にダイブして来た。
「ふふふ、くすぐったいよミューちゃん。」
「ミューちゃん、お姉ちゃんのおっぱいはボクのなんだからね。」
「まだ、おっぱいなのか?ユウナ、少しは大人になれよ。」
「ムムッ、じっちゃんもお姉ちゃんのおっぱい見てたじゃん!」
「イヤー、まぁそろそろ出るぞ!」
麻里も文太も、耳まで真っ赤っかだ。
意外と、ありなのか?
車で川に沿って南下すると、山が深くなる。
更に支流の渓谷を遡り、鍵付きのゲートをしばらく入ると蔦に絡まった入り口らしき物が見えた。
ここは、昔銅山として栄えた所だ。
200年程前に廃坑になったが、この近隣で国内の半分以上の銅鉱石を算出していた。
私の両親は、ハイエルフとして鉱脈の探索や選別を指導してこの界隈では神の様な扱いを受けていた。
そう、あの頃までは。
「よし、入るか。先頭はわしとミューだな。真ん中が麻里ちゃんで、最後尾はユウナだ。麻里ちゃん、この短弓を使ってくれ。」
「これは…。あっ、矢が何もない所から。」
「お主の両親から、預かった物じゃ。いつか、こういう日が来ると思って少しづつ魔力を込めておった。」
「ありがとう、文太君。大切に、するわ。」
麻里が、文太に抱きつく。
今度は、ユウナとミューが真っ赤っかになってしまった。
ミューちゃん、白うさぎだよね。
そんなこんなで、洞窟ダンジョン突入。
ユウナの背中に、何やら物騒な物が。
「ユウナ、それってもしかしたら真剣?」
白刃の剣が、抜かれる。
「綺麗でしょ、備前長船だよ。」
綺麗だけど、禍々しい。
やはり、相当危険が伴う様だ。
気を引き締めて、行こう。
「ちょっと、待って!ボク、オシッコ。」
緊張感も、何もない。
「麻里ちゃんも、行ってくれば良い。多少汚れているが、あの建物の1階がトイレじゃ。」
はぁ、行ってこよう。




