風穴。
昨晩、あれだけ説教したのに全く懲りていない。
今日も朝から、二人はイチャイチャしている。
「ユウナ、ほら歯磨き粉がついたままだぞ。ペロッと、これでよし。」
「ありがとう、慎吾。」
頬に手を当てて、モジモジする。
「おい、ユウナ!」
「わっ、お姉ちゃん。どっから、湧いたの?」
「人を虫みたいに、言うな。お前は、昨日何聞いてた。」
頭に?マークを乗せて、惚けるユウナ。
「朝ご飯よ、早く食べないとお迎え来ちゃうわよ。」
「もう、早くご飯食べるわよ。慎吾も、学校遅れるわよ。」
「麻里、泊まるの今日だけなの?」
「うーん、わかんない。でも、着替えは三浦さんが用意するから要らないって。勉強出来る様に、本だけ持って行くわ。」
「あら、お迎えに来たみたいよ。」
三浦さんと母が挨拶している間に、準備して出掛ける。
機材とスタッフさんは、もう一台別に付いて来る。
こちらは、キャンピングカーだ。
衣裳さんが、運転している。
更衣室替わりに、使うのかな。
ギルドがある村の山をどんどん、登って行く。
到着、風穴だって。
中は、夏でも寒いくらいだ。
今回の撮影は、某RPGゲームの販促ポスターを作るとの事。
私にまで、出演依頼が来た。
両親には心配かけない様に、ユウナの付き添いって言ってある。
けれど、初なのに私がメイン。
出演料も、見た事無い数字だった。
今、ゲーム業界はうなぎ登りに景気がいいんだって。
私は、修道女みたいな格好にキレイに装飾された杖を持たされた。
ユウナは、革の鎧風に頭に鉄っぽい鉢巻き状の物を被っている。
ユウナが勇者で、私が聖者らしい。
三浦さんが、私をべた褒めする。
イメージ通りだって、これでスポンサーから上乗せをふんだくれるって喜んでた。
撮影場所が風穴だけに、これだけ着込んでも暑くない。
午前中で撮影は終わり、私はお役御免。
ユウナは、別の撮影が明後日から始まるとの事だ。
今日は、村に戻ってギルドに言付け。
おじいさんも昼過ぎに帰って来るとの事なので、待っておいてもらう。
それまで、私達は国道沿いのドライブインにお昼を食べに行く。
ここは、熊や鹿などジビエ料理が食べれる。
ユウナが、熊のルイベを注文していた。
「ルイベって何、ユウナ?」
「熊の刺身だよ、凍らせて薄くスライスしてニンニク醤油で食べるの。」
「美味しいの?」
「食べたら、わかるよ。」
それから、鹿のステーキやら雉の汁や食べた事無い物が並ぶ。
「ウワー、美味しい!何なの、全然獣臭く無い。野性味って、この事よね。」
「ギルドのみんなが、ちゃんと処理しているからね。」
「そう言えば、ユウナも解体してたわね。熊とかでも、出来るの?」
「うん、何でも出来るよ。小さい頃から、やっているから。」
「そりゃ、年季入ってるわ。」
「お姉ちゃん!」
あら、要らない事言うてもうた。
私達、ヤングでーす。
何ジト目で見てんのよ、ユウナ。
「おばちゃん、明後日の朝ギルドに迎えに来て
。」
「わかったわ、麻里ちゃんはその後どうする?」
「んー、お家に帰ります。おじいさんに、ギルドのついでに送ってもらうので気にしないでください。」
「あら、そう。せっかく、逸材が手に入ったのに。」
今回だけ、まだ契約してませんよ。
ふぅ、危ない。
大学、行けなくなるわ。
とりあえず、課題片づけよう。
「じゃあ、行こうか。」
「あっ、じいちゃん!」
「多分、ここじゃろ思うてな。世話になっとるの、三浦さん。」
「いいえ、とってもいい子にしてますよ。麻里ちゃんも、良く面倒見てくれますし。」
「済まんの、麻里ちゃん。」
「いいえ、ユウナは私の妹ですから。」
「お前も、みんなに感謝せんか!」
「ありがとうございます、皆さん。」
そして、おじいさんの軽トラでユウナの実家に向かう。
「おばちゃん、バイバイ。みんなも、又ね。」
しばらくして人気の無い道を進むと、可愛らしいログハウスが見えて来た。
ユウナを預かる際に、おじいさんが自力で建てた家だ。
おじいさんは、狩りが無い時は建築の仕事をしている。
こう見えて、著名な一級建築士だったりする。
大館で今建設中の木造ドームの設計も、おじいさんだ。
ログハウスに入る前に小屋へ赴くと、二頭の秋田犬が出て来た。
「ただいま、ユキ、ハク、元気だった?」
ひとしきり嬲られたユウナが、満足げに帰って来た。
「さっ、麻里ちゃんもユウナも入んなさい。」
わっ、ビックリ!
玄関開けたら、2秒でクマの剥製。
それにしても、涼しい。
都会と違って、空気の清涼感が半端ない。
ユウナがテキパキと、お茶の用意をする。
おじいさんの、前だもんね。
「どうじゃ麻里ちゃん、向こうの生活は?」
「落ち着いてますよ、ユウナも学校とお仕事ちゃんと両立させてますし。」
「そうか、感謝しとるよ。麻里ちゃんが一緒で、わしも安心出来る。」
「私こそ、ユウナのおかげで楽しいですから。」
「じっちゃん、燻りがっこ切ったよ。」
「ユウナ、ずいぶん厚切りだな。」
「てへへ!」




