お泊まり。
「よかった。」
「どうしたの、タマ?」
「うん、ずっと一人ぼっちだったから。」
「ミュウちゃんが、いるじゃない。」
「ミュウちゃん、あまりかまってくれないもん。」
「そっか、なるべく遊びに来るね。事務所も、誰か一緒に住まわせればいいのに。」
「小っちゃい事務所だから、それに本当は音楽事務所だしね。」
「えっ、そうなの?私も、何かバイトさせてもらおうと思ったのに。」
「麻里ちゃんなら、普通にモデルさんできるよ。後でいい所紹介できる様に、マネージャーに頼んでみるよ。」
「そんなに、本格的じゃなくてもいいわよ。」
「ダメだよ、麻里ちゃんかわいいんだから。」
「まあねぇ!」
「ンフフ。」
「笑ったな、お腹空いたわね。」
「びっくしドンキー、行こう。街道沿いに、あったよ。」
お子ちゃま大人気の、びっくりドンキーです。
「じゃ、行こうか。あんた、何でスカートに履き替えてるの?」
「僕、これ以外スカートしか持ってない。」
「もしかして、高校の制服もあったりする?」
「あるよ、衣装部屋に。」
「誰の為?」
「思い出だよ…。」
「ふーん、私達より短いので学校来てたでしょ?」
この子が、男物を着ているのなんて写真でしか見た事が無い。
大丈夫かな、大学生活。
びっくりドンキーに着くと、タマがイチゴみるくをすぐ注文した。
「ご飯も、食べなさいよ。」
「麻里ちゃんの少し、分けて。後、僕コーンスープ。」
女子か!
確かに目の前にいるのは、少女だけど。
注文が届くと、店員さんに子供用のお椀を用意してもらう。
相変わらず、食が細い。
「タマ、明日は仕事?」
「ううん、昨日までずっとウェディングモデルしてたからしばらくお休みだよ。入学準備も、あるし。」
「タマが、ドレス着たの?」
「僕が、タキシード着てもね。」
ですよねー。
「タマ、こっち来てから誰かに会った?」
「うん、正孝と小松に会った。」
正孝は、同じ剣道部。
小松は、執拗にタマに嫌がらせをしてた奴だ。
「どこで?」
「川口の、ガソリンスタンドで。二人供、そこに就職したみたい。」
「タマ、何でガソリンスタンド行ったの?あんた、免許持ってないでしょ?」
「へっ、ンとねマネージャーさんと一緒に…。」
タマが、オドオドしている。
「怒ってないから、本当の事言いなさい。」
「陽介の車でガソリンスタンド寄ったら、偶々いたんだ。」
あの開業医の、ボンボンか。
医大に落ちて、予備校に通っているらしい。
金持ちを笠に着て、いけ好かない野郎だ。
見た目もブサイクだし、スポーツも苦手。
いい所なんて、お金以外何も無い。
だが、タマの前では違うらしい。
多分、タマが死ねって言えば簡単に死ぬ。
タマは、言わないけど。
「それ、いつ?」
「昨日の夜。」
だから、今日ラブホに行った時ナプキンしてたのか。
タマに、無茶しおって。
許さん!
「麻里ちゃん、チーズが飛び散っているよ。」
「あぁ、もうちょっと食べる?」
「いらない、お腹いっぱい。アイス、頼んでいい?」
お腹いっぱい、じゃないのか?
デザートは、別腹ね。
やっぱり…。