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上京 2

 「麻里ちゃん、どこの学校に行くの?」


 「内緒!」


 「ここに、住むの?」


「そうよ、学校の寮があるの。聞いてばっかりね、気になる?」


 そうでも、ないみたい。


 リモコンを操作して、アンパンマンを見出した。


 タマは、両親がいない。

 

 マタギって言う猟師のおじいちゃんに、育てられた。


 タマが小さい頃、マタギを題材にした映画のロケが街にやって来た。


 タマのおじいちゃんが、技術指導として関わったらしい。


 そこに来ていた衣装デザインの人が、撮影について来たタマをスカウトした。


 俳優では、ない。


 モデルと、してだ。


 ファッションモデルでは無く、商業モデルとしてだ。


 男女どちらでも出来て、ある程度容姿の整ったタマは重宝するみたいだ。


 事務所は上京させようとしたが、おじいちゃんが許さなかった。


 妥協案として、山奥の家から空港近くの街に引っ越す事で解決した。


 有名人になる訳でも無いし、お仕事は事務所の人がスタジオ兼タマ達の住まいとして用意した家で事足りた。


 需要があるみたいで、年々タマの仕事は増えた。


 大学の学費と生活費を事務所が負担する事で、おじいちゃんの許しが出たとの事。


 おじいちゃんは、山奥に帰ったらしい。


 ちなみに、おじいちゃんとタマも血は繋がっていない。


 山で猟をしている時に、おじいちゃんに拾われたらしい。


 本人も、知っている。


 タマは、あだ名。


 まん丸だから、タマ。


 みんな、そう呼んでいる。


 本名は、何だっけ?


 私は、麻里。



 タマとは、中学から一緒。


 初めて会った時、タマは英則君に肩車されていた。


 入学式で、迷子になったみたい。


 おい…。


 肩車されながら、泣きベソをかいていた。


 英則君、損な役回りね。


 ジャイアンみたいな風貌で、性格もまんまなのに。



 「麻里ちゃん、寮ってどこ?」


 「蕨だって、知ってる?」


 首を傾げる、タマ。


 知らない、みたい。


 「入学式は、いつなの?」


 「来週の、水曜日よ。まだまだ、先ね。」


 「僕の学校と、一緒だ。」


 「同じ学校だもの。」


 「ふぇっ、同じ?」


 「そうよ、学部は違うけどね。」


 「やった、一緒!」


 「タマ、住むところ決まった?」


 「うん、戸田ってところ。近いよ、買い物終わったら一緒に行こう。」


 「一人暮らしなの?」


 「うん、日曜日だけマネージャーさんが泊まりに来る。」


 相変わらず、過保護な事務所さんだ。


 「お金は、どうしてるの?」


 「日曜日ごとに、十万だけくれる。あまり、使わないけど。」


 おい、どこのお坊ちゃまだよ!


 「ねぇ、マネージャーさんって女の人?」


 「うん、事務所の専務さん。おばあちゃんみたいな人。」


 今日は、金曜日。


 会う事は、無いか。


 着替えて、又街をブラブラする。



 この街は、風俗街で有名みたいだ。


 あまり、いい環境では無い。


 タマには、関係ないか。


 二人で歩いても、それっぽくはない。


 親子とは言わないが、姉妹みたいな感じだ。


 「タマ、努と連絡取ってる?」


 「ううん、近くの土建屋さんに就職したって聞いたけど。」


 努は、工業高校の番長だった人。


 うちの剣道部の主将だった久美子の、彼氏だった。

 

 だったと言うのは、努君達不良とデート中に車の転落事故で亡くなったのだ。


 しばらく努君は、タマにすがっていたらしい。


 ケンカも弱くて運動神経も悪いタマと、うちの地元最強と言われる努君との繋がりはわからない。


 ただ、努君が一度だけケンカで負けた相手はタマとの事だ。


 何かの、冗談でしょう。


 最後に本屋に寄って、タマが絵本を買っていた。


 少し歩くと、タマのマンションに着いた。


 マンション自体、カードが無いと入れない。


 セキュリティは、バッチリだ。


 エレベーターで、最上階に降りる。


 東南の角部屋、2LDK。


 一人暮らしにしては、広すぎる。


 原因は、これか。


 広めの部屋が、衣装部屋になっていた。


 その半分に、おもちゃが散らばっている。


 リビングは、あまり使っていない様できれいだった。


 寝室も、あまり使っていない。


 衣装部屋もとい、おもちゃ部屋にキッズルームがある。


 ここで、生活してるッぽい。


 なんて、もったいない。


 




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