上京
私は、大宮駅で乗り換えて西川口の駅に降りた。
ここから、進学先の学校の寮に向かう。
学校は都内だが、寮は埼玉の蕨市にある。
朝夕二食付きで、6畳一人部屋。
トイレと風呂は共同だが、寮なら当たり前。
寮費は、4万。
親も、安心だと思う。
入学式まで、まだ日がある。
日用品を買いがてら、近くを散策する事にした。
住所は蕨市だが、最寄り駅は学校の関係上西川口になるらしい。
まず、駅で学校までの定期を購入する。
その後、近くのイトーヨーカ堂に来て見た。
私の田舎では、これほど大きなお店は見た事がない。
なんでも、揃ってる。
ある程度は、実家から送ってもらったのでとりあえずお菓子やジュースを買おう。
あっ、いたいた。
私と同じ学校から進学した、タマ。
駄菓子コーナーの前で、ウンコ座りをしている。
「欲しいのあったら、買ってあげようか?」
「ふぇっ、麻里ちゃんだ!なして、ここにいるの?」
「買い物よ、今日こっちに着いたの。タマは?」
「僕も。麻里ちゃん、ここら辺に住むの?進学だっけ?」
私が同じ学校だと、知らないらしい。
それにしても、その格好。
田舎に比べれば暖かいけど、まだ3月だ。
半袖のパーカーとショーパン、ハイソックスだからそこまででは無いけど。
相変わらず、お子ちゃまだ。
中性的で、違和感は無いけどね。
これが、私の初恋相手なのだ。
背も、私より低い。
体格は、ややぽっちゃり。
太ってはいないけど、プニプニしている。
これで、全日本選手権初の高校生覇者の剣士だと。
高校生だと言うのにって事で、一時期騒がれた。
なのに、どこからも剣道でのお誘いは無かったみたい。
新聞の見出しが、天才キッズ現れるだもんね。
「お菓子ばっかり、買っちゃダメよ。」
「うん、麻里ちゃんこれからどうするの?」
「うーん、お昼ご飯食べに行きましょ。タマちゃん、時間ある?」
「うん、大丈夫。」
お店を出て、西口のラブホ街へと向かった。
ランチ付きのところがあったので、そこでゆっくりする事にした。
二人でお風呂に入って、まず一戦。
そして、備え付けの浴衣着で注文したランチを食べる。
ラブホの割に、美味しい。
私達は、恋人ではない。
ただの同級生で、同じ剣道部員だった。
タマちゃんは、誰とでも寝る。
老若男女、問わずだ。
非常識だと言う自覚は、本人に無い。
モテている、訳でも無い。
確かに、容姿は悪くない。
かといって、美少年でも無い。
私は、自分で言うのもなんだがかなり美少女だ。
今日も、何度かナンパされた。
高校時代も、よく告白されてた。
一度も、男性とは付き合った事はないが。
かといって、陰キャでも無い。
クラスでは、上位カーストだった。
ただ、タマちゃんは私達上位カーストの持ち回り品だったのでお付き合いはしていない。
これからどうなるかわからないが、少しは独占できるかもしれない。