第892話 爆発音の元
何事?! と思うと同時に、どうせエイデンたちじゃないか、と察する私。
万が一違って、アースドラゴンとかだったとしても、きっと彼らが様子を見に行くはずだ。
――まさか、アースドラゴンがこっちに来ることなんて、ないよね!?
そんな不安になっている私をよそに、ふよふよ楽しそうに飛んでいる精霊たちだったけれど。
『あー』
『あれは』
『せいれいおうさまだ』
『せいれいおうさまたちだ』
――まさかの大物、キターーーーー!
精霊たちの言葉に、思わず『ム〇クの叫び』状態の私。
古龍のエイデンですら恐怖の対象だろうに、精霊王様たちって、何が起きてるのか、怖くて聞けない。
音のしたほうでは、ここからは少し離れてはいるが、もくもくと黒い煙があがっている。火事でも起きてるのだろうか。
「延焼とかしないよね」
あちら【日本】ほど乾燥気味ではないものの、森の中なだけに森林火災が起きやしないか、心配になる。
『そんなことにはならないでしょー』
『せいれいおうさまたちだしー』
『あいてしだいだけどー』
ニシシシと笑う精霊に引きつる私。
『でもさぁ、あっちにしっちたいもあるから、だいじょうぶだとおもうよ~?』
光の精霊が首を傾けながら、優しくニッコリ笑いながら教えてくれた。
そうなのだ。まさに精霊たちが湿地帯のある場所を教えてくれていた方角で、黒い煙が上がっているのだ。
「そっか……あ、もしかしたら、あっちから誰か逃げてくるかもしれない?」
『きたとしても、はいらせなーい』
『ゆるさなーい』
『おいだしてしまえー』
『とばしてしまえー』
小さい精霊たちが拳をあげている姿は可愛いけれど、言っていることは物騒だ。
「何かあっても困るから、あっちに行くのはもう少し待とうか」
早く湿地帯に行って、水の精霊たちを連れてきてあげたいところだけれど、私のほうが変な人に絡まれたら本末転倒だ。
おにぎりを全部食べ終えた後、不安になりつつも、そっと門を開けて外の様子をうかがう。
激しい爆発音は、先程の一回だけで済んだようで、耳をそばだてても、鳥の鳴き声すらしない。それはそれで、怖いんだが。
「……もういいかな」
『ちかづいてくるのはいないよー』
「そっか、じゃあ、様子をみながら行ってみようか」
『おー!』
『いけいけどんどん~!』
『ぱふぱふー』
――そんなの、どこで覚えたの?!
精霊たちの変な掛け声に押されてしまう私。
門のところでタブレットを手に立つ私は、湿地帯がある方向、野営地の東側へ移動して、人が三人くらい通れそうな幅の両サイドに、小さなガーデンフェンスを設置していく。素材となる木は『収納』の中にたっぷりあるので、作業は止まらない。
野営地の周りの紅葉の範囲を抜け、針葉樹の深い森に入る。
両サイドしかガーデンフェンスがないから、正面はがら空き。魔物に襲われたらひとたまりもないはずなんだけど。
『そのまま、まっすぐー』
『そうそう、あっち、あっち』
精霊たちの明るい声は、私の気持ちを軽くさせる。私の危機感は、どこへ行った。
気が付けば高い針葉樹に囲まれ、上空も見えないくらい暗い土地に来てしまっていた。そして、足元の土がぐちゃりと沈み込む感触に変わった。
湿地帯に入ったようだ。





