第886話 マーマレードと精霊
朝食を終えると、エイデンたちは洞窟探しに向かった。
実際には、私たちが休んでいる間に、私についてきていた土の精霊たちが、この土地の精霊たちから聞きだした場所の確認に向かったのだ。
この土地の精霊たちは弱々しく、意思はぼんやりしている者ばかり。そこから、私についてきた子たちが集めた情報なのだ。
そもそも深い森の中の精霊が、こんなに弱々しいのか。
『こいつらのちからをつかってるやつらがいるんだ』
馬車の中のミニキッチンで料理をしている私。
エイデンたちと一緒には行けないのでお留守番がてら、マーマレードを作っているところだ。デザートにと『収納』にオレンジを大量に入れて持ってきたものの、男性陣はあまり食指が動かなかったので、まだかなり残っているのだ。
おかげで馬車の中はオレンジの匂いで充満している。
オレンジを煮詰めている私の目の前で、ぷんぷん怒りながら座って話す土の精霊。この子が一番おしゃべりで、皆から情報を聞き出してくれたのだ。
「精霊の力って、いわゆる精霊魔法的な?」
『そんなやさしいもんじゃない!』
への字口で文句を言う土の精霊。
『せいれいまほうは、おたがいにきょうりょくかんけいにあるからなりたつけれど、ここのはきょうせいてきにとりあげてるんだ』
「え。あなたは大丈夫なの?」
『フフン、サツキがいるばしょで、そんなのはきかないさぁ』
胸を張って言う土の精霊。そのまわりを黄色い光の玉たちがチカチカと明滅している。
「それならいいけど……でも、嫌な感じね」
『うん。だから、こえをかけられるものたちで、ここにくるよういってるんだけど……よかったか?』
急に自信なさそうになる土の精霊。
「いいわよ、いいわよ。それにしても、精霊たちの力を使ってる連中って、何やってるんだろ」
『わかんない。へたにちかづいたら、おれたちのちからももってかれるからな』
「そうなのね。いいよ、いいよ。そういうのはエイデンに調べてもらおう?」
『うん……あ、そういえば』
「ん?」
『エイデンがとんでったほうこうに、そいつらがいるかもしれない』
「なんですって!?」
『まぁ、エイデンあいてじゃ、なにもできないだろうけどね』
「……そうね」
ぐつぐついっている小鍋をかき混ぜながら、不安な気持ちで窓の外に目を向けた私であった。
* * * * *
森の中を走る黒いローブを着た犬獣人の男が一人。無表情の中にも焦りが滲んでいる。
――あれはヤバい奴だ。
彼はこの森の中にある隠れ里に住む者。定期的に村の周辺の見回りをしていたのだが、古龍が現れたのに気付き、隠れて様子を見ていたのだ。
その村は森の奥にあり、魔物との攻防を繰り返していたこともあり、元々住人も多くはなく寂れた村だった。
しかし、先代の村長の頃に老いたエルフが訪れてから変わっていった。
エルフが精霊たちから力を奪う魔法陣をいくつか授けていったからだ。
おかげで村の食料事情はよくなったし、魔物との攻防もだいぶ楽になった。しかし、村人たちは、それが精霊たちから力を奪っているからだとは知らない。
それを知っているのは、当代の村長のみである。
あけましておめでとうございます。
本日から『山、買いました』の連載を再開いたします。今月は書籍化準備の他に、文フリ京都に参加したり、カクヨムコンに参加したりと、ちょーっと忙しいんですが、ぼちぼち頑張りますので、温かく見守っていただければ幸いです。
『うちの猫、めっちゃ強いんですけど~愛猫たちと異世界満喫生活~』
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