第881話 狸獣人の村
エイデン航空を使えば、目的の村まではあっという間。
村は森の端のほうにあるとはいえ、木々に囲まれている場所にあったせいで、エイデンが着陸するために木々を薙ぎ払ってしまった。それは見事な轟音とともに。
村までの道はないところに降りたものだから、私はエイデンにおんぶされながら向かうはめに。最初、お姫様抱っこしようとしたので、慌てて背中に飛びついたのだ。
村についてみたら、大きな入口の門は閉められていて中に入れなくて困った。普通、昼間は開け放たれてるそうなので、おそらく、先程の轟音のせいだろう。
「もう少しやりようがあったんじゃ」
「むぅ。すまん」
エイデンをジロリと見上げると、眉を八の字にして謝ってきた。
ネドリさんとガズゥは、そんなやりとりをしてる私たちをクスリと笑いながらも、ドンドンと門を叩く。
「誰かいないかっ」
ネドリさんの大きな声が響くが、なんの反応もない。
「ぶちやぶるか」
「だーかーらー」
エイデンがまた物騒なことを言うので叱りつけていると、門の向こう側に人の気配を感じた。
『だ、だれだ』
恐々と聞いてくる男の人の声に、ホッとする。
「ネドリだっ。冒険者ギルドに用事があるんだがっ」
『ネ、ネドリ様!? ちょ、ちょっとお待ちを』
この村は狸獣人の多い村だそうで、ネドリさんたちの狼獣人の村は、この村と交流があったので名前を出せば通じるはず、とのことだったが、そう簡単にはいかなかったようだ。
そう答えてからしばらくすると、門の向こう側からザワザワと微かな人の声が聞こえてきた。
『ネドリ様本人だという証拠は』
「まったく……」
先程の声とは別の低い男の人の声に、ネドリさんが呆れたように言う。
「その声は、ノルンだろう。さっさと開けないと、お前の小さい頃の悪戯を大声でしゃべるぞ」
『わーっ! やめろっ! 開けろ、開けるんだ!』
低かったはずの男の人の声が、一気に甲高い声に変わる。これが本来の声なのかもしれない。
慌てて開けられた門の前には、村人たちがぞろぞろ集まっていた。ほとんどがコロコロした体型の狸獣人たち。皆、手に斧や鋤、鍬など、農機具を持って身構えていたようだけれど、ノルンさんの情けない様子に、空気が緩んだようだ。
「ネドリ~、酷いぞ~」
「さっさと開けないのが悪い。危うく、門を壊すところだったぞ(エイデン様が)」
「なっ!? ネドリはそんなことしないだろっ!」
ネドリさんと親し気に話をしているのは、コロンと太って小柄な獣人の中年男性。もさっとした尻尾の感じは狸だろうか。人好きのする優しい顔をしている。
「それで、そちらの方々は?」
心配そうな顔をしながら聞いてくるノルンさん。
「ああ、サツキ様とエイデン様。私が大変お世話になっている方だ。それと、息子のガズゥ」
「ど、どうも。(なぁ、様ってお貴族様か?)」
「(貴族ではないが、尊い方だ。失礼がないようにな)」
「(わ、わかった)え、えと、私がこの村の村長をしておりますノルンと申します。ご用件は……」
「ああ、それは冒険者ギルドで俺から話す。ギルマスはいるか」
「……さっきの轟音で、地下に潜ってる」
ここのギルマスはモグラの獣人らしい。
隠れずに、村を守るとかしないのか、と思ったのは私だけではないと思う。





